事件簿45  董事の報酬は個別契約ではない!?


コラム 人事労務 台湾事情 2016年4月29日

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事件簿45  董事の報酬は個別契約ではない!?

記事番号:T00063892

 在台日系企業のA社は、プラスチックの成形・加工等を行っている化学メーカーです。今年で創業40年で、本社と工場を合わせると、従業員は合計で約100人になります。

 今年定年を迎えた台湾人副総経理を5月から董事(取締役)として、委任契約を締結することになりました。

総経理:「当社としては初めて台湾人スタッフが董事になるんだ。給与以外に何か特別に支払わないといけない手当はあるのか?」

管理部長:「はい、すでに調べてあります。主には董事の報酬、配当それに交通費について支払います」

総経理:「なるほど。配当は利益剰余金からの配当でいいので、利益処分案として定期株主総会で提案すればいいのだな」

管理部長:「その通りです。交通費に関しては双方の取り決めで問題ありません。そこで、気になるのが董事の報酬ですが、会社法によると定款か株主総会にて董事の報酬を議決していただかないといけないようですが…」

総経理:「定款を変更するのは董事会で議決がいるし、株主総会で董事の報酬を決定するのは繁雑だ…何か良い解決法はないのか?」

管理部長:「そう言われましても…台湾では董事の報酬は董事会で決められないことになっていますし、そんなことができたら高額な董事報酬を董事同士で決められてしまい、コンプライアンス違反になります」

総経理:「それであれば、個別の契約で報酬を決めればいいのではないのか?」

管理部長:「それについては、可能かどうかをコンサルタントに聞いてみます」

●董事報酬の議決について

 多くの日系企業の皆様が董事会の開催時期ということで、会社法について多くの質問を頂いております。そのため、今回は「董事の報酬(中国語は董事酬労)」について取り上げさせて頂きました。

 まず、会社法第27条により法人株主から選任された董事との間は、委任関係に当たります。そのため董事には、授権範囲内で職務を行使する義務があり、その対価として報酬を受け取ります。当然ながら別途規定がない限り、董事の報酬を総経理と個別で協議の上、取り決めることはできません。

 また、台湾の会社法196条によると、董事の報酬は定款または株主総会の決議をもって議決する必要があるとされております。そのため、董事の報酬を定款または株主総会ではなく、個別に契約した場合は無効となりますので、トラブルを回避するため、董事の報酬は、定款または株主総会にて決議されることをお薦めいたします。

 一方、会社法第128条の1によると、法人が一人株主の場合は、株主総会に関連する規定は適用しないとあります。この場合、董事会にて董事の報酬を決定し、民法541条に基づき、委任者である法人株主に議決権があるため、最終的には株主総会にて議決を行う必要があるという解釈になります(最高法院民国102年台上字第1304号判決を参照)。

 なお、労働者から董事になる場合に、董事報酬だと定款や株主総会にて議決が必要なため、報酬という名目ではなく、交通費(中国語は車馬費)の名目として、今までの給与分を毎月支給し、賞与分は配当として利益処分案の際に一緒に議決する方法をとっている企業もあります。

 最後に、本ケースですと、今まで総経理の部下であった副総経理を董事に据える場合、董事に選任された時点で、総経理の部下でなくなる点を今一度ご認識ください。総経理は職責上の地位であり、会社法上の意味合いはありません。日本人董事長が総経理を兼ねている場合はよいのですが、そうでない場合は、台湾人スタッフをいきなり董事に選任するのはお薦めいたしません。

◎経済部経商字第○九三○二○○五五五○号函(抜粋):会社法第196条の規定により、董事の報酬が定款で定められていない場合、株主総会にて決議する必要があります。そのため、定款や株主総会にて決議せず、董事会にて決議した場合は、法律の許容範囲ではありません。かつ、定款においても董事の報酬について董事会または董事長に決定権を授権させることはできません。従いまして、会社法の規定により董事報酬は定款に明記するか、株主総会にて決議すべきです。(以下省略)

◎最高法院民国102年台上字第1304号の判決(抜粋):会社法第27条第1項の規定によると、「行政機関または法人が株主である場合、取締役または監査役に選任されることができる。ただし、自然人を指定して代わりに職務を行使させなければならない」とあり、次に会社法第192条第4項の規定によると、「会社と取締役間の関係は、本法に別段の定めがある場合を除き、民法の委任に関する規定による」とあります。(以下省略)

佐々木緑

佐々木緑

コンサルタント

高校より台湾のインターナショナル校・専門学校に進学し、卒業後、2年間日本成田空港制限区域内の免税店にて就業し販売員の経験を持つ。台湾帰国後、2007年にワイズコンサルティング入社〜現在に至る。管理部・営業部に配属され、現在は労務コンサルタントとして活躍中。

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