コラム

記事番号:T00009968
2008年9月3日0:00
 
 日ごろ、日系企業の規則作成や人事制度策定のお手伝いをさせていただいている折に、各社の「経営理念」に触れることがあります。昨今のCSR(企業の社会的責任)活動の普及に伴い、企業の経営理念にも「自社の事業を通じて、社会発展に貢献する」といった指針が多く見受けられます。企業の根本的意義はもちろん利潤の追求ですが、社会に直接貢献する事業を意識する企業が増えているようです。

 例えば、日本郵政グループが過疎地の郵便局運営を民間企業に委託するに当たり、警備大手のセコムに白羽の矢が立ちました。セコムが受託するのは、過疎地での不審者進入に備える警備員の、待機拠点における郵便物や貯金などの取り次ぎサービスです。これによって、セコムは過疎地における社会貢献と自社事業の拡大が見込めます。

 また、外食事業を展開するワタミグループも、高齢者向け宅配弁当事業に参入しました(7月31日付で同事業を手掛ける「株式会社タクショク」の株式取得)。もともとワタミグループは福祉事業にも力を入れる企業として高い評判を得ていましたが、昨今の若年層の居酒屋離れなどによる業績低迷の危機を、高齢層向け事業で奪回、同時に社会貢献の度合いをより強めたと言えるのではないでしょうか。

社会貢献に積極的な企業に注目

 「障害者の雇用促進」も、公・民営事業が担う重要な社会貢献でしょう。政府は障害者雇用促進の具体的施策として、「障害者雇用促進法(障害者の雇用の促進などに関する法律)」で、企業に対し従業員の一定比率を障害者とすることを義務づけています(参考:一定比率を達成できていない場合は障害者雇用納付金を徴収、一定比率以上を達成できていれば障害者雇用調整金を支給)。

 障害者雇用促進の企業事例としては、NTTデータが7月1日付で設立した新会社「NTTデータだいち」があります。NTTデータからの出向社員3人と障害者15人で立ち上げ、9月から営業を開始し、2009年3月末に54人体制を目指すそうです。

 今後もこうした社会貢献に積極的に取り組む企業の意欲に、注目していきたいと思います。

台湾における障害者雇用促進事情

 台湾でも日本の「障害者雇用促進法」に当たる法令があります。「身心障礙者権益保障法」の現行規定によれば、「従業員100人以上の民営企業は、雇用する障害者の人数が従業員総数の百分の一を下回ってはならない」とされています。しかし、当該規定には現状では罰則規定がないこともあり、「推奨規定」にとどまっている感が否めません。しかし、昨年7月の改正で新たに罰則規定が設けられ、09年7月以降に施行されることになりました。

 改正後の規定は、「従業員67人以上の民営企業は、雇用する障害者の人数が従業員総数の百分の一を下回らず、かつ少なくとも1人以上」とされ、「同規定に違反した場合は、2万~10万台湾元(約7万~34万円)の罰金が科せられる」となっています。該当する企業は、留意する必要がありそうです。

台湾人の弱者に対するいたわり

 台湾人は、高齢者・障害者など弱者に対して配慮する意識が比較的強いと感じます。公共交通機関に乗り合わせた際、躊躇(ちゅうちょ)なく弱者に席を譲る若者を見かけるたびに、暖かい気持ちになります。一方、最近の台湾のニュースで、「最近は居眠りのふりをして、席を譲らない若者が多い」と老人が訴えているのを見て、日本と同様モラルの低下が進んでいることに少々残念な思いがしました。

 改まって言うと少々おこがましい気もしますが、企業人としても個人としても、義務感ではなく意欲をもって社会貢献に臨みたいと思います。


ワイズコンサルティング 宮本美子