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太陽電池に米国市場喪失危機、反ダンピング税回避に全力


ニュース その他製造 作成日:2014年7月29日_記事番号:T00051804

太陽電池に米国市場喪失危機、反ダンピング税回避に全力

 米商務省が中台の太陽電池関連メーカーの製品に対し反ダンピング(不当廉売)関税26.33~165.04%の適用を仮決定したことを受け、台湾の太陽電池メーカーは8月初旬に米商務省に対し、対米輸出製品価格の下限規制を提案する方針だ。台湾の太陽電池メーカーの米国輸出は毎年3億~5億米ドル。現地より高い価格設定で販売力を落としてでも重い反ダンピング関税を回避して、世界の2割を占める米国市場を守りたい構えだ。29日付経済日報などが報じた。


張家祝経済部長は28日、メーカーと米国側の価格データに相違が見られるため、確認してから反ダンピング税の仮決定に対する申し立てを行うと述べた(28日=中央社)

 米商務省は26日、中国政府が中国企業に過度の補助金を与えて貿易を有利に運んでいると指摘し、中国から米国に輸入される太陽電池関連製品に対し反ダンピング関税の仮決定を決めた。課税対象は中国メーカーだけでなく、台湾メーカーも含まれ、モジュールに限らず、太陽電池、シリコンウエハー、インゴットまでにわたる。太陽電池の新日光能源科技(ネオソーラーパワー)や太陽電池用導電性ペーストの碩禾電子材料(ギガソーラー・マテリアルズ、GSMC)など11社は週明け28日の株価がストップ安となった。

 市場調査会社、集邦科技(トレンドフォース)の統計によると、台湾の昨年の太陽電池輸出は米国向けが5%、中国向けが45%。今年6月の補助金相殺措置の仮決定を受け、中国の太陽電池モジュールメーカーが対米出荷を停止したことで、台湾の太陽電池メーカーは同月10~45%の減収を強いられた。業界関係者によると、上半期は台湾の受注の4割以上が中国経由で米国に販売されたものだった。

 太陽電池の生産能力は中台が世界市場シェア90%、うち台湾が10~15%を占める。業界関係者は、太陽電池生産の上位2位に対して高い反ダンピング税を適用すれば、米国の太陽光発電システムメーカーのコストがかさみ、自分で自分の首を絞めることになると訴えた。

増産見合わせも

 一方、台湾メーカー各社は米国市場喪失という最悪の事態を想定し、準備を進めている。

 太陽電池メーカー、昇陽光電科技(ソーラーテック・エナジー)や益通光電科技(イートン・ソーラー)は増産計画の見合わせを検討、決定した。

 シリコンウエハー大手の中美矽晶製品(シノアメリカン・シリコン・プロダクツ、SAS)は、米国以外の市場開拓を進める他、ドイツやカナダなどの関連企業を通じて顧客にモジュールを提供すると説明した。緑能科技(グリーン・エナジー・テクノロジー)は、新興市場を強化する他、中台以外での工場や生産ライン設置を検討すると表明した。

 証券会社は、欧州や日本など米国以外の市場では厳しい価格競争に直面すると指摘。中台以外への海外移転はコスト的に困難と分析した。また、ベトナム、インドなど海外移転で反ダンピング税の適用を一時的に逃れても、製品の最終市場から遠ざかるだけで、もし数年後に米国が反ダンピング税の適用対象に加えれば、同じ事態に陥る可能性がある。 

【表】