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「中韓FTAより円安が脅威」 、ハイウィン董事長が警鐘


ニュース 機械 作成日:2014年11月18日_記事番号:T00053898

「中韓FTAより円安が脅威」 、ハイウィン董事長が警鐘

 工作機械部品大手の上銀科技(ハイウィン・テクノロジーズ)の卓永財董事長は17日、中韓が自由貿易協定(FTA)の締結交渉で基本合意したことより、急速に進む円安の方が業界には脅威との見方を示した。特にロー~ミドルエンドおよび小型標準機械などしか手掛けていない企業への打撃は大きく、淘汰(とうた)されると警鐘を鳴らした。一方、同社は1米ドル=130円でも競争力を維持できると自信をのぞかせた。18日付経済日報などが報じた。


卓董事長は、遅れている台中市精密機械科技創新園区2期工事は来年第2四半期より着工する見通しを示した(17日=中央社)

 卓董事長は中韓FTAについて、韓国が競争力を付けることが懸念されており、一部メーカーは打撃を受けるが、ハイエンド製品を扱う企業への影響は軽微との見方を示した。同社が世界シェアトップのボールねじについては、韓国にはわずか2社しかない上、輸出能力のない中小企業で全く打撃を受けないと強調した。

 一方、円安は今後1米ドル=120~125円まで進むと予測し、台湾のミドル~ハイエンド工作機械の競争相手は日本企業で、もともと台湾製品は日本に比べ30~35%安く価格競争力を備えていたが、日本メーカーが円安を背景に値下げを行っているため受注を奪われていると指摘した。そのため、台湾の工作機械業界は、早急に製品の複合化、高速化、スマート化を図る必要があると述べた。

 ただ、同社は円安のおかげで日本からの設備購入費用が安く済むと恩恵を受ける面もあるとした。今後も生産拡大の手は緩めない方針で、円安の影響を受けない欧州市場向けのイタリアの加工工場は遅くとも来年中の完成を見込むなど、市場の分散化も進める。

ロボット、「生産拡大は必須」

 今後成長が見込まれるロボットを含むスマート型自動化設備事業については、来年の売上構成比が10%に上昇する見通しだと語った。▽工業▽医療▽生活──の3分野をターゲットにする方針で、中国、欧州の認証を取得した医療用の伸びが顕著になると予測した。

 工業用では従業員の高齢化や人件費上昇、労働力不足の問題が深刻化している中国で、生産ラインの自動化を求める声が年々高まっていることから同社は受注が満杯だという。これに加え、第13次5カ年計画(2016~20年)にロボット事業が含まれたことから、今後さらに中国での需要が伸びるため生産能力拡充は必須と卓董事長は語った。今年2月に発表した蘇州工業園区での研究開発(R&D)、物流、精密製造加工拠点設置計画については、10月に用地を取得済みで来年6月までに着工するとの見通しを示した。ただ、稼働にはまだ時間がかかるため、まずは同園区内で工場を借り受け生産拡大を進める。

15年機械生産額、初の1兆元へ

 同日発表した第3四半期の連結売上高は42億4,000万台湾元(約160億円)と前期比19.8%増、前年同期比25.3%増だった。そのうち工業用ロボットの売上高は3億5,500万元で、前期比51%増と最も伸びた。

 当面の展望については、3~4年にわたり研究してきた携帯電話の筐体研磨専用設備の技術ライセンスを中国の携帯電話サプライチェーン5社に年内にも付与する予定と説明した。1万台に上る需要が見込め、主要部品はハイウィンが独占供給し、来年第2四半期からの出荷を予定している。ライセンス収入だけでなく、新たな経営スタイルとして利益を生み出すブルーオーシャン開拓を狙う。

 なお、工業技術研究院(工研院)産業経済趨勢研究センター(IEK)が同日発表した来年の台湾機械産業の生産額予測は1兆123億元で、初めて1兆元の大台に上る見通しだ。

【図】