コラム

記事番号:T00084813
2019年7月25日15:53

 石油や天然ガスに代わる次世代エネルギー資源として期待されているメタンハイドレートをご存じでしょうか。

 メタンハイドレートとは、低温かつ高圧条件下でメタン分子が水分子に囲まれた網目状の結晶構造を持つ包接水和物の固体状物質のことです。比重は0.9グラム毎立方センチメートルで、堆積物に固着して海底に大量に埋蔵されています。おそらく堆積物中の有機物が分解してメタンが生成し、これが低温高圧下で結晶構造を持った水和物の固体として海底に大量に埋蔵されたものと推察されています。

 私も茨城県つくば市の産業技術総合研究所(産総研、AIST)で実物を見ましたが、外見はドライアイスで、火を付けると都市ガスのような炎を上げて燃えます。まさに「燃える氷」です。

日本近海にも大量埋蔵

 メタンハイドレートは、世界の海域で広く存在が知られています。シベリアやカナダなどは地表近くにありますが、その他は海底深くにあります。日本周辺にも大量に存在しており、日本海、オホーツク海、本州・四国・九州の南海トラフにも大量に存在しています。南シナ海にもまた大量に存在しており、中国の海洋進出の大きな狙いもここにあります。

 とりわけ日本周辺の海底には、北は北海道から南は九州まで日本海側、太平洋側にわたって大量に存在が認められています。2009年の調査では総面積12万2,000平方キロメートル、渥美半島・志摩半島沖の東部南海トラフ海域だけでも1兆1,000億立方メートルと推定されており、国内の天然ガス使用量の11年分に相当します。日本近海全体では7兆3,500億立方メートルと推定されています。

高い技術的難易度

 果たして日本が資源大国になることができるのでしょうか?ことはそれほど単純にはいきません。この膨大な埋蔵量のうちどれだけが実際に取り出せるのか?また取り出すのに必要なエネルギー・コストはどれだけかかるのか?まだまだ問題は山積みです。

 そもそも掘れば自噴してくる石油や天然ガスと違い、井戸を掘ってメタンハイドレートを採掘し、そこから砂や水と分離しメタンガスを取り出して海底から吸い上げる必要があり、コンプレッサーやらポンプやらを稼働させる発電エネルギーも必要だし、何より1,000メートルという海底掘削そのものが、かなり技術的に難易度が高いのです。

経済的優位性に疑問も

 経済産業省(経産省)が音頭を取って資源開発を進めており、掘削技術も現在世界をリードしている日本ですが、現状を見る限り、従来型のガス田が枯渇するまで経済的優位性は見えてきそうもありません。しかしながら中国の例を見るように、エネルギー安全保障の観点からは技術開発の継続は必要でしょう。

 ただ、これとて化石燃料ですので地球温暖化の観点からはプラスとならないもの。別途国が進めている水素社会の構築の方が、実現性もあり、地球環境にも優しい施策と言えるのではないでしょうか。

 水素の製造もメタンガスの改質ではなく、余剰電力を使って水の電気分解を行い、その水素を使って発電もし、自動車も動かし、工場や家庭のエネルギーとしても使う方が、はるかに夢があり実現性があるように思います。皆さんはいかがお考えでしょうか。

松田立人

松田立人

化学業界ビジネスコンサルタント

京都大学卒 工学博士 一部上場の化学会社において日本と台湾の経営トップとして化学業界を熟知。研究開発、事業企画から国内外営業、人事労務に至る幅広い経験を持ちます。更に国内外に多くのビジネス人脈を有します。ワイズコンサルティング副董事長