事件簿33 賞与支給日前に離職する社員に賞与支払いは必要か?


コラム 人事労務 台湾事情 2014年4月22日

労務コンサルタントの事件簿 労務問題Q&A

事件簿33 賞与支給日前に離職する社員に賞与支払いは必要か?

記事番号:T00049880

 荒井氏は総経理として台湾赴任10年目を迎えるベテラン駐在員だ。台湾の人事労務事情は大体理解しているつもりで、この10年で、本社の規定を参考に、台湾の文化・習慣を反映させながら自身で就業規則や社内規定を整備してきた。荒井総経理は「日本の通りにやっていれば問題はない」と安易に考えるようになっていた。

「賞与を支払わないと訴える」

 ある日、3月末で退職する社員Aが総経理室に退職のあいさつにやってきたと思いきや…。

社員A:「今までお世話になりました。ところで、毎年4月に支給されるはずの年末賞与は、今月分の給与と一緒に支払われるのでしょうか?」

荒井総経理:「わが社の人事マニュアルの規定通り、4月の支給日に在籍している者が対象だから、支給できない決まりのはずだよ」

社員A:「しかし、人事マニュアルには前年の会計年度4月から3月に在籍している者とも書いてあります」

荒井総経理:「離職する社員に賞与を支払うなど日本では考えられないし、離職する社員に賞与を支払った前例もない。そもそも君も人事マニュアルに目を通して、内容に同意したのではないか?」

社員A:「納得できません。確かに私は離職しますが、今まで会社に貢献してきたのだから、会社は賞与を支払う義務があると思います。もし支払わないのなら会社を告訴します」

 荒井総経理は困り果てて、弁護士事務所を訪ねて相談したが、弁護士の判断は「賞与を支払う義務がある」だった。

●解説

 一見、社員Aが「言った者勝ち」で年末賞与を請求しているように見えるが、実は、台湾では賞与の意味合いは前年の業績から来る利益分配で、支給日と言うのは会社都合であり、「支給日に在籍している者」というのは賞与支払いを拒否する理由にならないという判決事例が多い。残念ながら、今回の事例でも社員Aと全面対決した場合、会社が敗訴する確率は高い。

 法的根拠としては、労働基準法第29条の規定により、「年末賞与の支給時に、労働者が該当事業単位の営業年度終了後、利益計算時に在籍し、また該当年度に過失がなかった場合、年末賞与を受領する資格を有する。上記条件を満たす労働者に対して、年末賞与を支給すべきである」と明記されている。

 一方、労働部の見解では、労働基準法第29条には罰則が設けられていないため、労使協議の下、労働者が同意をした場合は、その取り決めに従うことで構わないとのことだ。

 それでは、就業規則に賞与支給の条件を明記し、行政当局の認可を得ていれば効力は生じるのだろうか?実は、就業規則の認可申請を受理する機関の労働局の見解では、労働基準法第29条に規定がある以上、法律に違反することを就業規則に明記して認可を得られるかは記述によって異なり、一概には言えないが難しいとのことだ。

 それぞれの見解を聞いた上で、労働部の言う通り、一般的には賞与をもらいたい労働者であれば、賞与支給日まで離職をしないと考えられる。確かに今回の事例のように、労働者が会計年度の全期間就業していて、賞与支給を請求してきた場合、裁判での勝敗は弁護士の言うように労働者に有利なケースが多いようだが、この場合は特例として対応すればよい。

 トラブル回避策としては、社内制度や規定に賞与に関する考課期間、支給対象、支給条件を明記することをお薦めする。また、労使協議の上で取り決めた場合は、必ず同意書を取っておくべきである。ただし、採用の際に「わが社では賞与を含めて年間14カ月分の賃金は保証する」と伝えていたり、労働契約に「賞与:年間最低2カ月」などの記載がある場合はこの限りではないので、注意が必要だ。 

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