コラム

記事番号:T00083697
2019年5月23日15:43

 2018年11月開催のワイズコンサルティングのセミナーで取り上げた「再生可能エネルギー」の代表選手で、分散型電源のエースである太陽電池パネルが「有害ごみ」になるかもしれないという話題を取り上げます。

廃棄量300倍へ

 太陽電池パネルは電極やシリコンを何層にも強固に接着してできており、これを分離してリサイクルするのが難しく、20~30年の寿命を迎えると産業廃棄物として処分場に埋め立てられているのが現状です。しかしながら太陽電池パネルにはシリコン以外に鉛やセレンなどの有害物質も含まれ、こうした情報を提供せずに処分されているのが総務省の調査対象の8割に上ったそうです。

 11年のあの東日本大震災後の政府の支援策に押されて、太陽光発電設備はそれ以前の6倍ほどに急増しました。今後その寿命を考えると40年の廃棄量は約80万トンと15年の300倍超となる見込みです。これは1年間に日本全国の処分場に埋め立てられる量の約8%に相当します。

/date/2019/05/23/20koram_2.jpg太陽電池モジュール排出量の見込み 出典:環境省

 廃棄コストも問題なので環境省だけでなく経済産業省(経産省)も太陽電池パネル事業者にパネル建設費の5%相当額を廃棄費用に確保するように求めていますが、チェックする仕組みがないので実効性には疑問符が付きます。

リサイクル技術で解決

 そこで期待されるのが太陽電池パネルを効率的にリサイクルする技術革新です。まさにピンチをチャンスに変える発想の転換です。

 経産省傘下の国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は「太陽光発電リサイクル技術開発プロジェクト」を実施しています。

 民間企業ではPVテクノサイクルがホットナイフ分離法という技術を開発して、太陽電池パネルの表面のEVA(エチレン酢ビ樹脂)を約300度に加熱したナイフで溶融し、ガラスとその他の部材をきれいに分離して、ガラスと金属の完全リサイクルを可能にしたと発表しています。

 また新菱(親会社は三菱ケミカル)は、太陽電池パネル製造工程の逆工程を自動化した解体技術開発に成功し、なんとパネルを構成する95%の資源をリサイクルすることが可能になったとしています。このリサイクル技術は現在世界一と言われています。

回収システム整備が急務

 しかしながら現在の最大の問題は太陽電池パネル回収リサイクルについての法整備が追い付いていないことです。自動車や家電については法律で廃棄やリサイクルするためのコストを負担する仕組みが確立しています。太陽電池パネルについてはまだそのコストをどうするかの議論が行われていません。

 法律は問題が起きてから作ることが一般的ですが、将来を予測して対策を立てることも重要でしょう。不法投棄が起きる前に太陽電池パネルの廃棄についての法整備が早急に必要と思います。

 この面では先行している欧州に倣って日本も廃棄パネルを回収、リサイクルするための先進的なシステムを作り上げることが急務と言えるでしょう。もちろん、台湾でも状況は同じです。


【セミナー資料販売中】
台湾における再生エネルギーの現状と日系企業のビジネス
https://www.ys-consulting.com.tw/seminar/80694.html

松田立人

松田立人

化学業界ビジネスコンサルタント

京都大学卒 工学博士 一部上場の化学会社において日本と台湾の経営トップとして化学業界を熟知。研究開発、事業企画から国内外営業、人事労務に至る幅広い経験を持ちます。更に国内外に多くのビジネス人脈を有します。ワイズコンサルティング副董事長