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《頂新食用油事件》台湾市場は「捨て石」か、味全への康師傅ブランド供与中止


ニュース 食品 作成日:2014年10月27日_記事番号:T00053470

《頂新食用油事件》台湾市場は「捨て石」か、味全への康師傅ブランド供与中止

 頂新国際集団の香港上場子会社、康師傅控股は26日、同グループ傘下の台湾・味全食品工業に対し、今月13日にさかのぼって康師傅ブランドのライセンス供与を停止し、味全が持つ康師傅の即席麺の生産ライン2本を回収すると発表した。味全に康師傅ブランドの即席めんの台湾での生産・販売を中止させたもので、頂新グループの意図についてある食品業者は「台湾を捨て、中国市場を守る」ことにあると分析した。27日付自由時報などが報じた。


頂新グループの問題食用油で商売に打撃を受けたとして、飲食店経営者が頂新製油実業の屏東工場の敷地内に油をまいて抗議した(26日=中央社)

 ライセンス供与中止の理由について康師傅控股幹部は、「味全は管理が悪く、康師傅ブランドを傷付けたため」と説明した。味全は2003年に斗六工場(雲林県)内に康師傅の即席麺の生産ラインを設け、台湾市場に製品を供給してきた。

 頂新グループの食用油事件は中国でも大きく報道され、インターネットユーザーの間で、▽康師傅の即席麺▽ファストフード店の徳克士(ディコス)▽牛肉麺レストランの康師傅私房牛肉麺▽中国全土の全家便利商店(ファミリーマート)──などに対するボイコットが広がっている。このため頂新グループの今回の措置は、問題が起きた台湾市場と線引きをすることで、グループの命脈である中国市場への影響拡大を食い止めようという意図があるとみられる。頂新グループは味全の株式40%を保有しているが、安値で売却する可能性があるという見方も浮上している。

味全、財務悪化の可能性

 味全は現在、新北市三重区での土地開発計画で185億台湾元(約660億円)の協調融資(シンジケートローン)を受けることを計画しているが、先日、参加銀行のうち第一商業銀行が新規借り換えに対応しない意向を表明した。現在、主幹事行の兆豊国際商業銀行(メガ・インターナショナル・コマーシャル・バンク)が他行の意向を打診している段階だが、ある銀行の幹部は「延期は確定的だ」との見方を示した。

 味全は、同協調融資によって年末に期限を迎える70億元の融資への返済を計画しているため、延期となれば資金繰りが急速に悪化する恐れもある。同社の決算書によると、同社の手持ち現金と流動性資金は計35億2,000万元にすぎない。

 味全は10年に彰化銀行の不良債権だった三重区の158万坪の土地を約101億元で落札。その後、70億元のシンジケートローンを受けていた。

101経営権もピンチ

 先週発売の雑誌『壱週刊』によると、頂新グループを経営する魏家4兄弟の次男で、台北101ビルの副董事長兼総経理を務める魏応交氏が幹部に対し、「その他の事業(台湾之星、中嘉網路の買収計画)がうまくいかなくなっても、台北101の経営権は守る」と語ったとされる。

 こうした報道から、頂新グループは民間筆頭株主として37%を出資する台北101ビルを、死守したい最低ラインと考えているとみられているが、それすら果たせるかは不透明だ。

 27日開かれた立法院財政委員会では、与野党の立法委員が頂新は台北101の経営から撤退すべきと相次いで表明した。張盛和財政部長はこれに対し、明日28日に開かれる台北101の董事会(役員会)で、魏応交氏に副董事長兼総経理からの辞任を要求するよう政府系株主の代表に指示すると答弁した。これにより魏応交氏がどのように対応するか注目される状況となった。

 民進党の呉秉叡立法委員は、魏家は台北101への出資金の87%を銀行融資でまかなっており不合理だとして、財政部が経営権を買い戻すべきだと主張した。