Keyword.44 治に居て乱を忘れず vs 居安思危


コラム その他 作成日:2008年12月17日

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Keyword.44 治に居て乱を忘れず vs 居安思危

記事番号:T00012314

 
 景気低迷が続くきょうこのごろ、お客さまとお話していても、なんとなく沈んだトーンになりがちです。先日、あるお客さまを訪問したときのこと…

 仕事の打ち合わせが終わり、世間話で自然と不況についての話になり、「貴社でのご事情はいかがですか?」と改めてお聞きしましたところ、その経営者はほほ笑んで謎掛けするようにこう言われました。

 「先人、松下幸之助の言葉に『雨が降れば傘をさす』というものがあります。慌てず、ゆっくり参りますよ」。

 このとき、経営者の「雨が降れば(=苦難に直面すれば)傘をさす(=手を打てばいい)、先行きを悲観し過ぎて不安に惑うのはよくない」とのお言葉を聞き、泰然自若(たいぜんじじゃく)とした心構えでいらっしゃることに関心しました。後になってもう少しこの言葉の意味を調べてみたら、こうありました。

 「雨が降る(=不遇の苦難に陥る)ことが予想されるときには、あらかじめ傘(対策)を準備しておけばよい。そうすれば、雨が降っても(=苦難に陥っても)慌てず、当然のごとく傘をさせば(対策を講じれば)よい」

 では、「雨が降った(苦難に陥った)ときに、傘(対策)がなかったら…?」その答えは、

「雨が降る(苦難に陥る)ことに気づかず、傘(対策)も準備していないのなら、雨にぬれるしかない。雨にぬれて反省し、この次はぬれないように備えるべし」

とのことでした。

 う~ん、なるほど偉人の言葉は「深い!」と恐れ入りました。

台湾産業界の「次に備える傘」

 雨が降り続く(不況による低迷が続く)台湾でも、雨にぬれつつも「次に備える傘」を求めて奔走する動きがあります。

 先日、来年着工予定の工場建設計画の延期を表明した、液晶パネル最大手の友達光電(AUO)の李焜耀董事長は、「景気がいいときは業務で忙しく、社員にゆっくり教育訓練を受けさせるのは難しい。そこで我が社では、不景気なこの時期を利用して社員教育を実施する」と述べています。AUOでは現在、ハイテク系の教育機関と提携して社員のスキルアップを図っているようです。

 また自動車用電子部品などを手掛ける車王電子の蔡裕慶董事長も、「リストラで失業したハイテク産業の経営幹部を一時的に中小企業に就業させるか、中小企業の顧問に就かせ、景気回復後にこれらの人材を元のポジションに戻せば、ハイテク産業の問題を解消し、さらには飛躍的な将来も期待できる。またこれらの費用を、政府が補助すべきだ」と述べています。

企業の人材育成、政府も支援表明

 産業界のこれらの動きをみて、行政院労工委員会でも「立即充電計画」として企業による教育・訓練への補助計画を表明しています。

 操業縮小で一時人材を削減することはやむを得ない措置かもしれません。ですが、ただ人材を切り捨てるのではなく、この不況期に優秀な人材を育て、来るべき景気回復後の将来に備えるというのが同計画の主旨です。

 日本では、バブル崩壊後の企業の人員削減や雇用の手控えが、後の後継者問題や、就職氷河期世代のフリーター化・ニート化などの社会問題を引き起こしています。このことを考えると、台湾の企業・政府の施策は、見習うべきところがあるように思います。

 冒頭の松下幸之助さんの言葉には、「治に居て乱を忘れず(居安思危、こあんしき)」という言葉が、続けられています。逆境が過ぎればまた平穏な日々が戻り、人はのど元過ぎれば熱さを忘れがちですが、そんなときこそ危難に対する備えを心掛けることが大切だと説かれています。


ワイズコンサルティング 宮本美子

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