リーガル

記事番号:T00043726
2013年5月20日15:28

 一.はじめに

 中国では個々の事件における人民法院の判断は、他の事件における判断を拘束しません。しかし、これは裁判官に勝手な判断を許すものではなく、最高人民法院が時折公布する司法解釈は、他の人民法院の判断を拘束します。今年に入り、労働紛争事件に関する4つ目の司法解釈である「労働紛争事件の審理における法律適用の若干問題に関する最高人民法院の司法解釈(四)」(2013年1月18日公布、同年2月1日施行、以下「本司法解釈」といいます)が出されました。これには、労働者との競業避止や、使用者による労働契約解除の手続き、外国人就業証の未取得などの問題について解釈が明らかにされています。

二.本司法解釈の概要

1.労働者による競業の禁止

ア.競業避止に伴う経済補償

 中国の日系企業において、特定の労働者との間で労働契約終了後の競業避止義務を約定するケースが増えています。労働契約法では、使用者は、労働者との合意により、労働契約終了後一定期間(ただし、2年以内)の競業避止義務を労働者に課すことが認められています。使用者は、当該期間中、その労働者に対して毎月経済補償を支払わなければなりません。もっとも、具体的な支払い金額について法律では定められておらず、当事者間で約定がない場合には争いになります。

 この点、本司法解釈第6条は、当事者間で経済補償の金額の約定がないまま労働者が競業避止義務を履行した場合、労働者は使用者に対して、労働契約の解除もしくは終了前12か月の平均給与の30%を月ごとに経済補償として支払うよう請求でき、また同金額が当該労働契約の履行地の最低賃金基準を下回る場合には、最低賃金基準に従うと定めました。つまり、当事者間で経済補償の金額を定めず争いになった場合、上記基準が適用されることになりますので、あらかじめ当事者間で経済補償の金額を約定すべきです。

イ.使用者による経済補償の未払い

 本司法解釈第8条は、使用者の原因で、月ごとに支払われるべき経済補償が3カ月(注1)未払いとなった場合、労働者が人民法院に対して、使用者との競業避止制限の合意の解除を申して立てたときには、その申し立てを認めると定めました。

ウ.使用者による競業避止の合意の解除請求

 本司法解釈第9条は、イのように労働者による競業避止の合意の解除請求を認める一方、使用者の側にも、競業避止義務の期間中、自らの必要に応じて合意の解除を請求できる旨を定めました。ただし、解除する場合は労働者に対して3カ月分の経済補償を支払わなければなりません。

エ.労働者の違約と競業避止義務の効力

 労働契約法第23条第2項によれば、労働者による競業避止義務の違反に対する違約金を、あらかじめ約定できます。もっとも、違約金はあくまで約定違反に伴う違約罰にすぎず、使用者の本意は、労働者が競業しないことである場合が多いでしょう。そのため、本司法解釈第10条は、労働者が同義務に違反して違約金を支払った場合であっても、使用者が引き続き労働者に対して競業避止義務の履行を求めることができると定めました。

2.使用者による契約解除と組合への通知

 労働契約法第43条によれば、使用者が一方的に労働契約を解除する場合、事前に労働組合に解除理由を通知して意見を仰ぐ必要があるものの、その意見に従う義務までは規定していません。その結果、同通知義務を怠るケースもありました。

 この点、本司法解釈第12条は、労働組合を組織した使用者が労働契約法第39条および第40条に基づき契約を解除する際に組合への通知を怠った場合、労働者は労働契約の違法解除を理由に損害賠償を請求できる旨を定めました。ただし、労働組合への通知義務を定めた趣旨は、労働組合をして使用者による労働契約の解除の合法性をチェックさせる点にあります。そのため、同条では、労働者の訴訟提起前に、使用者が関連手続の補正を行った場合には賠償義務を負わないとも定めました。

3.外国人就業証の未取得と労働関係

 外国人(香港、マカオおよび台湾地区の者も含む)が中国国内で就業するためには、外国人就業証を取得する必要があり、同証を持たない外国人は中国国内で就業することが禁止されています(「外国人の中国における就業管理規定」第8条第1項)。

 本司法解釈第14条は、外国人就業証を取得していない外国人が使用者との間で労働契約を締結し、その後に発生したトラブルにおいて双方の労働関係の存在を主張した場合、裁判所はその主張を認めないと定めました。つまり、就業証を有しない外国人の労働関係をそもそも否定していることに注意が必要です。

(注1)未払い期間を連続3カ月とするか累計3カ月とするかに関し、弊所にて各地の労働部門や人民法院へ問い合わせましたが、現時点では不明とのことでした。

コラム執筆者
安江義成弁護士
竹田昌史弁護士
呉強中国弁護士

黒田法律事務所・黒田特許事務所 
1995年に設立、現在日本、台湾、中国の3カ所に拠点を持ち、中国法務に強い。 現在、13名の弁護士、6名の中国弁護士、2名の台湾弁護士、1名の米国弁護士及び代表弁護士を含む2名の弁理士が在籍しており、執務体制も厚い。
http://www.kuroda-law.gr.jp/ja/tw/

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