記事番号:T00005170
弊社事で恐縮ですが、弊社では従業員福利の一環として、毎月1回懇親会(食事会)が、開催されます。幹事には、予算枠内(費用会社負担)で、「おいしく」「サービス、応対がよく」「トレンド・話題性ある」お店の手配という特命が与えられ、幹事の番が回ってくるのが、少々プレッシャーでもあります。
以前、KTV(カラオケボックス)で会社の懇親会を行った際、宴もたけなわな遅い時間に、KTVのスタッフが我々の部屋を訪れ、「身分証の携帯」を問われたことがありました。聞けば、台湾でもKTVなどでの未成年者の夜遊びが横行しているため、時折、警察による抜き打ち捜査が入り、身分証の提示を求められることがあるとのことでした。
当日、私は居留証やパスポート等の身分証を何も携帯しておらず、心配になりましたが、「未成年に見られることはない(!)」との社長の言葉に、安心(?!)した記憶があります。
日本人は身分証への意識が希薄
私の身分証不携帯の出来事は、日本での習慣と関連がありそうです。
日本では、外国人登録証明を持つ外国人居住者を除き、日本人には携帯を義務付けられた「身分証」というものがありません。海外渡航時には、個人身分証明であるパスポート携帯を意識しますが、国内では本人確認が必要な状況での身分証明書(運転免許証、保険証、住民票など)を除いて、確固たる「身分証」の存在がないゆえ、私自身の身分証に対する意識も薄かったものと思います。
一方で、日常的に「身分証」の提示を求められない安定した社会で生まれ育ったことを、感謝すべきであるのかもしれません。
台湾人は14歳で身分証発行
台湾には、「中華民国国民身分証」というものが存在します。これは、「戸籍法」という法令に基づき、満14歳の中華民国国籍を所有する者へ発給され、14歳未満の者は申請に応じて発給されると定められています。なお、満14歳の者への発給に必須の指紋捺印は14歳未満の者は不要で、満14歳時に改めて指紋捺印すればよいとされています。
また「姓名条例施行細則」には、中華民国国籍を有する国民の本名証明は「中華民国国民身分証」を以て為すとも規定されています。新入社員が入社する際、本人証明や管理手続きの必要から、同国民身分証の提示や、写しの提出を義務付けている企業も多いですね。
日本統治時代に台湾で発給された「良民証」は、終戦による日本の台湾撤退後廃止され、その後大陸からやってきた国民党政府による戒厳令の下、戸籍調査が進められ、正式に身分証が発行されました。これを起源とする「中華民国国民身分証」は、その後時代とともに、記載内容、発給方式、手書き版から電子処理版への移行などの変遷を経てきました。そして現在最新版の同国民身分証には、表面に氏名、生年月日、性別、統一身分番号が記載、右上に規格サイズの本人の写真が掲載され、裏面には、両親の氏名、配偶者の氏名、出生地、住所が記載されています。
在台外国人の身分証、ICカードに
さて、日本人を含む台湾に居住する外国人ビジネスパーソンの、台湾での身分証はパスポートまたは居留証になります。居留証は「招聘(しょうへい)居留証」「永久居留証」(その他「台湾人配偶者の続柄による居留証」)に大別され、居留事情により居留証を取得していない方を除き、多くの長期駐在員の方は、緑色の「招聘居留証」を取得されていると思います。 これら外国人向け居留証も、昨年7月1日より、偽造・改変防止を狙った最新のICカード型の発行が開始されています。従って、07年7月1日以降、居留証を新規に発行する場合はすべて最新ICカード型で発行されていますが、既存発行済み居留証の、最新ICカード型への移行措置についても、台湾政府は以下の通り定めています。
第1次移行措置:07年7月1日~12月31日
居留証「変更記載」欄に余白がある場合を除いてICカード型へ切替え
第2次移行措置:08年1月1日~12月31日
1)居留期間延長・居留事情(会社・住所)の変更に伴う、居留証再発行並びに、居留証破損・遺失に伴う居留証再発行の申請時
→ICカード型へ切替え
2)居留証所有者への強制全面移行
→台湾政府管轄機関より、順次指定期間に、居留証所有者へ移行措置を通知、管轄機関の通知を受けた者は、移民署にて移行措置を行う
※ICカード型発行における補足点:
再入国許可証(現状はパスポート内に貼付)の取扱い
シングル(一次)→現状取扱い(パスポートに貼付)を維持
マルチ(多次)→ICカードへ情報入力(出入国時、居留証提示が必要)
【出典:内政部出入国及び移民署公告】
一般に駐在員の方の居留証申請は、社内台湾人担当者や会計士が対応されていると思われ、恐らく適切な時期に代行措置や提示があるでしょうから、ご参考までにご一読下さい。
さて、以前は「身分証」に対する意識が薄かった私も、台湾での異国暮らしで「身分証」(居留証)を常時携帯する習慣がつきました。といいますのも、仕事で顧客先を訪問した際、セキュリティ体制が整ったオフィスビルの場合、1Fのビル受付で、自身の会社名、氏名、訪問先名等を台帳に記入するか、身分証の提示を求められることがあるからです。
ただし、ビル受付担当者によっては、私が「訪問先(日系企業)」を告げ、私が日本人であることが分かると、「ノーパス」で通してくれることもよくあります(ビルセキュリティの面からは少々問題ありですが)。
台湾では、自国政府発行の身分証より「日本人であること」自体が、より信頼性の高い「身分証」となり得る…ということでしょうか。
ワイズコンサルティング 宮本美子