事件簿41 出張時の移動時間は労働時間か?


コラム 人事労務 台湾事情 2015年7月31日

労務コンサルタントの事件簿 労務問題Q&A

事件簿41 出張時の移動時間は労働時間か?

記事番号:T00058444

 在台日系企業A社に勤務するB営業課長は、社歴15年以上のベテラン営業マンです。出張要請に協力的なため上司の評価は良いのですが、課長職までは残業代を支給するため、会社はB営業課長の多額の残業代に頭を悩ませていました。

総経理:「今月の給与だが、なぜB課長だけこんなに残業代が高いんだね?」

人事部長:「B課長は出張が多く、出張手当に加えて、休日出勤時の残業代を支払っているからです。例えば、月曜日の午前8時から高雄の客先で作業を開始できるよう、前日の日曜日に高雄のホテルまで移動し、休日移動の残業4時間を申請してきております」

総経理:「確かに朝早くから公共交通機関は使えないから、休日に移動するしかないな…だが、出張手当を支払っているだろ?」

人事部長:「はい、ですが台湾域内の出張手当はわずか350台湾元です。休日を犠牲にして働いているのだから、休日出勤手当は支給すべきです」

総経理:「しかし、台湾の労働基準法(労基法)では休日の移動時間も労働時間となるのか?念のため確認してくれ」

人事部長:「はい、承知しました」

●解説

 実は、従業員が出張のために、休日に移動した場合の移動時間を勤務として見なすかどうかは、労働部発布の解釈令によると、台湾の法律には特別定めがございません。

 そのため、労使双方の協議にて取り決めることが可能でございます。

 例えば、「移動時間の定義」、「移動距離」、「移動時間の上限」、「支給金額」については労使協議の上、取り決めて問題ありません。

 なお、労働部によると、わざわざ休日を使って移動することは、休日を充分に休めなかった点を配慮し労働時間と見なすよう推奨はしております。

 トラブル回避策としては、法令規定のない事項については、あらかじめ就業規則あるいは労働契約にて約定を盛り込むことをお勧めいたします。

 詳細は下記の解釈令をご参照ください。

◎解釈令:行政院労工委員会七十八年六月三日台(七十八)労働二字第一三三六六号函

 「労働者が出張あるいは研修に伴う交通時間が労働時間として見なされるかについては、明確に規定されていない。出張に伴う交通時間が労働時間に算入されるか否かは明確な定めがないため、労使相互の協議により取り決めて構わない」

 また、労働基準法施行細則第18条と第19条によると、平日・休日に問わず移動だけではなく実際に労務を提供している場合、あるいは異なる事業場所を往復する移動の場合は、移動時間も労働時間と見なさなければなりません。

パターン1:高雄客先から就業場所間の移動
⇒労働時間と見なし、給与100%を支給

パターン2:台南客先から自宅間の移動
⇒移動時間であり労働時間と見なさないため、給与0%

 すなわち、労働基準法施行細則第19条に基づき、出発地と到着地ともに就業場所あるいは作業場所である場合は、休日出勤手当として2倍の賃金を支給するか、従業員の同意の上、振替休日を与えなければなりませんので、ご注意ください。

◎労働基準法施行細則第18条

 労働者が出張またはその他の原因で事業場所の外で労働に従事するため労働時間を計算できない場合は、通常の作業時間をもってその労働時間とする。ただし、実際の労働時間が証明された場合は、この限りではない。

◎労働基準法施行細則第19条

 労働者が同一事業所または同一雇用者の下、異なる事業場所で労働するとき、各該当場所での労働時間を通計し、さらに事業所間を往復する交通時間をも加算しなければならない。 

佐々木緑

佐々木緑

コンサルタント

高校より台湾のインターナショナル校・専門学校に進学し、卒業後、2年間日本成田空港制限区域内の免税店にて就業し販売員の経験を持つ。台湾帰国後、2007年にワイズコンサルティング入社〜現在に至る。管理部・営業部に配属され、現在は労務コンサルタントとして活躍中。

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