事件簿38 退職金を支払った後に不正が発覚!?


コラム 人事労務 台湾事情 2014年9月26日

労務コンサルタントの事件簿

事件簿38 退職金を支払った後に不正が発覚!?

記事番号:T00052909

 M社は台北市にある従業員約20人の化学商材の専門商社です。長年勤めていた営業課長が定年退職の条件を満たしたと同時に、自ら退職願いを提出し、旧退職金制度適用者のため、会社へ退職金の支払いを求めてきました。会社は通常通りの退職手続きの中で問題なしと判断し、法令通り退職金を支払いました。しかし、2カ月ほどたったころ、事件は起きました。

退職金を返還させるのは合法?

管理部長:「総経理に報告があります。言いにくいのですが、実は2カ月前に退職した元営業課長ですが…不正が発覚いたしました。」

総経理:「えええー?!どのような不正をしていたんだ?」

管理部長:「わが社と長年取引をしているA社との間で、金銭的な不始末を起こしたんです。その事実が露見する前に、自ら退職していったようです。」

総経理:「こんな恥さらしなことがわが社に起きるなんて…それで、一体どれぐらいの損害になるんだ?」

管理部長:「現在、精査中ですが、その金銭的損害は100万台湾元以上にもなりそうです。このようなことが分かっていれば、当然、懲戒解雇で、退職金は支払わなかったはずです。」

総経理:「その通りだ。会社に100万元以上もの損害を与えた社員に退職金なんてビタ一文払うものか!すぐに支払った退職金を会社に返還させたまえ!」

管理部長:「会社が受けた損害については、弁護士を使ってでも本人に損害賠償の請求を行うことは問題ないと思いますが、一度支払った退職金を返還するように請求できるのでしょうか?」

 果たして、本来は懲戒解雇処分である不正事実が発覚した元従業員に対して、退職金の返還を求めることは合法なのでしょうか?皆さんも考えてみてください。

●解説

 既に退職した元社員に支払った退職金を会社に返還させることは、法的には難しいです。なぜなら、すでに退職したということは、労働契約は解消され、社員としての立場で就業規則を順守する義務はないからです。退職後に、就業規則を持ち出して懲戒権を行使することは難しいでしょう。

 そして、退職金も労働基準法第53条の「勤務期間が15年以上であり、かつ年齢が55歳に達した場合」、「勤務期間が25年以上の場合」、「勤務期間が10年以上であり、かつ年齢が60歳に達した場合」のいずれかに該当した場合、定年退職の請求権は社員にあり、いったん支払ってしまった以上、返還請求が認められることはまずありません。在籍中に不正が露見していれば、確かに懲戒解雇は可能で、解雇金は支払わずに済んだかもしれません。しかし、定年退職の条件を満たした社員には、法律に基づき、退職金を支払う義務があります。

 金銭に関わる業務や部署に所属する社員が退職する場合は、このようなことがないよう十分に調査し、在職中に不正がなかったか確認する必要があります。また、労働基準法により、労働契約終了から30日以内に解雇金や退職金を支払わないといけないと規定があります。

 今回のケースでは、在籍中に不正を露見できなかったわけですが、あらかじめ退職金支払いルールを明確にしておくことも大切です。例えば、30日以内にしっかり調査を行い、「会社は、退職金は社内の調査が終了した後、退職日から1カ月以内に支払う」などと、就業規則や退職金規程に定めておくことをお勧めいたします。

佐々木緑

佐々木緑

コンサルタント

高校より台湾のインターナショナル校・専門学校に進学し、卒業後、2年間日本成田空港制限区域内の免税店にて就業し販売員の経験を持つ。台湾帰国後、2007年にワイズコンサルティング入社〜現在に至る。管理部・営業部に配属され、現在は労務コンサルタントとして活躍中。

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