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事件簿20 引継ぎ未完の離職を拒否できるか?


コラム 人事労務 作成日:2009年9月9日

労務コンサルタントの事件簿 労務問題Q&A

事件簿20 引継ぎ未完の離職を拒否できるか?

記事番号:T00017789

 
●KY新入社員、立つ鳥跡を濁す...?!
  
 在台日系食品メーカーの総経理T氏は、台湾に駐在して半年。本社でも体育会系の熱血営業マンで通っていたT氏にとって、台湾赴任当初は異文化の壁に悩まされる毎日だった。ろくにあいさつも交わさず、遅刻の常習犯となっている無気力な台湾人社員と職場の雰囲気を改善すべく、日本式の率先垂範(自ら手本を示す)を実践する日々を続けた。(T氏の苦渋の日々は事件簿9をご覧下さい)
 
 あれから半年...半ばあきらめの境地に至ったT氏に一筋の光が射した。10日前に営業職で採用した新卒社員Sである。面接での彼の積極的な態度とやる気に「そうだ、若手から教育しよう!」と思い立った。他の社員の無気力病が伝染しないよう、自ら進んで営業の心得を指導した。
 
(あれ?今朝はまだ出社していないな...)

「総経理、ちょっとよろしいでしょうか?」

人事担当のH小姐が、T氏の元へやってきた。

H小姐:今朝、営業の新人Sさんから電話がありまして...。
 
T氏:ああ、そう。遅れるとか?きょうは休み?

H小姐:それが...今日付けで離職したいとのことでした。

T氏:えっ?!今日で辞める?なんで??

H小姐:...実は少々言いにくいのですが...、わが社で学ぶべきことはもう習得したので、さらにキャリアアップするため転職する、総経理には大変お世話になりました、と言ってました。
 
T氏:学ぶべきことはもう習得した?!...

(たった10日で何を習得したって言うんだっ!)
 
H小姐:はい、それからきのうまでの給与をすぐ振込んでほしいとも要求がありました。
 
T氏:給与?!試用10日の分際で何が給与だ!大体、電話で即日、離職を願い出るなんて聞いたことがない!それに指示しておいた仕事の残りは?!報告も引継ぎも無しなんて無責任過ぎるじゃないかっ?!
 
 あまりのことに堪忍袋の緒が切れ、怒りが頂点に達したT氏だったが、相対する人事担当H小姐の表情は「私に言われましても...」と、やはりどこまでも他人事の風情なのであった。

●解説
 
 社員が自己都合で離職する場合、事前に会社へ離職の予告を行う義務があると、台湾の法令にも定められています。ただし、離職予告期間は「勤続3カ月以上1年未満の者:10日前」「勤続1年以上3年未満:20日前」「勤続3年以上:30日前」と規定され、「勤続3カ月未満の者」に対する予告義務は定めがありません(労基法第15条)。よって、上述ケースの新人社員Sが即日、会社へ離職の意思を告げたことは法には違反しません。また試用10日間でも会社は就労対価の給与を支払う義務があります。

 なお、引継ぎを行わず、あるいは引継ぎが完了しないまま社員が離職することについて、労働主管機関トップの労工委員会の見解は、

*離職時の引継ぎ義務について法令に定めはなく、労使で約定(就業規則・労働契約)があれば、労働者はそれに従う義務はある。

*「離職」は労働者の権利であり、規定の離職予告期間内に会社へ離職意思を「予告する」義務はあるが、離職には「会社の同意は不要」。

*社員の引継ぎ未完了が、会社に損害を与えた場合は、民法により損害賠償を請求できる。


 従って会社は「引継ぎ未完」を理由に社員の離職を拒否できませんが、損害を被った際は賠償請求ができるとの解釈になります。日本人経営者にとっては、腑に落ちない見解ですね。
 
ワイズコンサルティング 宮本美子

労務コンサルタントの事件簿労務問題Q&A

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