リーガル

記事番号:T00042956
2013年4月8日15:23

 一.はじめに

 世界中の注目を集める中国の話題の一つに不動産価格の高騰があります。しかし、中国の不動産制度、特に土地の制度を知っている人はあまり多くありません。日本では土地を買えば当然自身が所有権を持ちますが、中国の場合は異なります。そして、中国の土地制度の特殊性を知らないまま中国へ進出して工場などを建設する日本企業の中には、予期せぬトラブルに巻き込まれるケースも多くあります。今回は、中国の土地制度を紹介させていただきます。

二.土地は誰のものか

 中国では土地の所有権は国に帰属し、個人や企業が土地所有権を持てないことが知られています。正確には都市市街地の土地は国が所有し(国有地)、農村および都市郊外地区の土地は農民の集団所有(集団所有地)になります。そして、いずれの場合も付与されるのは土地の所有権ではなく、あくまでも土地の使用権にすぎません。

土地の性質で使用用途に制限

 そして、各土地の用途はその性質によって大きく制限されます。国有地は社会インフラ建設、商業用地、工業用地、居住用地などさまざまな用途に使用されますが、集団所有地は基本的に農業以外の用途に用いることはできません。(注1)

 ここに中国に進出する外国企業が陥りやすい落とし穴があります。

 例えば、中国で郊外に安価で土地使用権を入手できる工場用地を見つけ、その地域の管理委員会なども熱心に誘致してくれる場合、真っ先にその土地の性質を確認すべきです。と言うのも、その土地は集団所有地である可能性が高いからです。集団所有地は原則として農業以外に使用することはできず、工場の建設自体が認められません。にもかかわらず、集団所有地を有する農村の管理委員会などが土地使用権の譲渡利益を得たいがために、支払能力を持つ外国企業を無秩序に誘致するケースがいまだに多く見られます。

 また近年、地方であまりに無秩序に土地使用権を企業に払い下げるケースが後を絶たず、その過程で公平な取引が行われないなどの問題が多発したため、2007年以降、特に工業用地の使用権を民間企業に払い下げる場合、入札や競売などによる土地使用権の取得手続きが採用されています。そのため、上記のようなケースで工業用地としての用途であるにもかかわらず、「管理委員会などの合意があれば問題ない」といった勧誘の言葉を持ちかけられた場合、土地の性質を疑う必要があります。

三.土地はいつまで使用できるか

 もし使用予定の土地が国有地であれば、その土地使用権を取得して工場、ショッピングモールやマンションなどを建設することができます。しかし、ここでも中国の土地制度の特殊な点があり、各土地の使用権にはその使用期限が法律で定められています。具体的には▽居住用地、70年▽工業用地、50年▽商業・娯楽用地、40年──とされています。

 この点で、例えばマンションなどが建っている居住用地は、使用期限が終わればマンションの部屋の購入者は部屋の所有権を失うのでしょうか。住宅建設用地使用権については07年に『物権法』が制定され、期間満了した場合、自動的に延長される旨が明記されました。(物権法第149条第1項)(注2)

土地の残存使用期間の確認

 中国でビジネスを行う日本企業にとっては、工業用地の取得が大きな問題となります。そして最近では、中国でも既に多くの工業用地の使用権が企業に払い下げられており、また過去の無計画な払い下げへの反省から、毎年工業用地として払い下げられる土地の条件やその面積も限られています。そのため、日本企業の中には、新たに払い下げを受けるのではなく、他の民間企業を買収することによって、または他の民間企業から既存の工場と一緒にその敷地の土地使用権を譲り受けるケースも見られます。

 一般的に、日本であれば建物や土地を譲り受ける場合、当該建物や土地に抵当権などが設定されていないかを確認することが最重要と言えますが、中国の場合、それ以外に残りの土地使用期間を確認すべきです。中国では工業用地は国の所有であり、例え民間企業に払い下げられた土地であっても、それは一定期間、当該用地の使用が許されているにすぎません。

 そして、最初に国から土地使用権の払い下げを受けた企業がその土地使用権を別の企業に譲渡する場合、その譲受企業は、最初の企業が払い下げられた際に定められた使用期間から当該企業が既に使用した期間を差し引いた残存使用期間しか当該用地を使用することができず、期間が満了した場合には用地上の建物も撤去を余儀なくされる可能性があります。(前段で紹介した『物権法』の規定は、住宅の場合を前提としています)。

 もちろん、使用期間満了後に改めて更新することはできますが、土地使用権の値段が高騰している中国では、更新時に非常に高い更新使用料を要求される場合もあります。そのため、他の民間企業などから工場とその敷地の土地使用権を譲り受ける場合には、その土地使用権の残りの使用期間がどのくらいかを確認して、自分達のビジネスプランに合うのかどうかを慎重に検討する必要があります。

 以上のように、中国の土地をめぐる制度は日本とはその所有関係から根本的に異なっており、土地の使用権を取得する場合でも日本とは異なる配慮が必要となります。限りなく資本主義経済社会に近づいている中国も、基本的な仕組みは社会主義に基づく制度を維持しています。

(注1)農民住宅用地、農村集団経済組織用地は認められています。

(注2)自動延長される場合の延長期間や費用の標準などについては、いまだ明確にされておりません。

コラム執筆者
安江義成弁護士
竹田昌史弁護士
呉嵐嵐中国弁護士

黒田法律事務所・黒田特許事務所 
1995年に設立、現在日本、台湾、中国の3カ所に拠点を持ち、中国法務に強い。 現在、13名の弁護士、6名の中国弁護士、2名の台湾弁護士、1名の米国弁護士及び代表弁護士を含む2名の弁理士が在籍しており、執務体制も厚い。
http://www.kuroda-law.gr.jp/ja/tw/

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