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6年ぶり円安水準、日本旅行・不動産購入の人気加速


ニュース その他分野 作成日:2014年9月12日_記事番号:T00052665

6年ぶり円安水準、日本旅行・不動産購入の人気加速

 米国経済の先行きへの期待感などから円売り・ドル買いの動きが強まる中、日本円の対台湾元レートは11日、1円=0.28042台湾元と約6年ぶりの円安水準となった。円安進行により台湾人の訪日旅行や日本の不動産購入の人気がさらに高まりそうだ。日本製品の値下げに期待する声も出ているが、家電や自動車は当面価格が維持されるもようだ。12日付工商時報が報じた。

 台湾元の対円レートは、3年前の2011年9月13日は1台湾元=約2.62円だったが、昨日は1台湾元=約3.56円まで円安が進んだ。わずか3年で、台湾人は日本で同じ買い物する際、支出が3割近く少なくなった計算だ。

 交通部観光局の統計によると、1~7月の台湾人の訪日者数は延べ176万5,000人と前年同期比29.5%増えた。もともと日本旅行は人気が高いが、円安進行が訪日意欲をさらに刺激しており、この傾向がさらに強まりそうだ。

 旅行業界各社は今年上半期、日本行きが好調で、可楽旅遊(Colaツアーズ)はツアー旅行が前年同期比1割成長、易遊網(ezトラベル)は業績1割増、鳳凰旅行社(フェニックス・ツアーズ)は2割増、雄獅旅行社(ライオン・トラベル)に至っては4割増収となった。台湾人に人気の秋の紅葉シーズンを控え、ライオン・トラベルは2人目が最大6,000台湾元(約2万1,000円)引き、フェニックス・ツアーズは3,000元引きとなる早割キャンペーンを行っている。

 旅行業者は、現在の円安水準が続けば、11月出発の日本行きツアーはさらに1,000〜2,000元価格が低下するとみている。

不動産投資コスト25%低下

 円安進行は日本の不動産購入も促している。不動産仲介大手、信義房屋の日本法人、信義房屋不動産によると、今年1〜8月の台湾人による日本での新築・中古を合わせた物件の成約件数は279件で、成約額は約165億円。1日当たり平均1.15件が成約となっている計算だ。何偉宏同社社長は、日本の不動産投資コストは2年前と比べ25%低下したと指摘した。同社が三菱地所と今月12〜14日に台北西華飯店(シャーウッド台北)で開く東京の物件説明会は、予約受付開始後に定員300人がすぐに埋まった。20年の東京五輪開催も追い風となっており、台湾人の投資意欲はさらに高まりそうだ。

「効果は限定的」

 商品市場では、日系家電ブランドの台湾三菱電機や台湾日立、ダイキン工業、台湾ソニー、台湾松下電器(パナソニック台湾)などは現時点で値下げを行う計画はない。台湾ソニーは、大半の部品を日本以外で生産・調達しているため、円安だけを理由に価格を下げることはないと説明した。

 また自動車ブランドも当面新車を値下げする予定はない。トヨタの台湾総代理店、和泰汽車は、本社からの調達は台湾元計算・米ドル支払いのため、円安=コスト低減にならないと説明した。また裕隆日産汽車は、最近の円安幅は昨年と比べて小さく、コストが低下しても物価の上昇ペースに追い付かないと話した。さらに三菱車を生産販売する中華汽車工業(チャイナ・モーター)も、台湾生産車が7割以上を占めるため円安によるコスト低減効果は限られると指摘した。

年内110円も

 今後の円相場の見通しについて専門家は、米連邦準備理事会(FRB)が従来予測より早く利上げに動く一方、日銀は追加金融緩和に踏み切る可能性があるため、引き続き円安が進むと予想している。外資系銀行からは、年末にかけて1米ドル=110円程度の円安になるとの見方も出ている。

【図】