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《頂新食用油事件》頂新グループ、4大事業に危機


ニュース 食品 作成日:2014年10月14日_記事番号:T00053231

《頂新食用油事件》頂新グループ、4大事業に危機

 頂新国際集団傘下の食用油メーカーが食用以外の原料を使用していたとみられる事件を受け、馬英九総統は13日、市民に対し、違法製品や企業の不正行為を徹底的にボイコットしようと呼び掛けた。財政部は台北101ビルの主導権を頂新グループに掌握させることはないと表明。銀行は頂新グループ各社に対する融資を見合わせている。頂新グループに対する不買運動が広がる中、食品、流通だけでなく、通信、不動産事業まで危ぶまれる状況となった。14日付蘋果日報などが報じた。


各地で「悪徳業者に厳罰を」「頂新グループは台湾から出て行け」などと呼び掛ける抗議活動が行われている(13日=中央社)

 馬総統は13日夜、部会(省庁)トップを集めた国家安全会議を開催し、不正企業の撲滅を図るため行政院の食品安全推進工作小組(作業委員会)を格上げして食品安全弁公室を立ち上げ常設するよう指示した。

 財政部は、台北101ビルの筆頭株主は政府系企業各社で合計出資比率は44.35%に上り、2位の頂新グループの経営者魏一族は37.17%だが、3位、4位の中国信託金融控股(中信金、CTBCフィナンシャル・ホールディング)、国泰世華商業銀行(キャセイ・ユナイテッド・バンク)に対し、頂新グループに株式を売却しないよう求めたと説明した。

 金融監督管理委員会(金管会)の曽銘宗主任委員は、頂新グループには企業の社会的責任が感じられず、金融機関が赤道原則(エクエーター原則)に基づいて融資を拒むのならば尊重すると語った。その上で、ケーブルテレビ(CATV)の中嘉網路(チャイナ・ネットワーク・システムズ)買収に向けた、頂新グループ傘下の台湾之光に対する総額520億台湾元(約1,800億円)の協調融資(シンジケートローン)を銀行が見合わせていると指摘した。これについて台湾大学新聞研究所の張錦華教授は、問題企業にメディアを経営させるべきでないと語った。

中国メディアも厳しく批判

 頂新グループは、▽食品大手の味全食品工業▽スーパーマーケットの松青超市(マツセイ)▽中国のファミリーマート▽第4世代移動通信システム(4G)事業の台湾之星電信(台湾スターテレコム)▽台北101ビル──など幅広く事業を展開しており、昨年のグループ売上高は4,000億元に達した。うち台湾での売上高は12%にすぎず、中国が大部分の88%を占める。中でも康師傅控股は即席麺ブランド「康師傅」が中国最大手で、売上高は3,282億元、利益は123億元だった。

 中国メディアも続々と事件を報じており、頂新グループの打撃は台湾だけにとどまらない可能性がある。学識者は、もし中国政府が地場産業を支えるため頂新グループ製品のボイコットを呼び掛ければ、康師傅は生産が半減し、損益分岐点を割り込むと指摘。当面は乗り切れても、長期的には銀行から融資を受けられなくなり、経営が困難になると予測した。

魏応充氏の右腕を拘束

 嘉義地方法院検察署は13日、頂新グループの食用油メーカー、正義公司(高雄市仁武区)の川上に当たる永成油脂(嘉義県六脚郷)の蔡耀鋐副総経理の拘束を裁判所に請求し、認められた。彰化地方法院検察署は同日、頂新製油(彰化県永靖郷)を捜索し、魏応充・前董事長の右腕とされる陳茂嘉・代理董事長を聴取。14日午前に身柄が拘束された。これにより容疑者は10人以上となり、各地の地検が事件の核心を握る魏応充・前董事長に迫っている。

生産額122億元に打撃

 経済部は、先月摘発された強冠企業(高雄市大寮区)、および今月の頂新グループの違法ラード(豚脂)事件が市場シェア95%に影響し、台湾の生産額の122億元に打撃を与えると試算を示した。内訳は台湾域内が102億元、輸出が20億元。

 国家発展委員会(国発会)は、今年の域内総生産(GDP)成長率3.41%見通しは下振れするが、3%台は確保できるとみている。 

【表】