第8回 有機ELに使われる日本のキーマテリアル


2019年9月26日  コラム その他

第8回 有機ELに使われる日本のキーマテリアル

記事番号:T00085975

 日韓対立で脚光を浴びた、日本企業が圧倒的な市場シェアを持つ半導体用の材料、「超高純度フッ化水素」「フッ素化ポリイミド」などのことは皆さんもご存じでしょう。

 ハイテク産業の鍵を握る日本製材料は、これだけではありません。薄型テレビの主力製品、有機EL(OLED)テレビも、日本製の核心材料なくしては成り立たないのです。

自発光で薄型化できる

 有機ELとは「有機エレクトロルミネッセンス(Organic Electro Luminescence、OEL)」の略で、特定の有機化合物に電圧をかけると発光する現象を指します。

 具体的には有機物を重ねた発光層に電圧をかけて正孔と電子を注入して励起させ、これが元の低エネルギー状態に戻る際に、光エネルギーとなって発光する現象(蛍光や燐光)を利用しています。この一連の発光現象をルミネッセンスと呼びます。原理としては発光ダイオード(LED)と同じです。発光の際に熱エネルギーを伴わない分、光源としては高効率です。

 有機ELテレビの利点は自発光であることです。液晶テレビで使用するバックライトや導光板、偏光板などが不要です。同じ自発光のプラズマテレビとの比較では、放電スペースが不要です。そのため、紙のように薄く、軽量化でき、柔軟に曲げることが可能なディスプレイも作れます。

/date/2019/09/26/20oled_2.jpg有機ELテレビは、黒い部分を全く光のない状態にすることで、高いコントラスト比を実現しています(YSN)

 有機ELテレビ市場では現在、韓国のLGディスプレイ(LGD)が高い世界シェアを占め、ソニー、パナソニック、東芝などの日本勢が追っています。しかしながら、特許の大半は有機ELの開発を他社に先駆けて行った米イーストマン・コダックや、開発の先頭を走る日本企業が押さえています。LGDはコダックの特許利用権を取得しています。

イリジウム精製で高いシェア

 核心材料のうち、現在最も高性能な有機EL燐光材料とされているのは貴金属である白金の仲間、イリジウム(Ir)の錯体です。米プリンストン大学と南カリフォルニア大学の研究グループが見つけました。

 金属錯体とは、金属原子が中心にあり、その周りに有機化合物が配位結合してできる、有機金属化合物と呼ばれるものです。普通の有機化合物のように合成でき、有機溶媒にも溶けます。

 イリジウムは原子番号77、周期律表の第6周期、9族のいわゆる白金族といわれる貴金属です。同族元素にはこの他、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、プラチナ(Pt)があります。

 単独の鉱床はなく、白金の生産に伴い取り出されます。地殻中に少ししか存在せず、年間生産量は30トン程度です。産地は南アフリカが95%と大半を占め、ロシア、カナダなどからも取れます。

 また、融点が2,466度と非常に高いため、精製には特殊な技術が必要です。その技術を持っているのが、日本のフルヤ金属です。有機EL向けのイリジウム化合物の世界シェア90%を占めています。

 ただ、イリジウムは希少過ぎて、有機ELディスプレイ市場が大きくなったら心配ですね。隕石(いんせき)に多く含まれているとのことなので、宇宙に探索に出掛けるようになるかも?

松田立人

松田立人

化学業界ビジネスコンサルタント

京都大学卒 工学博士 一部上場の化学会社において日本と台湾の経営トップとして化学業界を熟知。研究開発、事業企画から国内外営業、人事労務に至る幅広い経験を持ちます。更に国内外に多くのビジネス人脈を有します。ワイズコンサルティング副董事長

博士の雑学サイエンス

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