ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム 会社概要 採用情報 お問い合わせ

コンサルティング リサーチ セミナー 在台日本人にPR 経済ニュース 労務顧問会員

《頂新食用油事件》頂新集団、台湾での食用油生産から撤退


ニュース 食品 作成日:2014年10月17日_記事番号:T00053312

《頂新食用油事件》頂新集団、台湾での食用油生産から撤退

 頂新国際集団は16日、台湾の食用油製品生産市場から撤退すると発表した。飼料用や工業用油脂をラード(豚脂)など食用油製品の原料としていた疑惑発覚を受けての措置だ。彰化地方法院検察署は同日夜、関係者の供述から製油事業の責任者だった魏応充氏に出頭を要請し、身柄を拘束した。魏氏は取り調べで容疑を否認した。17日は彰化地方法院で勾留質問が行われており、事件は司法の場に舞台が移り始めた。17日付工商時報などが報じた。


左から魏応交・頂新グループ董事長、尹・潤泰グループ総裁、魏応充氏。台湾事業は今後、魏応交董事長が指揮を執るとみられている(16日=中央社)

 頂新グループは16日夕方に台北市で記者会見を開き、まず謝罪した。引き続き魏応交・頂新グループ董事長が、傘下の製油メーカー、正義公司(高雄市仁武区)と頂新製油(彰化県永靖郷)を閉鎖して台湾の油製品市場から撤退し、消費者からの返品に際しては、減額せずに返金に応じると表明した。その他、▽食品安全革新委員会を組織し、潤泰集団(ルンテックス)の尹衍樑総裁が臨時召集人に就任、頂新グループの再生を監督、指導する▽30億台湾元(約100億円)を拠出して食安基金を設立し、政府に寄付する──の3点を発表した。

 尹・潤泰グループ総裁は、傘下に量販店の大潤発(RTマート)などを擁しており、魏氏一族の友人としての立場もあるが、第三者として中立的立場から消費者の安心のために引き受けたと語った。頂新グループの食品大手、味全食品工業などを買収する考えはないと強調した。

 正義と頂新製油、および味全で董事長を務めていた魏応充氏はうなだれたまま、一言も発言しなかった。

 ラード市場シェア過半、45年の歴史を持つ正義は年間売上高が12億~13億元、受託生産の頂新製油は8億~9億元で、頂新グループ全体の4,800億元の4%にすぎない。消費者からは「(30億元の拠出など)痛くも痒くもないはず」「せめて100億元出さないと、誠意が感じられない」など批判が相次いだ。一方、正義と頂新製油の屏東工場の従業員181人は途方に暮れている。

ベトナム輸入先が「クロ」供述

 彰化地検は同日夜、魏応充前董事長に出頭を要請した。これには、飼料用油脂の輸入先、ベトナムのダイハインフック(大幸福)社の台湾人経営者、楊振益容疑者が取り調べに対し、「社長(魏応充前董事長を指す)は全てを知っている」と供述したことが決め手となった。楊容疑者は、犯罪関係者に関して重要な証言をした場合、刑罰が軽減される「汚点証人」になることが検察に認められた。飼料用油脂の供給に関して、「輸出書類は全て社長の指示に従ったもので、署名もある」との証言を行った。

コスト重視が行き過ぎ

 台湾高等法院検察署は同日、彰化、台北の地検などと協力し、台北市仁愛路の高級マンション「宏盛帝宝」にある魏応充氏の自宅、台北101ビルの事務所、味全の会社や研究所、分析検査センターなどを捜索し、証拠書類を押収、関係者5人から事情を聴取した。

 彰化検察の関係者は、押収書類から見て取れるのは、頂新グループが厳しいKPI(重要業績評価指標)を設定したため、正義や頂新製油が過度のコスト削減で利益を追求し、悪循環に陥ったことだと語った。原料は安ければ安いほどいいという考えに陥り、企業の社会的責任など忘れてしまったのではないかと指摘した。

【表】