ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム 会社概要 採用情報 お問い合わせ

コンサルティング リサーチ セミナー 在台日本人にPR 経済ニュース 労務顧問会員

SPILと鴻海が資本提携、ASEの敵対的買収を阻止


ニュース 電子 作成日:2015年8月31日_記事番号:T00059021

SPILと鴻海が資本提携、ASEの敵対的買収を阻止

 半導体パッケージング・テスティング(封止・検査)大手、矽品精密工業(SPIL)は28日、EMS(電子機器受託生産サービス)最大手、鴻海精密工業と株式持ち合いによる資本提携を結ぶと発表した。封止・検査最大手、日月光半導体製造(ASE)が21日に提示した株式公開買い付け(TOB)による敵対的買収を阻止するホワイトナイトの登場だ。情報筋は、SPILは鴻海との資本提携で、アップルにとってASEに次ぐ2位のシステム・イン・パッケージ(SiP)発注先になり、次々世代プロセッサー「A10」を受注する可能性があると指摘した。31日付経済日報などが報じた。


林SPIL董事長(左)は、鴻海とは従来より提携関係にあり、資本提携の時期が早まっただけと話した(28日=中央社)

 資本提携案によると、鴻海の株式1株に対し、SPILの株式2.34株を割当交付する。ディスカウント率4.15%。鴻海はSPIL増資後の出資比率が21.24%の筆頭株主になり、SPILは鴻海増資後の出資比率が2.2%となる。10月15日の臨時株主総会で提案する予定だ。なお、ASEは出席できないが、SPIL株を売却したい投資家から委任状を集めることは可能だ。

 SPILは、▽直近90営業日の平均取引価格44.87台湾元(約166円)と比べるとASEの買い付け価格はプレミアム0.29%にすぎない▽米国預託証券(ADR)の買い付け価格225米ドルも低過ぎる▽ASEは純投資目的としつつ、提携を模索すると説明し、話が矛盾している▽事前の相談がなく、業界の競争、顧客との関係、業務への影響、従業員の配置など不確定要素が多い──として、SPIL株主に対しASEの株式買い付けに応じないよう訴えた。

 これを受け、ASEは28日深夜、両社の株式交換がSPIL株主の権益に影響すると指摘すると同時に、ASEの株式買い付け価格は鴻海より約19%高いとして、公開買い付けへの応募を呼び掛けた。

 ASEの公開買い付け期間は9月22日まで。ASEは最低5%、最高25%の株式取得があり得るので、SPILの筆頭株主になる可能性も残されている。なお、金融監督管理委員会(金管会)関係者は、1年以内に同じ相手に公開買付を仕掛けることはできないと説明した。

 31日のSPIL株価は前取引日比0.5元(1.27%)上昇し、40元で引けた。

「経営には参画しない」

 劉揚偉・鴻海B次集団総経理は、SPILとの株式交換により、鴻海は顧客に提供する製品の競争力を大幅に高め、郭台銘(テリー・ゴウ)董事長が望む垂直統合を強化できるので、1プラス1イコール2以上の効果が見込めると説明。SPILへの経営参画は鴻海の目的でないと強調した。林文伯(バウ・リン)SPIL董事長も、2017年まで董監事を改選する予定はなく、両社の株式交換は純然たる投資と競争力強化が目的と話した。

 観測によると、アップル幹部は最近SPILを訪問し、アップルの指紋認証センサーチップ、腕時計型ウエアラブル(装着型)端末「アップルウオッチ」のSiP受注について協議した他、「A10」を請け負う巨大工場の新設を検討してほしいと依頼したとされる。

 業界関係者は、アップルの指紋認証センサーチップ、アップルウオッチのSiP受注は現在ASEが握っているが、アップルは発注先分散戦略に基づき、SPILにも発注先を拡大し、両社を競わせることで価格を引き下げる狙いがあると指摘した。

 なお、鴻海グループの半導体関連メーカーは、設備の京鼎精密科技と封止の訊芯科技で、ともにアップルから受注できていない。

 一方、証券会社は、封止・検査の台湾大手2社、ASEとSPILの合併が破局となれば、今後中国の封止・検査業界台頭による脅威が高まると予測した。