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「香港デモは台湾の問題」、中国への警戒感再燃


ニュース 政治 作成日:2014年9月30日_記事番号:T00052986

「香港デモは台湾の問題」、中国への警戒感再燃

  2017年の特別行政区長官選挙で普通選挙の導入を求める抗議デモが続く香港情勢について、馬英九総統は29日、「普通選挙の要求は完全に理解できるし支持する」と発言した。台湾では香港の事態を自身の問題として懸念する政治家の発言が相次いでおり、中国の強圧的な姿勢への警戒感が改めて巻き起こっている。


セントラルでは29日から30日にかけても大勢の市民が路上で一夜を明かした(30日=中央社)

 30日付蘋果日報などによると、29日の抗議活動には、前日に警察当局の催涙弾やゴム弾による鎮圧行動が行われたにもかかわらず、香港島と九龍で少なくとも10万人が参加した。セントラル(中環)全体が抗議の群衆で埋め尽くされたほか、コーズウェイベイ(銅鑼湾)、ワンチャイ(湾仔)、アドミラルティ(金鐘)、モンコック(旺角)にも大勢の市民が集まった。

 デモの推進には学生運動団体が大きな役割を果たしており、「学民思潮」のリーダー、黄之鋒氏は「抗議活動は梁振英行政長官が辞任するか当局がわれわれの要求を受け入れるまで続く」と発言。「香港専上学生聯会」の周永康秘書長は、香港当局が10月1日までに要求をのまない限り、ストライキや学校の授業ボイコットを拡大すると述べた。

国慶節連休商機に影響

 香港でコカ・コーラを生産販売する太古飲料(スワイヤー・コカ・コーラHK)の労働組合は29日午前、ストライキ突入を宣言。運輸部門の従業員の約半数、数百人が参加を表明した。このほかキャセイパシフィック航空、恒生銀行(ハンセン銀行)、スタンダードチャータード銀行、マクドナルド、ネクストメディアも一部の従業員がストライキを行っている。

 株式市場も下落が続くなど、経済への影響が懸念されるが、10月1日からの中国の国慶節連休(10月7日まで)で中国人観光客が減少して、観光地や飲食業界などが影響を受けるのは確実で、新華網によると、商業ビルや商業施設の損失額は400億香港ドル(約5,600億円)に上る見通しだ。

 なお、抗議デモが行われている地域では29日、HSBCや上海商業銀行など23銀行の51営業拠点が業務休止を余儀なくされたが、台湾資本の金融機関26社の支店などには影響が及んでいない。

「香港の民主後退を教訓に」


民進党は30日、呉釗燮秘書長が、香港の民主化を支持する声明を発表した(30日=中央社)

 香港の民主化デモに対し、馬総統は「香港が段階的に民主化に進むことを誰もが望んでいる。香港で普通選挙が実現すれば、香港と中国大陸双方にとってウィンウィンだ」と述べ、台湾政府としてデモ参加者の主張を支持する考えを表明した。

 閣僚では龍応台文化部長が、「開放的な政治体制の追求は、香港だけにとどまらない台湾の問題でもある」と発言。中国は経済、軍事、政治的に強大になるのみで、文明的なものをもたらさないならば、香港や台湾住民の民心を得ることは永遠にないと中国の姿勢を批判した。

 このほか朱立倫新北市長は、「台湾では民主が既にDNAの一部になっており、候補者が当局に選ばれた人物ばかりというのは台湾では受け入れられない」と発言した。野党・民進党の新北市長選公認候補、游錫堃氏は「香港の民主主義の後退、主権流出を教訓に、台湾はいかに民主の成果を守るかを考えるべきだ」と述べた。

 閣僚や大物政治家のこれらの発言からは、習近平中国国家主席が先週台湾への一国二制度適用を初めて表明したこともあって、中国が将来、台湾にも同様の強圧的な姿勢で臨んでくるのではないかという警戒感が改めて持ち上がっていることがうかがえる。

習主席、武力弾圧を拒否?

 香港の抗議活動は、1989年の天安門事件以降、中国大陸で起きた最大の民主化運動で、北京当局の対応に注目が集まっている。

 中国共産党上層部の動向を暴露することで知られる米国の中国語メディア「博訊新聞網」によると、梁行政長官が習主席に対しデモの武力弾圧を提案したものの、習主席に拒絶されるとともに、強く批判されたという。

 米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)によると、習主席は香港情勢を注視しており、警察当局が再び催涙弾やゴム弾を使用するに当たっては北京の許可が必要と、香港側に通知したもようだ。また、情勢が悪化した場合、責任を梁行政長官に押し付ける考えだという。