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事件簿51 就業規則がなくても社員に懲戒処分を科せるのか?/台湾


コラム 人事労務 台湾事情 作成日:2022年1月14日

労務コンサルタントの事件簿

事件簿51 就業規則がなくても社員に懲戒処分を科せるのか?/台湾

記事番号:T00100582

 近年、労働者の権利意識が高まってきている中、労使のトラブルや労働者同士のトラブルさえも増えてきています。

 いざ労働者との間でトラブルが生じ、或いは職場規律に違反するような問題社員への対応の場面において、就業規則がない場合、または内容がしっかりと整っていない場合、もしくは現在の法令や会社の実情に合っていない場合には、会社にとって非常に不利となり、或いは対応しようにも身動きがとれなくなってしまう可能性があります。

事例

 会社が主催の忘年会において、一人の社員が酔っぱらった状況で同僚二人に対し暴力を振った事件が発生した。ちょっと軽くたたかせてくれという要求をした上で、軽くと思ったら思いの外コントロールが効かず、それなりの勢いの平手打ちとなったようだ。幸い叩かれた社員は病院を受診する必要があるほどの怪我は負っておらず、また顔に傷や痕はない。しかし会社としては、当該社員に対し何らかの処分を与える必要があると考えている。とはいえ、会社において懲戒処分に関する規定がなく、30名未満の規模で就業規則すら作成していない。このような状況でどのような対応が妥当なのか、総経理は頭を悩ませている。

総経理:李さん、忘年会での暴行の件、法律的にどのような処分を与えることができるかね?

人事担当(李):社員に対する暴力は、労働基準法上、懲戒解雇の事由として認められています。但し懲戒処分に関して法律の定めがありません。一般的には就業規則に従って行うものとしているようです。

総経理:今回のケースは故意によるものではないし、本人も反省しているから解雇するほどではないと思うんだけど、台湾では解雇するのが一般的なのか?

人事担当(李):いいえ、解雇処分は重すぎると思います。下手したら不当解雇で訴訟トラブルになりかねません。

総経理:そうしたら比較的軽い懲戒処分を科そうと思うが、わが社のように就業規則がない場合は、会社側の裁量によって処分を決めてもよいということか?

人事担当(李):いいえ。懲戒処分を科すには、あらかじめ制度化した上で、労使会議で決議し、社内へ周知させておく必要があります。

総経理:もし懲戒処分ができないのであれば、今回の場合、減給が妥当だと思うが、減額や期間について台湾でも法律上の規制があるのか?

人事担当(李):労動局に確認したところ、そもそも会社が一方的に減給することはできないということでした。労働基準法第22条第2項により、給与は全額直接払いを原則としています。本人の同意なく減給した場合、法律違反を問われます。また、就業規則などであらかじめ規定されていないため、減給する根拠を示すことができないことから、本人の同意を得るのに難航することが想定されます。

総経理:困ったな。一体どうすれば良いか。他社ではどうしているのだろうか。

解説

 本件は通常、勤務時間外(会社の所轄外)に行われた非行であるため、会社側が当該社員に懲戒処分を下すことは、法律上非常に難しいと言えます。何らかの戒めを与えるとしたら、争いになる可能性が比較的低い「厳重注意(始末書処分)」とするか、もしくは会社の裁量によって調整することができるボーナスを減額する方法が推奨されます。

 尚、仮にお客様を招待する接待の場で、その食事会が勤務時間に属する場合においては、会社として社員を管理監督する責任があることから、「比例原則」、「平等原則」、「信義誠実の原則」、「権利乱用禁止の原則」に違反しない範囲で処分を与えることができま す。この場合、就業規則に懲戒規定が明記されていない場合であっても、労働基準法第12条第1項第2号に定める「他の労働者に対して暴行を加える」ことが懲戒解雇事由に該当するため、会社の裁量によってそれよりも軽い処罰を与えることは、法律の許容範囲内であると見なすことができます。但し、台湾で減給を行う場合、本人の同意が必要になります。その違反行為が懲戒解雇に該当するのであれば、本人との交渉により減給に同意してもらえる場合もあるでしょう。

 一方、懲戒事由として法律で定められていないものに関する処分については、人事担当者李さんの見解の通り、就業規則や懲戒規程に基づいて行うことが求められます。

 労働者数が30人以上であろうと、30人未満であろうと変わりなく、トラブルというのは起こり得るのです。就業規則の作成義務がないとはいえ、今のうちに整備しておくことをお薦めいたします。就業規則がある場合でも、見直す点がないかどうか、必要に応じて専門家に相談することをご検討ください。

村田亜衣奈

村田亜衣奈

講師 アソシエイツ

就業服務技術士資格を活かして労務問題解決を担当。 法律解釈だけでなく事例を交えたり、顧客事情を察した的確な回答に顧客の信頼が厚い。 ネイティブな中国語と豊富な知識で労務課題の講師も担当している。

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