第11回 水素エネルギーが未来を開く!?


コラム その他 2019年11月28日

博士の雑学サイエンス

第11回 水素エネルギーが未来を開く!?

記事番号:T00087143

 地球温暖化対策の切り札とも呼ばれる究極の脱化石燃料である水素は、燃やしても二酸化炭素(CO2)は一切排出せず、水のみを生成するクリーンエネルギーの極致といえます。いよいよ人類は、この水素をエネルギーとして利用することで、地球を破滅から救うことができるのか?ちょっと大仰な言い回しをしましたが、本当にこれくらいの覚悟がないと、なかなか水素をエネルギー源として使いこなすことはできないと思うのです。

 水素を燃やしてエネルギーに変える一方の原料である酸素は、地球の大気に20.9%と豊富に存在しますが、水素自体の濃度はわずか1ppm(ppmは100万分の1の濃度)以下しかありません。宇宙レベルで見ると水素は最も豊富に存在する元素で、万物の恵みの源である太陽は水素の塊であり、水素を核融合してヘリウムに変えています。ところが水素は一番軽い元素のためか、気体状態では指摘したように地球上には1ppm以下しかありませんが、水(H2O)として大量に存在します。従って、水から効率よく水素を取り出せばよいのです。

 そこですぐに思い付くのが学校で実験した水の電気分解です。2018年11月のワイズコンサルティングのセミナーで取り上げた分散型電源の燃料電池は、この電気分解の逆反応によって電気エネルギーを取り出すものでしたよね。

水素発電に着手

 さらに現在では、もっと大々的に水素を燃料にして燃やしてタービンを回し発電する水素発電も実証運転されています。17年1月から神戸市のポートアイランドで、大林組と川崎重工が水素発電を開始しています。

 また脱石油・排ガスゼロをうたった燃料電池自動車も、ダイムラー・ベンツ、トヨタ、ホンダ、現代(ヒュンダイ)等の自動車会社が既に実用化しています。何よりもガソリン車の開発競争では出遅れた中国が環境対策の切り札として、また次世代の自動車産業での優位性獲得を目指して本格採用に乗り出してきています。

 日本でも安倍総理が17年1月20日の国会演説で水素社会の推進を発表し、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)をはじめ、各機関・企業が水素利用に向けて研究開発(R&D)を進めています。

 18年10月23日には東京で世界で初めて水素閣僚会議が開かれ、米国、欧州、アジアの21カ国・地域から300人超が集まり議論を行いました。19年4月には日本政府が、水素製造コストを50年までに10分の1以下に引き下げ、燃料電池自動車(FCV)や水素発電を普及させる戦略発表を行いました。このように世界は間違いなく水素社会実現に向けて歩み始めています。

水素はどうやって作るの?

 それでは肝心の水素はどうやって作るのでしょうか?水素の製造方法には、以下のようなものがあります。

1.製鉄所・化学工場からの副生水素

2.化石燃料を触媒を用いて改質して製造

3.火力発電の電力による水の電気分解で製造

4.再生エネルギーによる電力による水の電気分解で製造

5.バイオマスにより製造

6.水の高温熱分解により製造

7.光触媒による水の分解により製造

 このうち1~3は既に実用化された技術ですが、CO2フリーではありません。4と5は技術的には確立されていますがコスト面でまだ不十分、6と7はまだ研究開発段階です。

 鶏が先か卵が先かですが、水素発電の夜間の余剰電力で水の電解を行い、水素を製造するという手もあると思うのですが。また、各家庭には蓄電池を設置することも必要でしょう。目標は現行の火力発電の電気代12~13円/キロワット時(kWh)です。20年の東京五輪では選手村を水素タウンとして、競技場との往復は燃料電池バスで行う計画になっているそうです。

 果たして、日本がエネルギー海外依存の呪縛から解かれる日は来るのでしょうか?

松田立人

松田立人

化学業界ビジネスコンサルタント

京都大学卒 工学博士 一部上場の化学会社において日本と台湾の経営トップとして化学業界を熟知。研究開発、事業企画から国内外営業、人事労務に至る幅広い経験を持ちます。更に国内外に多くのビジネス人脈を有します。ワイズコンサルティング副董事長

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