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原発事故被災地の日本食品、違法輸入283品目に撤去処分


ニュース 食品 作成日:2015年3月25日_記事番号:T00056085

原発事故被災地の日本食品、違法輸入283品目に撤去処分

 福島第一原子力発電所の事故後に輸入が禁止されている▽福島県▽群馬県▽栃木県▽茨城県▽千葉県──の5県で生産された加工食品283品目が地場輸入業者によって輸入され、台北市や高雄市など8県市の百貨店、量販店などで販売されていたことが24日、衛生福利部食品薬物管理署(TFDA)の調べで分かった。地場輸入商社少なくとも8社が関わっており、中国語のラベルを改ざんした生産地偽装の疑いもあるという。うち30品目は既に放射能未検出の結果が出ているものの、TFDAは販売業者に全品目の撤去を命じた。25日付蘋果日報などが報じた。


新北市内では70品目、約2,400キログラムの日本食品が厳封された(24日=中央社)

 姜郁美TFDA署長は、2月に基隆税関で、盛裕貿易(新北市)が輸入したキッコーマンのしょうゆ製品を検査した際、中国語ラベルには生産地は北海道と記載されていたものの、ラベルを剥がしたところ実際の生産地は千葉県だったことが判明したと説明した。TFDAはこれを受けて今月19〜21日、内政部警政署や各地の衛生局などと連携して、盛裕貿易や三燦貿易(新北市)、柏泓企業(台北市)など日本食品の輸入商社10社に立ち入り、約3,000品目を検査した。

 その結果、森永製菓の「森永ミルクキャラメル」、キリンビバレッジの紅茶飲料「午後の紅茶」、日清食品の即席麺など大手食品メーカーを中心に加工食品283品目が、実際は輸入規制対象の5県で生産されたものの異なる表示が行われていたことが分かり、TFDAは各社の関連食品の在庫計20.4トンを厳封、全品目を対象に順次放射線検査を実施している。なお、生産地は多い順に▽群馬県、99品目▽茨城県、74品目▽千葉県、47品目▽栃木県、44品目▽福島県、19品目──だった。

 姜署長は、日本では製造所固有記号を食品ラベルに記載することで生産地が分かるようにしているが、台湾の輸入商社は、製造者が登記した本社などの住所を生産地と誤解した可能性もあると指摘した。輸入商が故意に生産地を偽装したかは現在調査中だと説明した。その上で、仮に不注意によるものだとしても、5県で生産された加工食品が輸入されたのは事実で、問題の輸入商社は食品安全衛生管理法違反で最大300万台湾元(約1,100万円)の罰金が科されると語った。故意の生産地偽装と判明した場合は、刑事事件として処理されるとの見通しも示した。

新光三越、そごうなどで販売

 新北市衛生局は、問題の輸入商社の卸先である市内のスーパーマーケットの頂好超市(ウェルカム)、松青超市(マツセイ)、日薬本舗、新光三越百貨、ホームセンターの特力屋、HOLA特力和楽などに対し、関連の加工食品を厳封し、1週間以内に店頭から撤去するよう命じた。台北市衛生局も市内の太平洋崇光百貨(太平洋そごう)、新光三越、微風広場(ブリーズセンター)、遠東都会(シティースーパー)に撤去を命じた。

 新光三越と太平洋そごうは、通知を受け直ちに店頭から問題食品を撤去したと説明。また、レシート持参で返品に応じると表明した。シティースーパーは台湾全土6店で問題の食品を撤去済みだ。愛買(aマート)も9品目を撤去した。

「政府と輸入商が結託」

 林淑芬立法委員(民進党)は、日本から食品を輸入する際に輸入業者自身が生産地を申告していると問題視し、「台湾政府は過去4年間、輸入業者の不正を放任している。政府と企業の結託によって、市民の命が危険にさらされている」と強く批判した。

大手3紙がトップ報道

 東日本5県からの食品輸入をめぐっては、昨年9月に日本の農林水産省の職員が立法院などを訪問して輸入再開を訴え、これに対しTFDAが、世界の流れに基づき条件付きで開放を認める方向で検討を進めるとの姿勢を示した経緯がある。今回の事態は台湾の大手一般紙4紙のうち3紙が1面トップで報じており、放射能汚染問題に対する世論の拒否反応の強さが輸入再開判断に影響を与える可能性もありそうだ。

 輸入規制緩和交渉に関わる日本の対台湾窓口機関、交流協会台北事務所の高橋大輔経済部主任はワイズニュースの取材に対し、「(今回違法輸入が発覚した食品は)日本国内で安全が確認され、流通している食品と認識している。輸入規制緩和交渉に悪影響が出るか否か、台湾側の調査結果を見極めたい」と語った。