事件簿39 休日に行う研修は賃金を支払う!?


コラム 人事労務 台湾事情 2015年1月23日

労務コンサルタントの事件簿 労務問題Q&A

事件簿39 休日に行う研修は賃金を支払う!?

記事番号:T00055069

 従業員規模が約70人の日系印刷会社で社歴30年のA総務部長は駐在3年目。社内規定の整備も一段落し、本社からも近年はグローバル人材の育成として海外の現地スタッフの教育に力を入れるように言われている。そのため、今年からは幹部教育のため、費用をかけて外部講師を社内に呼んで研修の実施を行うことにした。

土曜日の研修は残業?

 しかし、当初の工場の生産計画と業務の状況を確認したところ、どうも幹部が一度に集まれるのは休日しかなかった。

 A部長は、研修はむしろ会社と幹部のためになることだからと考え実施することにし、各部門のマネジャーに土曜日に出社し研修を受けるよう指示を出した。

 そして研修当日、A部長も出社し研修の状況を後ろで見ていた。途中の休憩時間中、A部長のところにマネジャーBがやってきて話し掛けた。

マネジャーB:「A部長、今日は土曜日ですが、今日のこの研修って残業になるのでしょうか?」

A部長:「残業?これは君たちのためにやっているわけだから、残業になんかなるわけないだろう。実際に仕事をしているわけでもないし」

マネジャーB:「ですが、もともとこの日は休みだったはずですよね。それなのに会社に来いと言われているのですから、残業でもなければ仕事でもないと言われるのは納得がいきません」

A部長:「繰り返すが、これは君たちのためにやっていることだ。日本本社でも研修は労働時間外の時間にやるものだからな…。しかし、君はマネジャーともなってそんなことを言うとは、幹部としての自覚はあるのか?」

マネジャーB:「…それは違うんじゃないですか?日本と台湾とでは考え方が違いますから…」

といった感じで、二人はちょっとした口論になってしまった。そうこうしているうちに休憩時間が終了し、A部長はBに研修に参加するよう指示し、口論を終えた。

 A部長は、週明けに早速顧問のコンサルタントに相談することにしましたが、今回の研修はどのように考えるべきでしょうか。


●解説

 まず法律を確認すると、労働基準法第30条により「労働者の1日の通常労働時間は8時間を超えてはならず、2週間の総労働時間数は84時間を超えてはならない」とありますが、労働基準法における労働時間とは通常、労働者と雇用主が協議し定めるとあります。

 また、労働部の公布する解釈令により以下の通り明記されております。

 「雇用主が従業員に対し強制的に教育訓練に参加させた場合、その訓練時間は労働時間に計算される。また、教育訓練は通常の業務と性質が異なるため、その時間の賃金の付与方法は労使双方で協議の上決定される。なお、訓練実施時間と労働時間の合計が、労働基準法で規定されている通常労働時間を越えた場合は、労働基準法第24条の規定により延長時間分の割増賃金を支払わなくてはならない」としていることから、労働時間であるかどうかは、参加が強制であるかどうかが大きな判断ポイントと言えます。

 従って、研修が自由参加であり、それに出席しないことについて何ら不利益も定められていないときには、労働時間とはなりません。一方、業務命令として参加が義務付けられているような研修の場合であれば、労働時間となりますから、賃金を支払う必要があります。

 しかし、休日出勤として割増の賃金を支払うべきかどうかは、通常労働時間の2週間84時間を超えているかどうかにより判断します。通常労働時間を超えた場合は、法律上休日の出勤扱いとする必要があります。
また、あらかじめ就業規則に代休と賃金の相殺についての規定があれば、労動者の同意の上、振替休日を付与することで対応することは可能です。

 ただし、振替休日取得を強制すると法律に抵触しますので、労動者が賃金付与を選択した場合は、休日出勤手当を支給する必要があります。 

佐々木緑

佐々木緑

コンサルタント

高校より台湾のインターナショナル校・専門学校に進学し、卒業後、2年間日本成田空港制限区域内の免税店にて就業し販売員の経験を持つ。台湾帰国後、2007年にワイズコンサルティング入社〜現在に至る。管理部・営業部に配属され、現在は労務コンサルタントとして活躍中。

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