記事番号:T00060623
台湾では近年の日本食ブームにより、日系の飲食店が台湾全土に進出しています。N社は台中に進出した飲食店で、2店舗展開しておりました。
ところが、先月初めて台中市労働局の臨検が入り、労働時間の超過・労使会議の未実施の2点を指摘され、管理部長がその対応に追われました。
管理部長:「総経理、先月の臨検の対応についてご報告いたします」
総経理:「本社にも報告しなければならないから、分かりやすく頼むよ」
管理部長:「は、はい…まず労働時間の超過については、1週間40時間勤務を超過しないシフトを組むように店長らに指導しましたので、すぐに改善できそうです」
総経理:「分かった、もしそれで人手が足りないようであれば、アルバイトの増員を検討してくれ」
管理部長:「はい、承知しました。続いて労使会議の未実施ですが、労使双方の代表者を選出し、労使会議発足の届け出をしなければなりません」
総経理:「そうか。それにしても、台湾は3カ月に一度労使会議を開催しなければ違法になるのか〜。知らなかったよ」
管理部長:「はい、私もです。ところで使用者側は総経理と私の2人で問題ありませんが、労動者側の代表が厄介でして…」
総経理:「労動者側はA店舗とB店舗の陳店長と李店長にお願いするか?」
管理部長:「それが、法律上、管理職は労動者代表になれないのです」
総経理:「法律上の管理職の定義はあるのかね?」
管理部長:「管理権を行使している管理職とありますが…定義があいまいです」
●解説
台湾の法律上、労使会議とは、労働関係の調整を図り、労使間協力を促進し、労働能率を高めることを目的に、最低3カ月に1度開催しなければならないと規定されております。雇用者代表は会社からの任命ですが、労動者代表は労使会議実施方法第5条第1項および第7条により、労使会議とは「会社は雇用者代表を任命し、労働者代表は労働者全員より直接選挙で選ばなければならない」と定めておりますので、労働者側代表(15歳以上)を社内で選出する必要があります。
ただし、労使会議実施方法第8条により、「雇用者側を代表して管理権を行使する一級業務行政主管人員は、労働者側代表になることはできない」との規定があります。
つまり、管理職の役職名称が付いている幹部は、一級業務行政主管人員と見なされる恐れがあるため、労動者代表になることはできません。
また、労働局に聞くと管理職の定義はないため、実際の職務内容に人事採用権、決裁権などを有する管理職あるいは経営職の次の職群(職階)を一級業務行政主管人員と指すとのことです。
例えば、部門長の上位職に本部長がいる場合は、本部長が一級業務行政主管人員と見なされます。
弊社の調査によると日系企業で労使会議を実施している企業はわずか3割ほどですが、労働基準法第83条および労使会議実施方法第18条に基づき、3カ月に一度労使会議を開催していない場合は、違法となります。
台北市労働局はこのほど労働条件調査を強化しており、企業もいち早い対応が求められております。
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