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昭和レトロの林百貨、台南に再オープン


ニュース 商業・サービス 作成日:2014年6月16日_記事番号:T00050953

昭和レトロの林百貨、台南に再オープン

 日本統治時代の1932年(昭和7年)台南市に開業した、台湾南部初のデパート「ハヤシ百貨店」が14日、建物の改修を経て「林百貨(HAYASHI)」として再オープンした。昭和レトロの雰囲気の売り場に地元台南を中心とした食品や工芸品など200種類以上の商品を取りそろえており、台南の新たな観光のシンボルとして人気を呼ぶことが期待されている。


林百貨はひと目で昔風と分かる外観だ(14日=YSN)

 ハヤシ百貨店は山口県出身の実業家、林方一氏が、当時台南の銀座通りと呼ばれた繁華街、末広町で開業した。台南では最も高い5階建てで、日本人をはじめ現地の上流層の人々によく利用されていたという。台湾の南部で初めて商業用エレベーターを設置し、「流れる籠」と呼ばれて人気を集めた。戦後閉店した後、塩の密造を取り締まる塩務警察や台塩実業の事務所として使われたが、86年以降は放置されてきた。98年に市の史跡に指定され、歴史的建築物を生かした台南市の「文化首都」づくりの一環として再利用が決定。台湾鉄路(台鉄)台南駅前でデパート「Focus時尚流行館」を経営する高青時尚開発が運営権を獲得し、「文化創造百貨店」のコンセプトで林百貨の再オープンを決めた。台南市が8,000万台湾元(約2億7,000万円)を投じて建物を修復し、高青時尚開発が内装などに3,000万元以上を投資した。

昭和の再現パレードも

 14日は午前8時ごろから地元の人々が長い列を作ってオープンを待った。午後6時半の開店を前に、昭和初期の雰囲気を再現するパレードが行われ、大学生たちが八田與一ら当時台湾で活躍した有名人らに扮したり、若い女性たちが当時の流行の装いや浴衣を着て一帯を練り歩き、雰囲気を盛り上げた。


サンドイッチマンによる宣伝も再現された(14日=YSN)

 オープニングセレモニーには林方一氏の義理の娘の林千恵子さん(92)も日本から招かれた。林さんは「台南の女学校時代、寄宿舎生活を送っていて、日曜日によくハヤシ百貨店に来ていました。本当に懐かしいです」と再オープンを喜んでいた。

昔の装飾そのままに

 林百貨は昭和初期の建物を修復しただけあって、それだけで昔懐かしい風情を漂わせているが、エレベーターの文字盤や各階の照明は当時のものを再現し、レトロな雰囲気をさらに高めた。店員の制服も昭和初期を思わせる復古調のデザインにした。

 1階「台南好客庁(台南リビングルーム)」では、土産品や茶、加工食品などを取りそろえている。台南特産のまんじゅう菓子「椪餅(ポンピャー)」には、90年の歴史を持つ印章店「信文堂印舗」による「林」の赤文字の印を施してあり、1個40元で販売している。


林百貨特製の「椪餅」(14日=YSN)

 2階の「台南好設計(台南デザイン)」は、手作り雑貨や工芸品が中心だ。創業約60年の老舗「合成帆布行」の帆布製バッグをはじめ、地元に伝わる粋な技術の逸品が並ぶ。また、茶飲料店「奉茶」では、パイナップルやバナナ、マンゴーなど日本統治時代に台湾で栽培が始まったフルーツの茶飲料を提供する。


店内には色とりどりの商品が並ぶ(14日=YSN)

 このほか、屋上の6階では林百貨の関連グッズを販売するほか、ハヤシ百貨店の当時のままに商売繁盛を願い稲荷神社が置かれた。

 林百貨にはオープン2日間で5,000人以上が訪れた。古い時代の雰囲気を伝え地元産品を販売する同百貨店には台南への郷土愛が詰まっており、日本人にとっても魅力的な場所だ。

(取材/ワイズニュース編集長・吉川直矢)