第5回 電子レンジの科学


コラム その他 作成日:2019年6月27日

博士の雑学サイエンス

第5回 電子レンジの科学

記事番号:T00084306

 冷蔵庫、テレビなど家電の「3種の神器」に加えても不思議でない電子レンジについて、ちょっと科学的考察をしてみましょう。単身赴任生活をしておられる方には、まさに必需品。「一体どうして火を使わずに食べ物が温まるの?」と考えたことがおありですか。それは、電子レンジの原理と深く関わっています。

 日本語では「電子レンジ」、英語では「Microwave Oven」、中国語では「微波炉」と言いますが、加熱原理を名前に残しているのは英語と中国語です。電子レンジは、マグネトロンという発信用真空管で発生させたマイクロ波を食品に吸収させることで、食品中の水分子を振動させ、食品自体を加熱します。

/date/2019/06/27/20image_2.jpg電子レンジ

マイクロ波とは何?

 マイクロ波とは、レーダーや衛星通信など通信用に使われることが多い電磁波の一種で、周波数で言えば300メガヘルツ(MHz)~300ギガヘルツ(GHz)の範囲を指します。日本の電子レンジでは、周波数2.45GHzのマイクロ波が使われています。

 マイクロ波は、電場と磁場の大きさが変化しながら、光と同じ速さで進みます。それがどうして食品を加熱することになるかですが、食品にマイクロ波を当てると、永久双極子(電界がかかっていない状態でプラスとマイナスの双極を持っている分子)である食品中の水分子は、マイクロ波の電場の向きにそろって並びます。これを配向分極と呼びます。

 周波数2.45GHzのマイクロ波では、1秒間に24億5,000万回電場の向きが変わり、それに合わせて水分子は配向分極を繰り返します。その過程で、周囲の分子の抵抗を受けるなどして、水分子は電場の向きの変化に追随できずに、マイクロ波のエネルギーの一部が熱エネルギーとなって失われます。これを誘電損失と言います。この熱によって食品の温度が上昇するのです。

 マイクロ波のエネルギーは、容器に使われるガラスなどの分極していない誘電損失の低い素材は通過しても、食品中の水に吸収されます。エネルギーのほとんどは食品の温度上昇に使われるため、素早く食品を加熱できるのです。

 同じH2Oでも、水は分子の自由度が高く分極していますが、氷は結晶構造のため分子が動きにくくなっており、2.45GHzで変化する電場では速過ぎて振動しないので、加熱されません。しかし、もっとゆっくりとした、つまり低い周波数の電磁波であれば氷も加熱することができるでしょう。そんなわけで、冷凍食品を電子レンジで加熱するときは、凍った状態から少し水分が出てからレンジに入れた方がよいというわけです。

金属や空だきに注意

 電子レンジに入れてはいけないものに、アルミホイルを含む金属類があります。金属は皆さんもご存じのように、自由電子を持っています。これが電磁波により激しく振動して動くため、時には電子が飛び出して火花が発生し、火災の原因にもなります。水分を逃さないためには、アルミホイルではなく高分子のラップフィルムをかけましょう。

 また、電子レンジの空だきにも注意しましょう。何も入れないで作動ボタンを押すと、放射された電磁波は吸収されずにマグネトロンに舞い戻り、それを繰り返すとマグネトロンの寿命を縮めることになります。

 蛇足ながら、電子レンジの前面の窓には電磁波シールドの金網が入れられており、電磁波が外に漏れないように工夫されていますのでご安心を。

卵やイモは不向き

 最後に、電子レンジで調理するのに適していないものがあります。卵のように殻や膜で覆われている食品は、中の水分が膨張して爆発することがあります。また、サツマイモは糊化(こか)や糖化などが起こる最適温度をあっという間に通過して加熱され、糖化に必要な酵素も高温で失活してしまうので、甘みが少なく、硬くなってしまいます。

 とはいえ、酒の燗(かん)もあっという間にできる優れもの。上手に使って食生活を豊かに便利に楽しみましょう!

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