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またも悪質食品汚染、廃油ラード全土に出回る


ニュース 食品 作成日:2014年9月5日_記事番号:T00052559

またも悪質食品汚染、廃油ラード全土に出回る

 またしても驚きの食品汚染事件が発生した。衛生福利部食品薬物管理署(食薬署)の5日発表によると、食品廃油を原料に使ったラード(豚油)計5万1,981缶が、味全食品工業や奇美食品、台湾糖業(台糖)、85度Cなど大手を含む台湾全土の食品会社や飲食業者235社に材料として出回ったことが分かった。台湾では昨年、禁止添加物の使用や偽装表示など食品不正事件が相次ぎ、政府が関連法規の厳罰化など対策強化を宣言したばかりだが、利益最優先で安全を軽視する風潮が依然やんでいないようだ。


高雄市衛生局は強冠企業の工場で廃油ラード約3,000缶を差し押さえた(4日=中央社)

 5日付蘋果日報などによると、問題のラードについては味全が4日、自社の肉そぼろ缶詰と豚肉フレーク(肉鬆)の12製品での使用が分かったため、売り場から撤去し、購入した消費者に対して返品を受け付けると表明していた。内政部警政署刑事警察局は、「廃油ラード」は今年2月以降653トンが卸売業者を通じて台湾全土の食品業者や夜市の屋台などに出荷されたとみている。

屏東の違法工場が元凶

 ラードを生産したのは高雄市大寮区の食用油メーカー、強冠企業で、三井物産が9%出資している。今年2月以降、屏東県竹田郷の違法食用油工場から食品廃油計242トンを調達、ラードを生産する際に約25%混入させて、計782トンの「廃油ラード」を作っていた。

 今回の事件が発覚したのは今年4月、違法食用油工場から悪臭がするとの通報がきっかけだった。南部犯罪摘発センターで捜査した結果、経営者の郭烈成容疑者(32)が、飲食店の調理廃油を調達して、火にかけ雑物を取り除いて「精製」、ポリタンク詰めにして強冠企業や豚の飼料生産会社に供給していることを突き止めた。当局は郭容疑者のほか、強冠企業副総経理の戴啓川容疑者(57)ら関係者6人を食品安全衛生管理法違反、詐欺の疑いで送検した。

 郭容疑者は食品廃油を1キログラム当たり12〜20台湾元(約42〜70円)で回収業者から購入し、「精製」した上で強冠企業などに同20〜23元で販売、約400万元の不法利益を上げたとみられる。郭容疑者の工場は極めて不潔で、食品廃油は時間がたって表面に膜が張ったり、固まったりしていたが、こうしたものを「精製」していた。医療関係者や栄養学の専門家によると、食品廃油にはコウジカビや重金属、発がん性物質のベンゾピレン、不飽和脂肪酸など人体に有害な物質が数多く含まれており、昨年の食用油の成分不当表示事件の際に問題となった綿実油や着色剤の銅クロロフィルよりも危険度が高いという。

検査不十分か

 蘋果日報は、味全は強冠企業の問題製品を価格が安いため調達、その際、十分な検査を行っていなかった疑いがあるとの食用油業界の関係者の話を紹介したが、これは他の企業についても言えそうだ。

 味全は廃油ラードを使用した肉そぼろ缶詰3製品で食の安全性を認証する「GMP認証」を取り消される見通しの他、衛福部食薬署は昨年に続いて食品安全事件を起こしており悪質だとして、刑事事件として立件することを提案する方針だ。