記事番号:T00052267
Y社は運送業務を行う台湾現地法人で、従業員規模は150人ほどです。Y社では、就業規則に「飲酒運転を起こした場合、懲戒解雇を行う」と規定し、あらかじめドライバーらから同意を得ておりますが、実際に飲酒運転をした社員を懲戒解雇できるのでしょうか?
酒気帯び運転で検挙
管理部長:「総経理、実はA社員が5カ月前に酒気帯び運転で検挙されまして…」
総経理:「なんだって!うちの社員が酒気帯び運転で検挙されてたって言うのかね!」
管理部長:「事情を聞いたところ、休日に飲酒運転で検挙されたことを会社には黙っていたようです」
総経理:「けしからん!そんなたるんだ気持ちでは困る!」
管理部長:「そうですよね…ただ、酒気帯び運転でしたが、事故は起こしていませんし、もう罰金も支払いました。本人も反省していますし…」
総経理:「事故がなかったのは、不幸中の幸いだが、わが社は運送会社だぞ。そういう問題では済まされないと思う。社内規則に従って、A社員の処分を考えてくれ」
こうして、翌日経営会議にて協議した結果、会社はA社員の懲戒解雇を決定しました。しかし、A社員は懲戒解雇された数日後、プライベート上の行為を理由とする懲戒解雇は無効であるとして、訴状を送付してきました。
果たして、会社はプライベート上の行為を理由として、従業員に懲戒処分を科すことは可能なのでしょうか。
●解説
原則として、従業員のプライベート上の行為について懲戒処分することはできません。また、飲酒運転を起こした場合の懲戒解雇は、あらかじめ就業規則に記載していたとしても、主管機関の認可は得られないでしょう。
しかし、労働基準法第12条第3項「有期懲役以上の刑の確定判決を受け、執行猶予されずまたは罰金刑への変更を許可されなかった場合」に該当すれば、解雇は可能ですので、「飲酒運転を起こし、労働契約を履行できない場合」に変更する必要があります。
また、飲酒量の程度や新聞などでの報道の有無、人身事故などの重大な事故であったかどうかで判断します。解雇について、労働基準法第12条第4項に「労働契約または就業規則に違反し、経緯が重大な場合、会社は従業員を無予告解雇できる」と定められています。
ただ、「経緯が重大」について明確に定義していないため、従業員が懲戒解雇条件を満たしていても解雇できるがどうか判断が難しいことも多いです。また、運送会社であるからといって、プライベートでの飲酒運転が必ずしも懲戒処分の対象になるとも限りません。
台湾では、懲戒処分はあくまでも最終手段であり、企業秩序を維持するために認められています(就業規則の主管機関へ届け出・認可を得る場合は、懲戒処分に対する全従業員の同意書も必要です)。
そうは言っても、従業員の私生活の行為が、企業活動の遂行に直接関連したり、企業の社会的評価を低下・毀損(きそん)させるものであれば、企業には従業員を懲戒して、秩序を保つ必要性があるといえます。
例えば、運送業のうち、タクシー会社であれば、「あの会社のタクシーは怖くて乗れない」など、安全運転上の批判を浴び、多大な被害を受けることも予想されますので、懲戒解雇を含めた厳しい処分も可能だと思います。
しかし、あくまでも懲戒処分の性質上、プライベート上の行為を理由として懲戒処分をすることはできないという原則は、念頭に置いておく必要があるでしょう。
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