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第174回 アルコール呼気検査拒否に対する違法性判断


ニュース 法律 作成日:2015年2月25日_記事番号:T00055528

産業時事の法律講座

第174回 アルコール呼気検査拒否に対する違法性判断

 飲酒をしていないことを理由にアルコール呼気検査(以下、「検査」)を拒否した彰化県の男性が、罰金と免許取り消しの刑罰を受けた事件の判決が、この春節(旧正月)期間中に大きく報じられました。判決の中で裁判所は、警察は検査を要求した当時、「既に危害が発生している」または「危害が容易に発生し得ると客観的かつ合理的に判断した」ことを証明できないと判断、「警察は停車を求めることも、検査を強要することもできない」とし、男性が検査を拒否したことは違法ではなかったという判決を下しました。

正当な手続き求める判例多数

 台湾では毎年多くの飲酒運転事故が発生しているため、飲酒運転の厳罰化を望む社会の声は高まる一方です。しかし、警察は法の執行に当たって法を順守しなければなりません。地方裁判所は通常、警察の検査に対し合法との判断を支持することが多いのですが、争議のある案件に関しては、以下のような参考となる見解を示しています。

▼台南地方裁判所2014年9月29日判決:▽海鮮料理店から出てきた原告はオートバイを店の横まで乗って移動したところで警察に検査を求められた▽裁判所は「車の移動」は「運転」とは異なるため、飲酒運転とはならず、警察は「既に危害が発生している」または「危害が容易に発生しうると客観的かつ合理的に判断した」ことを証明できない▽検査の結果は無効──

▼高雄地方裁判所14年1月7日判決:▽原告はバイクを飲酒運転し、その後の検査を拒否した▽現場の撮影ビデオを見た裁判所は、警察は検査を拒否した際の法律効果を原告に伝えずに原告を告発した▽警察の告発には、明らかな手続き上の違法がある──

▼台北地方裁判所14年12月23日判決:▽原告が警察に止められた世界貿易センター第2館公用停車場の出口は、公衆が通行する場に属する「道路」である▽現場はクラブや飲み屋の林立する地区であるため、警察が「原告はそれらの店から出てきており、また飲酒をした後に運転を行おうとしている」と判断したのは合理的といえる▽検査の結果は罰則の根拠とすることができる──

▼台北地方裁判所14年11月14日判決:▽台北地方裁判所原告は赤信号を違法に左折し、また検査を逃れるために加速して地下室へ逃げ込んだ▽警察は後に続いて地下室へ入り検査を行った▽地下駐車場は外部に開放されておらず、また公衆が任意に出入りできる場所ではない▽警察が私的な空間で違法行為を行った行為者を探すことは「刑事捜査の手続き」であり、裁判所の捜査令状が必要となる▽本件の場合、警察は地下室に入って検査を強制することはできない▽この場合は、外部から「告発」を行うべきだった──

▼台北地方裁判所14年10月31日判決:▽原告車両は信号が青になった後も車両を発車させなかったため警察官が近寄ったところ、原告は既に眠っていた▽原告からアルコール臭がしたため、警察は検査を要求したが、原告は検査に応じなかったため、そのまま告発した▽警察は「アルコール呼気検査処」を設置していない場所では検査を行えないため、検査所ではない場所にいた原告には検査を拒絶する権利がある──

▼台北地方裁判所14年9月26日判決:▽原告のアルコール濃度は基準を上回っていた▽原告は飲酒を否定、しかしアルコールを含んでいた可能性があるビンロウをかんだことは認めた▽警察は、原告の権利を説明せずに検査を行った▽たとえビンロウをかんだことが分かっていても、警察は「アルコール飲料を摂取した場合と同様の手続き上の権利」を原告に与えなければならない▽原告に対して、「口をゆすぐことを要求できる」「飲食後15分を経て検査を行う」などの情報を与えることを拒否することはできない▽本件告発手続きには明らかな瑕疵(かし)がある──

「飲酒運転」の明確な証拠求める

▼新北地方裁判所15年1月22日判決:▽警察は原告が駐車の問題で他者ともめている際に争いに介入、覚せい剤のアンフェタミンを発見した▽警察は原告を警察署に連行し尿検査を行った結果、アンフェタミンの陽性反応が出た▽警察は原告が「運転」をしていたことを証明できないため、尿検査の結果を基に「アンフェタミン摂取後運転」との告発はできない──

▼新北地方裁判所14年12月29日判決:▽原告はバイク運転中に警察に止められたが検査を拒否したため、警察はその場で告発を行った▽「アルコール呼気検査の際には全行程を連続撮影しなければならない」との規定があるが、本件において警察は連続撮影をしていなかった▽本件における検査の手続きは法に反するものである──

▼新北地方裁判所14年11月25日判決:▽原告は検査を受ける際に検査機器を吹き鳴らすことができなかったため、警察は「検査拒否」と見なして原告を告発した▽原告は肺機能に問題があり、呼吸が困難であるため吹き鳴らすことができなかったと主張▽亜東紀念医院で検査を行った結果、原告は肺機能の検査を行う際に指示に完全に従うことができなかった▽原告は「検査を拒否」したわけではない──

▼新北地方裁判所14年11月21日判決:▽原告は駐車後、警察署に入った▽警察は原告がアルコールを摂取したとして検査を要求したが、原告は検査を拒否したため告発された▽警察は原告が車両を運転していたことを目撃していないため、原告に「既に危害が発生している」または「危害が容易に発生し得ると客観的かつ合理的に判断」することはできない▽警察は飲酒運転調査の手続きを開始することはできない──

徐宏昇弁護士事務所

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