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日台租税協定締結、日系企業に恩恵


ニュース その他分野 作成日:2015年11月27日_記事番号:T00060652

日台租税協定締結、日系企業に恩恵

 日台双方の交流窓口機関、交流協会と亜東関係協会は26日、租税協定「日台民間租税取決め」などに署名した。早ければ2016年に発効する。配当などの税率引き下げ、PE(恒久的施設)の定義の明確化や非居住者の要件緩和などによる企業や個人の二重課税の回避が図られ、日系企業にとって恩恵は大きい。27日付経済日報などが報じた。


大橋光夫・交流協会会長(右)、李嘉進・亜東関係協会会長(左)が署名した協定を取り交わした(26日=中央社)

 日台租税協定の主な内容は、▽所得が生じる地域(源泉地)における配当、利子、使用料(ロイヤルティー)の課税の税率を10%に引き下げる(現在は15~20%)▽企業が進出先の税務当局から受けた課税について、生じた問題を解決する枠組みを創設する▽租税に関する情報を交換する枠組みを創設する──など。このほか、▽PEを持たない場合に事業所得の免税を申請できる▽出張者などの報酬に対して課税を免除する要件を従来の滞在日数90日までから183日までに緩和する──なども含まれる。個人の税負担が軽減する上、企業は従業員を派遣しやすくなりそうだ。

 張盛和財政部長は、立法院の審議が不要なため、行政院の審査を通過すれば、早ければ来年にも発効すると述べた。これまで締結した租税協定の相手国・地域で、日本は中国を除けば最も規模が大きく、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)第1陣メンバーのため、台湾のTPP交渉参加に有利に働くと期待感を示した。日台租税協定は、台湾にとっては29番目の租税協定だ。

「台湾への本部設置、人材誘致も」

 財政部は、日本から台湾への今年1~9月の投資額は185億8,000万米ドル、台湾から日本への投資は37億5,000万米ドルに上ると統計数字を紹介した上で、日台租税協定によって双方の投資意欲の高まりと企業の競争力向上が期待でき、ウインウインが実現すると指摘した。

 会計士は、日本企業が中国進出の足掛かりとして、税負担が軽減する台湾に本部を設立し、人材を呼び込むことができると指摘した。一方、台湾企業では特に電子、金融業界が日台租税協定の恩恵を受けると予測した。

 昨年8月に富士通の三重工場に約50億円を出資したファウンドリー大手、聯華電子(UMC)の劉啓東財務長は、現在は双方で納税しているが、今後は一方だけでよくなると語った。

 昨年東京スター銀行を買収した金融持ち株会社大手、中国信託金融控股(中信金、CTBCフィナンシャル・ホールディング)の高麗雪財務長は、これまで東京スター銀行の配当、使用料などの税率は最高20.42%だったが、今後は税率が10%まで下がり、台湾で営利事業所得税(法人税)が課されなくなると指摘した。中国信託商業銀行(中信銀、CTBCバンク)の今年1~9月の税引き前利益235億7,900万台湾元(約890億円)のうち東京スター銀行の貢献度は16.5%だったが、今後はさらに上昇すると予測した。

日台協定、61件に

 交流協会と亜東関係協会は同日、日台における競争法(独占禁止法)の効果的な執行を目指す「日台競争法了解覚書」、日台間の防災実務に関係した交流を強化するための「日台防災実務協力覚書」にも署名した。

 日台間で結ばれた協定は、2011年のオープンスカイ(航空自由化)協定、ワーキングホリデー制度、日台民間投資取決め(投資協定)、13年の日台民間漁業取決め(漁業協定)など08年の馬英九政権発足以降に28件、過去40年余りで61件に上る。