リーガル

記事番号:T00044477
2013年7月1日15:55

 1.事案

 中外合弁企業X社は、日本の自動車部品メーカーY社と中国ローカル企業との合弁で設立された中国の現地法人です。新製品の製造のため、Y社がX社に対して、Y社が有するノウハウ(自由輸入技術、注1)を使用許諾する技術ノウハウライセンス契約を締結しました。技術ライセンス料に関しては、X社がY社に半年ごとにその新製品の販売額に応じたランニング・ロイヤルティーを支払います。Y社は、「契約締結後直ちに技術ライセンス契約を当局に登記しておく必要がある」と考えていますが、今すぐ登記すべきでしょうか。


2.アドバイス

(1)結論

 技術ライセンス契約を今すぐ登記する必要はありません。X社はランニング・ロイヤルティーによる支払方式を採用していますので、初めてロイヤルティー金額が確定した日から60日以内に登記手続を行えば十分です。また、それ以降の支払いに関しては、その支払期のロイヤルティー金額が確定するたびに契約変更手続を取らなければなりません。

 なお、ロイヤルティーの海外送金には、原則として送金を依頼する銀行に、技術ライセンス契約を登記した際に交付される「技術輸入契約登記証」を提出する必要がありますが、法令上は1回の送金額が5万米ドル以下の場合は、その提出が求められていません。もっとも、各銀行によって取り扱いが異なる可能性がありますので、事前に送金を取り扱う銀行に確認しておくことをお勧めします。

(2)解説

ア)技術輸入契約登記手続

 2009年改正の「技術輸出入契約登記管理弁法」(09年3月3日施行)は、「技術ノウハウライセンス契約」を含む技術輸出入契約について、商務主管部門による登記管理を行う旨定めています。(注2)

 技術を輸入しようとする者は、原則として、技術輸入契約が効力を生じた後、60日以内に契約登記手続を取らなければなりません。(注3)

 ただし、技術輸入契約の技術ライセンス料(ロイヤルティー)の支払方法が、ランニング・ロイヤルティー方式などの歩合とする契約については、初めて歩合基準額が形成された後60日以内に、契約登記手続を行い、それ以降は歩合基準額が形成される都度、契約変更手続を取らなければならないものとされています。(注4)

 このような登記管理制度にもかかわらず、自由類技術の輸入を前提とする契約自体は、「法により成立した時に効力を生じる(注5)」とされており、技術輸入契約登記を行わなかったとしても、契約の効力自体に影響はありません。また、法令上、技術輸入契約の登記手続を行わなかったことにより特に罰せられることもありません。

 そのため、この技術輸入契約登記を行わないことによる一番大きな影響は、後述する技術ライセンス料を国外に送金する際に生じるといえます。

イ)技術ライセンス料の送金手続

 国家外貨管理局の関連規定(注6)によれば、技術ライセンス料を国外へ送金するためには、原則として、上記アの登記手続の際に交付された「技術輸入契約登記証」および税務機関で取得した「納税証明書」などの必要資料を銀行に提出して審査を受ける必要があります。

 もっとも、06年に行われた外貨管理の規制緩和により、1回の送金額が5万米ドル以下の場合には、「技術輸入契約登記証」の提出が不要になりました。(注7)また、08年には「納税証明書」についても1回の送金額が3万米ドルを超える場合にのみ提出が求められることになりました。(注8)

 ただし、これらの書類の提出義務が免除されているからといって、技術契約登記手続および納税の各義務が免除されるわけではありませんので、ご注意ください。

 以上をまとめますと、別表のようになります。

 実務上は、各管轄の外貨管理局、各銀行によって取り扱いが異なる可能性もありますので、送金前に各資料の要否について取引銀行に確認しておくことをお勧めします。

(注1)中国では、「技術輸入管理条例」に基づき、技術輸入の許可管理制度が採用されていますが、本事案でいう「ノウハウ」は、自由に輸入できる技術であり、政府主管部門により輸入が禁止されたり、その許可を求める必要のある技術ではないことを前提としています。
(注2)「技術輸出入契約登記管理弁法」第2条ないし5条
(注3)「技術輸出入契約登記管理弁法」第6条
(注4)「技術輸出入契約登記管理弁法」第7条
(注5)「技術輸出入契約登記管理弁法」第3条2項
(注6)国家外貨管理局が02年3月18日公布した「非貿易為替売却・支払および居住者個人の外国為替収支の管理操作規定(試行)」
(注7)国家外貨管理局が06年4月13日に公布した「経常項目の外貨管理政策の調整に関する通知」第2条1項
(注8)国家外貨管理局および国家税務総局が連名で08年11月25日に公布した「サービス貿易等の項目の対外支払に提出する税務証明に関する関連問題の通知」第1条

コラム執筆者
安江義成弁護士
謝均中国弁護士
KLO投資顧問 藤田大樹

黒田法律事務所・黒田特許事務所 
1995年に設立、現在日本、台湾、中国の3カ所に拠点を持ち、中国法務に強い。 現在、13名の弁護士、6名の中国弁護士、2名の台湾弁護士、1名の米国弁護士及び代表弁護士を含む2名の弁理士が在籍しており、執務体制も厚い。
http://www.kuroda-law.gr.jp/ja/tw/

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