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日本のうどん、台北で大ブーム


ニュース 商業・サービス 作成日:2014年2月5日_記事番号:T00048437

日本のうどん、台北で大ブーム

 日本のうどんチェーンが相次いで台北市に進出し、ブームを巻き起こしている。昨年だけで12店が新規オープンし、ラーメンに続く新たな日本麺食の主役として台頭している。各社がアピールするのは、自製の麺とつゆにこだわり日本の味を守る「本格的な日本うどん」だ。


丸亀製麺の店頭では、昼食・夕食時に行列が途切れることはない(YSN)

 「ここまで手応えがあるとは思ってもみなかった」。新光三越百貨3店(信義新天地A8館、南西店、台北駅前店)のフードコートに「丸亀製麺」を展開する台湾トリドールの長野雅至・店舗経理は語った。信義新天地A8館の1号店では、昨年4月のオープンから10カ月がたった今でも1日当たり1,000人以上(平日)が訪れる。進出前の想定の2倍以上だ。週末には1,500人以上が来店、昼食と夕食のピーク時には100人が列を作り注文まで30分待つほどで、台湾全土のうどん店でナンバーワンの来客数となっている。丸亀製麺は現在日本で773店を展開する讃岐うどんチェーン最大手ブランドだが、長野経理は「お客さまがこんなに並ぶのは見たことがなかった」と驚きを口にする。

 同社では、うどんの麺やだし、つゆ、サイドメニューの天ぷらやおにぎりもすべて店舗内で作り、出来たてで提供している。天ぷらも一般的な店であれば揚げられてトレイに並んだ古いものから渡すが、できる限り揚げたてを渡す徹底ぶりで、「本物を出来たてで」というコンセプトが今の人気につながったと分析している。

 最も力を入れている商品は釜揚げうどんだ。通常の麺とは異なり水で締めていないため、柔らかいもちもちした食感と小麦の風味が増す。釜揚げうどんを推すのは自製の麺に自信があるからこそで、食べてみてリピーターになる人が多いという。

 手頃な価格帯も支持を得ている要因だ。釜あげうどん、かけうどんとも69台湾元(約230円)からで、男性の場合、大サイズの麺に天ぷらやおむすびを足しても200元前後となり、百貨店のフードコードで食べる価格としては決して高くない。

 うどん業界もやがては競争が激化するとみられるが、長野経理は台湾ローカライズに走らず日本の味を守ることが勝ち残るための条件だと強調する。そのためにはこだわりを持つ台湾人の職人を多く育てた上で、出店を加速し、台湾のうどん業界リードする企業を目指している。今年は高雄、台中、台南に進出し、台湾全土で10店の店舗網を築くことが目標だ。

新たな発想で挑む

 昨年12月に大直地区に日本の讃岐うどんチェーンブランドとして初めて出店した「温(おん)や」は、シュークリームの「ビアードパパ」などを手掛ける麦の穂(本社・大阪市北区、今泉智幸社長)傘下で、海外進出は米国に次いで2カ国・地域目だ。


温や自慢の「つけうどん(中)」。価格は89元
(YSN)

 台湾進出に当たり同社は、讃岐うどんの最もおいしい食べ方を新たな発想で提供できないかと検討を重ね、「つけうどん」にたどり着いた。麺のこしを最も良い状態で味わえる冷たいうどんと、温かいかつおだしのつゆを組み合わせることにしたのだ。つゆは白菜、油揚げ、白ごま、ゆずが入り香ばしい味だ。台湾人客はつゆを全部飲む人が多く、当初は濃い目のだしにしょっぱいという反応が出たため調整も行った。「ローカライズしなければならない部分と日本の味を守らなければならない部分のバランスが重要。ただ『日式』になってはならない」と麦の穂台湾支社の渡邉健一総経理は語る。

 台湾進出2カ月の手応えは「おおむね順調」だ。麦の穂はアジア市場開拓に力を入れており、「温や」台湾1号店は他のアジア地域に展開する上での実験店舗という性格も併せ持つ。

稲庭うどんを空輸

 丸亀製麺、温やが百貨店やショッピングセンター内に店舗を構えた一方、最初から路面店で本格的な稲庭うどんを提供しているのが、昨年7月に中山区に開店した稲庭養助台北店だ。うどんを秋田から空輸しており日本と全く同じおいしさが評価を受けているが、価格も日本並みで主なセットメニューは400元台となっている。来店客は1日平均100人、日本人3割、台湾人7割と日本人の比率が高く、年配者が多いのが特徴だ。


稲庭養助台北店(YSN)

 川村勝行・佐藤養助商店東京エリア調査統括は「客入りは満足できる状況ではない」として、「知名度がまだまだ上がっていない。品質、サービスの良さを知ってもらえるよう努力していきたい」と語った。単価の高さと、フードコートのように客足が保証されていないこと、台北新交通システム(MRT)の駅から少々歩かなくてはならない交通面がネックとなっているようだ。

「Q」食感で人気に

 なぜ、日本のうどんがブームとなったのか。大きな理由として、弾力性に富みしっかりとした歯ごたえのあるうどんが、台湾消費者の好みにはまったことが挙げられる。台湾には「Q(キュー)」と呼ばれるもちもちしたおいしさを表す言葉があるが、うどんはまさに「Q」なのだ。

 価格が手ごろなこともある。各社の最低単価は、一般的な牛肉麺を下回る水準だ。さらに、台湾食品業界で起きた相次ぐ不祥事で食の安全への信頼感が揺らぐ中、かつお節など魚介類のだしが中心で、味もあっさりしたうどんは「安心」や「健康」を求める消費者にアピールしたと考えられる。実際、丸亀製麺の店舗では「日本企業がやっているので信頼できる」という台湾人客の声も聞かれた。

 現在、うどんブームは台北にとどまっているものの、今年は業者の進出に合わせて中南部への広がりが見込まれる。そして、味そのものが消費者の支持を得ていることから、一時のブームに終わらず、寿司やラーメンのように日本食の一ジャンルとして定着していきそうだ。業者にとっては、客にうどんを渡してから会計するまでの時間が長かったり、客が混雑するフードコート内でなかなか席を見つけられないといった、「出来たて」を食べるための環境改善に工夫の余地がありそうだ。

(取材/ワイズニュース編集長・吉川直矢)

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