ニュース 食品 作成日:2015年5月15日_記事番号:T00057001
日本産食品に対する輸入規制がきょう15日から強化された。日本は撤回を強く求めてきたが、台湾側は踏み切った。一部の企業は3カ月分の在庫を前もって積み増し、新規制が招くと予想される通関の遅延に備えた。ただ、在庫が底をつけば、輸入コストの負担増がのしかかり、商品価格の上昇につながる懸念がある。欧米食品への切り替えを検討している企業もあり、一部の日本産食品が今後台湾で手に入らなくなる可能性も出てきた。同日付工商時報などが報じた。
経済部によると、日本からの食品輸入額は昨年4億米ドル以上だったが、規制強化で輸入減少は必至だ(14日=中央社)
規制強化はきょう以降に日本を出港し輸入されるものが対象で、全食品に産地証明(都道府県名を明記したもの)が、8都道府県から輸入される特定7項目の食品に対しては放射性物質の検査証明添付が義務付けられる。
新規制実施を見越し、日本の食品を扱うスーパーマーケットや量販店などは在庫積み増しを進めていた。
高級スーパー、遠東都会(シティースーパー)の劉朝雄営運長は、3カ月以上の在庫を準備したと説明。同スーパーの食品のうち日本産は現在3〜4割を占めるが、今後は欧米の食品への切り替えを検討していると明かした。
量販店の愛買(aマート)は、在庫は3カ月分あると説明した。即席麺やスナック菓子を筆頭に日本産食品は業績全体の5%を占めるが、今後の見通しは観察が必要と指摘した。
台湾無印良品(MUJI台湾)の梁益嘉総経理は、在庫は6月中旬まで持つと説明した。商品全体に占める食品の割合はもともと低く、業績には響かないと説明した。
大潤発(RTマート)は、新規制による輸入コスト増加分を販売価格に転嫁できなければ、現在扱う200品目以上の日本食品のうち約60品目減らす可能性もあるとの見通しを示した。
産地証明、認定機関が具体化
衛福部食品薬物管理署(TFDA)は14日、日本政府発行の産地証明の例として、▽農林水産省が発行する植物検疫証明書▽厚生労働省が発行する自由販売証明書または衛生証明書──を新たに挙げた。姜郁美TFDA署長は、これらの証明書には生産地欄があるため、規定さえ満たせば税関で認可すると説明した。
また日本政府が認定した機関として、経済産業省が発表した16都道府県の商工会議所のリストをTFDA公式サイトで公表した。
さらに、放射性物質の検査証明を発行する機関の一例として、農水省指定の32都道府県の検査機関リストも公表した。
産経の誤報を批判
なお、産経新聞が14日、輸入規制問題をめぐる日台協議が物別れに終わり、「15日から日本からの食品輸入が全て停止することが確実になった」と報じたことで、追随した台湾内外のメディアが「台湾が日本からの輸入を禁止」と報じるなどミスリードが拡散した。
TFDAは、「これらは完全に誤報であり、規定の証明書を添付すれば輸入を認める」と表明した。林永楽外交部長も、日台は交渉を継続中で、物別れに終わってなどいないと説明した。
「規制緩和は偽装解決後」=馬総統
一方、馬英九総統は14日、規制を緩和する場合の時期について「(3月に発覚した東日本5県産食品の)産地偽装事件の真相を日台で明らかにし、市民にしっかり説明してからだ」と発言した。
日本側はこれまで台湾の規制措置を「科学的根拠に欠ける」などと批判してきたが、馬総統は「これは法律問題であり、科学の問題でない」と強調。基準以上の放射性物質が検出されない日本食品の安全性を認めつつも、市民は産地偽装事件によって疑念を抱いていると指摘し、消費者の不安解消を最優先する立場を示した。
林外交部長は、産地偽装事件を共同で調査することで日本側は同意していると説明。関係者は、日台交渉では双方強硬な姿勢を見せているものの、妥協の余地はあるとして、「時間はかかるだろうが、食品規制問題は解決できる」と期待感を示した。
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