第2回 焼酎を化学する


2019年3月21日  コラム その他

第2回 焼酎を化学する

記事番号:T00082591

 前回のウイスキーに続いて、今回は日本の蒸留酒、焼酎についてうんちくを傾けてみましょう。

/date/2019/03/21/20science_2.jpg「本格焼酎」は原料の風味が残る、単蒸留という手法を用いるなど、一定の要件を満たしたものを指します

 国税庁の統計によると、焼酎の日本国内の2015年の消費量は85万8,000キロリットル(kl)で、日本酒の58万9,000klを上回っています。コメ、ムギ、イモ、ソバなどの原料を使い日本全国で作られている焼酎ですが、何といっても500年以上も前から作られている芋焼酎が最も有名でしょう。芋焼酎で知られる鹿児島県は、成人1人当たりの焼酎消費量首位です。

発酵はスピード勝負

 芋焼酎の製法は、まず米麹(こうじ)と水と酵母を加えて5~6日発酵させた「1次もろみ」を作ります。ここまでは日本酒と同じです。

 この中に蒸したサツマイモを細かく砕いて投入することで、発酵が加速します。こうじ菌によりでんぷんが糖になり、それが酵母によってアルコールになります。日本酒は雑菌による発酵を抑えるために寒い冬に仕込み、ゆっくり発酵させますが、暑い薩摩では発酵しやすいサツマイモを使い、雑菌が入る前に一気に発酵させます。

 このまま8~9日ほど発酵させると「2次もろみ」となり、これを蒸留することで原酒ができます。

 芋焼酎のほとんどは常圧蒸留(80度前後)します。すると加熱によって濃厚な(臭い)香りになります。一方、減圧蒸留(50~60度)ではもろみの香りがそのまま出ます。

 常圧蒸留の初めは沸点の低いエステル成分が多く華やかな香りを持ち、温度が一定になったところで焼酎の一般的な成分に変化します。終盤には熱により、フルフラールや高級脂肪酸エステルなどが生成され、焼酎に濃醇さを与え、味の幅を広げます。

イモの種類が個性に

 蒸留によって得られた成分をブレンドした原酒をかめの中で熟成させます。アルコールクラスターと水の水和クラスターから水和シェルを作り、まろやかにするのはウイスキーと同じですが、木の樽(たる)に入れて貯蔵しないので、樽由来の色と香りはありません。

 焼酎は暖かい気候の下で作るため、雑菌による汚染が起きやすく、明治時代までの芋焼酎は今よりもっと臭かったそうです。明治の終わりに沖縄から泡盛の製造に使う黒こうじ菌が入ってきたことで、芋焼酎用のこうじ菌が改良されました。こうじ菌は大量のクエン酸を生成し、1次もろみを酸性にすることで雑菌の増殖を抑えます。クエン酸は全く蒸発しないので原酒が酸っぱくなることもありません。

 焼酎の99.7%以上は水とエタノールです。芋焼酎の場合、残りのごくわずかな成分のうち、サツマイモに含まれるモノテルペン系アルコールが独特の香りに寄与します。品種により含有量が違うので、焼酎の個性となります。

 また焼酎にはわずかにうま味成分であるリノール酸エチルが含まれており、日光が当たると酸化分解してアルデヒド類を生成、脂臭い匂いを出します。暗色のボトルに入れ、日光に当たらないようにして保存するのがいいでしょう。

 最後に焼酎のお湯割りの飲み方ですが、お湯を先に入れるのが鉄則です。焼酎の後にお湯を入れるとアルコールが飛び、原料の香りよりもアルコールのツンとした香りが強く出てしまいます。

 さて、今夜は林森北路の五右衛門で焼酎片手に日本食といきますか!

松田立人

松田立人

化学業界ビジネスコンサルタント

京都大学卒 工学博士 一部上場の化学会社において日本と台湾の経営トップとして化学業界を熟知。研究開発、事業企画から国内外営業、人事労務に至る幅広い経験を持ちます。更に国内外に多くのビジネス人脈を有します。ワイズコンサルティング副董事長

博士の雑学サイエンス

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