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事件簿22 行方不明者の家族へ死亡給付は下りるか?!


コラム 人事労務 作成日:2009年10月7日

労務コンサルタントの事件簿 労務問題Q&A

事件簿22 行方不明者の家族へ死亡給付は下りるか?!

記事番号:T00018383

 
●法的な死亡確定とは...?!

 在台日系化学メーカーK社の総経理T氏は、ある種の予感を胸に抱きながら、台湾人のC経理を総経理室へ招き入れた。1年前、台中のローカル工場を吸収合併して法人を立ち上げて以来、予期せぬ出来事が矢継ぎ早に発生した。言葉や習慣の異なるローカル体質の従業員50名を統率するのは、並大抵の苦労ではなかった。(詳細は事件簿19をご参照下さい)

 毎回事が起きる度に頼りにしてきたC経理がいつになく張りつめた面持ちで「総経理、お話があります」とやってきたのだ。(今度は一体どんな難問なんだろうか)T氏もさすがに、緊張の色を隠せなかった。

C経理:台中の工場長から連絡がありまして...、従業員の一人が2日前から行方不明だそうです。

T氏:えぇっっ!!!行方不明?!

C経理:はい。今朝、工場にも警察が事情聴取にやってきたそうです。該当者は勤続が長いH先生です。足腰を痛めて2年前から生産ラインを外れ、守衛と補助作業に従事していました。奥さんの話では、土曜の昼過ぎに友人と会うと言って家を出たきり、日曜になっても帰らず、さすがに、昨日警察に届け出たようです。

T氏:それで、誰か工場で事情を知る者はいたのかね?

C経理:それが、金曜はいつも通り退社して、特に普段と変わりなかったそうです。警察も事件に巻き込まれた可能性があるとして、現在捜査中とのことです。

T氏:分かりました。また何か分かったら、すぐ報告して下さい。

C経理:承知しました。(...ついに、刑事事件まで起きたか...)

 それから半年、H先生の消息は依然つかめず会社もやむを得ず、在籍扱いとしていた。

C経理:総経理、H先生の処遇ですが...実は、奥さんから何らかの補償をしてほしいとの要望がきていまして。

T氏:うん、気持ちは分かるけど...労災ではないし、取り扱いが難しいね。

 会社からは当初に見舞金を支給し、特別配慮でこの半年、賃金を半額支給してきた。

C経理:奥さんがたまりかねて、「労工保険の死亡給付を申請をしてくれないか」とも言ってきてますが...。

T氏:縁起でもないなぁ。そもそも、死亡が確定していないのだから、死亡給付は下りないんじゃないかな。

●解説

 このケースにおいて、会社が決めるべきH先生の処遇はさまざまありますが、ここでは、奥さん申し出の「労工保険の死亡給付」が下りるか、考えてみたいと思います。

 労工保険条例に規定されている「死亡給付(葬儀手当・遺族年金)」を被保険者の家族が受領するには「被保険者の死亡」が前提となります。このケースのように被保険者が行方不明の場合、台湾での法的な死亡確定は、裁判所の死亡宣告(判決書上の死亡確定)に基づきます。

 また民法では、「行方不明者は行方不明から満7年後に、裁判所によって利害関係者あるいは検察官の陳述に基づき死亡宣告がなされる」「特別な災難に遭遇した行方不明者は、その特別な災難終了から満1年後に死亡宣告を為す」との定めがあります。

 よって今回のケースの、行方不明から半年の状況では(特別な事情・判決がない限り)、法的な死亡確定は為されず、故に死亡給付の受領も、難しいといえます。

 なお、死亡給付の受領請求権は、受領可能日から2年間行使しないと失効となりますが、今回のケースのような状況の場合、受領請求権の有効期間は「法的な死亡確定日」から起算することとされています(労工委員会解釈令より)。


ワイズコンサルティング 宮本美子

労務コンサルタントの事件簿労務問題Q&A

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