リーガル

記事番号:T00044216
2013年6月17日15:52

一.はじめに

 中国では2008年に独占禁止法が制定されました。同法では、各企業間による市場競争を制限するカルテルや、第三者へ販売する製品の再販売価格の拘束(以下「再販売価格の拘束」といいます)が禁止されました。今回は、再販売価格の拘束が違法であるとの理由で販売代理店がメーカー(外商投資企業)を訴えた事案をご紹介します。本事案については控訴されたとの情報があるものの、その後の詳細については情報を得られていません。もっとも本事案は、中国企業との取引において、日本企業が直面する可能性の高い問題であると考えますので、そのポイントをご紹介します。

二.事案の概要(注1)

 原告X社は、手術部位を縫い合わせる縫合器等の製造販売業務を営む被告Y社の販売代理店であり、約15年間にわたりY社との販売代理店契約を毎年更新していた。08年1月2日に双方で更新した契約書には、被告が指定した価格を下回る価格で製品を販売してはならない旨が明記されていた。
原告は被告から、某病院の入札において原告が無断で製品価格を下げたことを理由に、あらかじめ保証金として徴収していた2万人民元を没収し、数カ所の病院に対する販売権を取り消すとの通知を受領した。

独禁法違反で損害受けたと提訴

 当該通知以降、原告が度々製品の出荷を求めたにもかかわらず、被告は、契約の残期間および同期間満了後も原告への製品出荷を中止した。そこで原告は、被告が販売代理店契約上に再販売価格を拘束する規定を設けて原告にその順守を強制し、同規定に従わない原告に製品の出荷停止や同契約の終了等の不利益を課した行為は独占禁止法第14条第2号に違反すると主張し、同行為により原告が受けた損害の賠償を求めて訴えを提起した。


三.判決要旨

1.独占禁止法第50条の責任

 独占禁止法第50条では、事業者が独占行為を実施し他人に損失を与えた場合、民事責任を負う旨を定める。そして、この民事責任の要件として①独占行為の実施②他人が損害を受けたこと③独占行為と他人が受けた損害の因果関係が必要である。

2.①被告による独占行為の実施について

 独占禁止法第14条は垂直的独占合意を禁止する規定であり、その一つとして事業者が取引先との間で、再販売価格を拘束する独占合意を禁止する。もっとも、同法第13条第2項では、独占合意とは、競争を排除し、もしくは制限する合意、決定、またはその他の協力行為を指すと規定している。そのため、同法第14条に違反するか否かの認定に当たっては、単に事業者と取引先との間で再販売価格の拘束に関する合意があったことだけではなく、当該合意が競争を排除し、もしくは制限する効果を有するか否かを検討する必要がある。

 具体的に、本事案の場合、販売代理店契約上の製品の関連市場における市場シェア、関連市場における上流・下流取引における競争の程度、問題となった条項が製品の供給数量及び価格に与える影響の程度等の要素を考慮しなければならない。

 しかしながら、原告が提出した証拠はインターネット上における被告の製品の簡単な紹介のみであり、同証拠をもって上記の市場シェア、関連市場の競争の程度、製品供給及び価格の変化等を判断することはできない。他方、被告は同種の製品を販売する企業が多く存在する旨の証拠を提出しており、その関連市場で競争が活発であることがうかがわれる。これらのことから、被告による独占行為の実施を認定する証拠が不十分といわざるを得ない。

3.②原告が受けた損害および③因果関係について

 独占行為の実施により被った損害は、主に競争の排除、もしくは制限によりもたらされた損害でなければならない。しかし、原告が主張する損害は、主に08年の業績達成による奨励金、同年、09年における各契約の履行利益、従業員の流出費、信用毀損(きそん)等である。それらは、再販売価格を拘束する条項とはなんらの直接的な関連性がない。

 また本事案の証拠に照らすと、被告が再販売価格の拘束に関する条項を実施するために原告との販売代理店契約を中止し、その継続を拒絶したと認定することもできず、契約の終了に伴う損害という点でも、原告の主張は根拠に欠ける。

4.判決

 原告の請求を棄却

四.留意点

 独占禁止法第14条違反の有無を判断する際に、再販売価格の拘束に関する合意のみならず、市場シェア、市場競争の程度等に鑑みて、当該合意が競争を排除し、もしくは制限する効果を有する独占合意であるか否かを実質的に判断すべきとされました。

 この点、日本の独占禁止法の場合、再販売価格の拘束については当事者間でその合意があれば原則として違法とされ、例外的に再販売価格を指定した当事者が、正当な理由があることを立証した場合に限り合法とされます。そのため、中国と日本では立場を異にするようにも見えます。

 しかしながら、独占合意の例外を定める中国の同法第15条では、①一定の正当事由があること②その合意が関連市場の競争を著しく制限しないこと③消費者にも利益をもたらし得ることを事業者が立証した場合には、同法第14条を適用しない旨が規定されています。この同法第15条の文言からすると、再販売価格の拘束に関する合意が関連市場に競争制限効果を有するか否かについては、同法第15条の適用が問題となり、当該合意を要求した事業者(本事案の場合には被告)が立証する必要があるようにも思われ、裁判所の判断と法律の構成に矛盾があるようにみえます。

 第一審では被告が勝訴したものの、仮に第二審で被告がその立証責任を負うことになれば、今度は被告が敗訴する可能性も十分考えられます。そのため、第二審が同法第14条および第15条の適用関係、並びにその立証責任についてどのように判断するか、注目されます。

(注1)争点を明確にするため、本事案の内容を単純化しています。 

コラム執筆者
安江義成弁護士
竹田昌史弁護士
呉嵐嵐中国弁護士

黒田法律事務所・黒田特許事務所 
1995年に設立、現在日本、台湾、中国の3カ所に拠点を持ち、中国法務に強い。 現在、13名の弁護士、6名の中国弁護士、2名の台湾弁護士、1名の米国弁護士及び代表弁護士を含む2名の弁理士が在籍しており、執務体制も厚い。
http://www.kuroda-law.gr.jp/ja/tw/

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