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日本製品の値下げ呼び掛け、中銀総裁発言に反応冷ややか


ニュース その他分野 作成日:2014年9月25日_記事番号:T00052904

日本製品の値下げ呼び掛け、中銀総裁発言に反応冷ややか

 彭淮南中央銀行総裁は24日立法院での答弁で、日本円が今年、対米ドルで約5%下落したことから、台湾で販売される日本製品の価格は3〜4%下落するのが望ましいと発言した。これに対し日本製品を扱う各業界は、「米ドルで貿易決済を行っており円レートは関係ない」「卸売業者が値下げしていないので無理」など、冷ややかな反応が多い。経済部は輸入業者への値下げ指導を行う意向だが、政府内から「自由経済にそぐわない」との異論も出ている。25日付工商時報が報じた。


答弁する彭総裁。円安のたびに政府が日本製品値下げを求めるのは果たして妥当なのだろうか(24日=中央社)

 彭総裁は、最近の円安には日本政府の意図が働いており、総額1兆2,600億米ドルの日本の年金基金に、日本国債の持ち高を減らして海外への投資を拡大させているとの見方を示した。そして、最近キウイフルーツを買った際に、価格が下落していないことにおかしいと感じた体験を挙げて、「輸入企業、特に日本企業は円安利益を消費者に還元すべきだ」と呼び掛けた。

 また、杜紫軍経済部長も同日、輸入業者を集めて値下げを求める会議を近く国際貿易局が開くと発言した。杜経済部長は当初、こうした指導を行う考えのないことを表明していた。

「黙っていてほしい」

 2人の発言に対し、関連業界からは反発が相次いだ。ある輸入業者は、台湾元も今年対米ドルで下落していることを挙げ、台湾元の対円上昇幅は実質2%以下にすぎないと指摘。「彭総裁はどういう計算をしているのか」と批判した。

 経済部は第2次安倍内閣誕生前後の円安進行を受けて、2013年2月に日本製品の輸入・販売業者への値下げ指導を行っている。特に自動車業界に対しては同年5月までに計3回の値下げ要請を行ったが、この結果、消費者にさらなる価格下落への期待感が生まれ、自動車販売市場が落ち込む結果を招いてしまった。この時の苦い経験から、ある自動車メーカーの管理職は「彭総裁は頼むから黙っていてほしい」と閉口気味に語った。

 トヨタの総代理店である和泰汽車は、為替リスク回避のために20年前より調達の際に米ドルを採用しており、日本円が下落しても関係がない。また、裕隆日産汽車は、「大部分の部品は台湾で調達しており、円安でもコストが低下するわけではないのに値下げを求められるのは不合理だ」と反発した。

小売大手は販促で対応

 行政院消費者保護処(消保処)は同日、▽大潤発(RTマート)▽愛買(aマート)▽全聯福利中心(Pxマート)▽頂好超市(ウェルカム)──など大手小売業者6社を呼び出し、日本製品の値下げを求めた。家楽福(カルフール)、台湾大創百貨(ダイソー)は参加しなかった。

 しかし業者からは「米ドルで決済をしている」「卸売業者が値下げをしていない」などと難色を示す声が相次いだ。なお台糖、松青超市(マツセイ)、頂好超市などは、値下げの代替案として、10月中旬までに日本製品を最大30%、平均10%安くする販促活動に取り込むことを決めた。

衣料ブランド「最大でも5%」

 このほか、日系衣料ブランド輸入販売の満心企業(ムンシン・ガーメント)は、今年は日本のアパレル業界からの輸入価格が1割上昇しており、台湾の日系服飾ブランドは値上がり分を自社で吸収していると苦境を説明。今回の円安でも、値下げできるのは傘下各ブランドの数件から10数件で、値下げ幅も最大で5%だとした。

 化粧品大手の資生堂は、米ドルを採用している上、日本円で調達した製品は半年前に発注したものもあり値下げは困難で、実施は早くても来年の春節(旧正月)になるとした。

 ファストファッションのユニクロも、米ドル採用のため値下げはしないとしつつ、値下げを求める声も考慮して、セール品の件数を1週間当たり10件から約15件に増やすとした。

【図】