コラム

記事番号:T00083194
2019年4月25日15:47

 皆さん、「レアアース」って聞き覚えありませんか?2010年9月、尖閣諸島で違法操業していた中国漁船が、海上保安庁の巡視艇に体当たりした事件に端を発し、日中関係が険悪になった際に、中国が報復措置として輸出規制を実施し、日本をはじめ世界が大騒ぎしたあの「レアアース危機」の天然資源のことです。

/date/2019/04/25/20science_2.pngレアアースは身近なさまざまな機器に使われる、なくてはならない資源です

 レアアースはハイブリッド車、電気自動車、核磁気共鳴画像法(MRI)やスマートフォンの強力磁石、発光ダイオード(LED)や液晶ディスプレイ(LCD)の材料、石油精製の触媒材料等に欠かせない金属元素のことで、周期律表ではIIIB族第4周期の21Sc(スカンジウム)、第5周期の39Y(イットリウム)、第6周期のランタノイドと呼ばれる57La(ランタン)~71Lu(ルテチウム)の17元素の総称です。日本語では「希土類元素」と言います。このうち57La(ランタン)~63Eu(ユーロピウム)までを「軽希土類」といい、それ以外を「重希土類」といいます。

中国が埋蔵量3割

 レアアースはマグマ由来の鉱床の花こう岩中に存在し、中国の埋蔵量は世界の30%程度です。特に軽希土類はインド、オーストラリア、ロシア、米国、ブラジルをはじめ世界に広く分布しています。しかし重希土類は偏在性が高く、現在、中国のある特定の鉱床でしか十分に生産できる量が確認されていません。また、レアアースはその含有量の低さから1,000トンを産出するのに20万~30万トンの廃土が出ることや、ウランやトリウムなどの放射性物質を含むことから、環境問題や安全問題に関わるためなかなか安価に生産することが難しいのです。

安値攻勢で市場独占

 そして、そんなことにお構いなしに開発できる中国が、安値攻勢で市場を独占しているのが現状です。10年当時、世界の生産量の何と97%(約12万トン)を中国が占め、その半分強の56%が日本向けでした。

 レアアースは日本の競争力の源で、尖閣事件の報復として輸出規制が行われたことで日本をはじめ世界が危機感を覚え、日本ではレアアースを使わない磁石の開発「脱レアアース戦略」、都市鉱山からの「回収技術開発強化」、「戦略的備蓄」などの対策をとって競争力をさらに高めました。おかげで中国のレアアースの価格は下落し、自分で自分の首を絞める結果となりました。

「脱中国化」推進

 日本はまた、資源安全保障の観点から中国以外での開発も進め、カザフスタン(住友商事)、インド・ベトナム(豊田通商)、オーストラリア(双日)、米国(モリコート)などの例が挙げられます。新たな資源探査も着手され、12年6月には東京大学のグループが南鳥島付近の海底5,600メートルで日本の消費する約230年分(200兆円以上)に相当する重希土類のジスプロシウム(66Dy)があると発表しました。しかも濃度は中国の10倍以上ということです。今後は三井海洋開発と共同で深海底から泥の回収技術開発を目指すと発表しました。

 さてさて商業的にペイする技術開発ができるのか?興味のあるところです。最近、中国の艦船が鳥島付近をうろうろしているのは、ひょっとしてレアアース資源の探査を画策しているのかもしれません。いずれにしても14年時点でも輸入の6割を中国に依存している状況ですし、希少価値の高い重希土類は中国南部に局在していますので、やはり隣国中国とは仲良くやっていかなければならないことは明らかです。

松田立人

松田立人

化学業界ビジネスコンサルタント

京都大学卒 工学博士 一部上場の化学会社において日本と台湾の経営トップとして化学業界を熟知。研究開発、事業企画から国内外営業、人事労務に至る幅広い経験を持ちます。更に国内外に多くのビジネス人脈を有します。ワイズコンサルティング副董事長