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貿易自由化交渉が全面停止、中台サービス協定争議が悪影響


ニュース その他分野 作成日:2014年4月10日_記事番号:T00049683

貿易自由化交渉が全面停止、中台サービス協定争議が悪影響

 張家祝経済部長は9日、中台サービス貿易協定をめぐる争議を受けて、台湾と貿易自由化交渉を進めていた国々が様子見に転じ、交渉はすべて停止に追い込まれたと危機感を訴えた。学生らによる反対運動の悪影響を初めて具体的に明らかにした形で、一貫して同協定の重要性を訴えてきた張経済部長はますますそのトーンを強めている。10日付工商時報などが報じた。


張経済部長は9日夜、交通大学で中台サービス貿易協定に関する講演を行ったが、学生側の反応は芳しくなかったようだ(9日=中央社)

 張経済部長は、アジア太平洋地域では環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉が加速し、貿易環境が大きく変化する中、台湾はこのままでは信頼を失い、他国・地域との交渉機会すら与えられず3年で孤立すると警鐘を鳴らした。

 台湾はニュージーランドと「台紐経済合作協定(ANZTEC)」を昨年12月に発効させ、今月19日にはシンガポールとの経済パートナーシップ協定(ASTEP)発効を控えている。この他、フィリピン、インド、インドネシアとは交渉に向けた協議を既に重ね、マレーシア、イスラエル、チリとの協議も検討している。張経済部長は今年初めに「年内に自由貿易協定(FTA)を新たに一つ締結する」と宣言し、相手国はTPP交渉参加国であるチリと目されていたが、現時点でこの目標は困難になったようだ。

「輸出減が加速」

 台湾はFTAを積み重ねることでTPPへの参加につなげたい考えで、本来TPP参加には中国の同意や許可は必要ない。しかし張経済部長は、交渉参加国の12カ国と中国は緊密な貿易関係があり、台湾が中国と正常な経済・貿易関係を持てるかや、中台サービス貿易協定問題にどのように対応するかは交渉参加国の関心事だと指摘した。

 張経済部長はまた、中台サービス貿易協定の争議により物品貿易協定の発効の遅れも懸念されており、このままでは対中貿易で輸出品目が重複するライバルの韓国に敗北すると強調した。中韓FTAは早ければ年末に調印となる見通しで、その後発効となれば、液晶パネル、工作機械などで韓国は台湾を上回る優待関税を手にし、台湾の輸出は減退加速が確実と見ているだからだ。張経済部長は、中台サービス貿易協定は台湾経済全体に関わっており、一刻も早く発効させなければ打撃が大きいと重要性をあらためて訴えた。

馬総統、米に貿易自由化アピール

 馬英九総統も同日夜、米戦略国際問題研究所(CSIS)の招きで、同国の政界人、学識者らが参加するテレビ会議に参加した。米国も同協定について関心を寄せており、馬総統は「中国に過度に依存することを心配する台湾市民に理解を示す」と語りつつ、発効に全力を尽くすと強調した。その上で中国以外の国・地域との貿易を拡大してリスク分散を図りつつ、台湾の貿易自由化を推進し、TPP加入の決意に変わりはないと訴えた。

民進党、審議ボイコットも

 立法院を24日間にわたり占拠している学生はきょう(10日)午後6時に撤退する予定だ。与党国民党はこれを機に一刻も早く同協定を審議し、今会期中(延長して6月末まで)にも通過させたい考えだ。今回学生が撤退を決めた直接の契機は、王金平立法院長が協定に対する監督条例が成立するまでは与野党協議を行わないと約束したことがあるが、国民党はあくまで条例立法化と協定審議を同時並行する構えで、野党民進党は「民意に反する」として審議をボイコットする方針だ。

 国民党が強行採決に打って出た場合、学生らの反発は確実とみられる。混乱が長引いた場合、台湾経済全体の足を引っ張る事態が現実となりかねない。