リーガル

記事番号:T00044739
2013年7月15日15:43

一、はじめに

 中国では営業税(注1)から増値税(注2)への変更政策が進められています。昨年1月に上海市において試験導入されて以来、本年8月1日より全国的に政策が展開されることとなりました(注3)。

 営業税と増値税の大きな差異は、1)一般的に増値税の方が営業税より税率が高いこと、2)増値税の一般納税者は、自己の売上額に税率を乗じて算出された売上税額から、物品を購入しまたは課税役務を享受する際に負担した仕入税額を控除可能であるのに対して、営業税ではそのような控除がないことです。その結果、営業税から増値税に変更されることによって税率が上がりますが、控除可能な仕入税額が多額である企業は、かえって納付税額が低額となる可能性があります。また、企業は税額の算出方法を根本から変えなければなりませんので、課税変更政策が各企業に与える影響は小さくありません。

 今回は増値税への変更政策の中核的な法令である「交通運輸業および一部の現代サービス業における営業税の増値税への徴収変更試行に係る実施弁法」(以下「本弁法」といいます)を取り上げます。

二、本弁法の概要

1.課税サービス

 本弁法第1条第1項は、「課税サービス」について、営業税から増値税の納付に変更する旨が明示されています。なお、「課税サービス」の具体的な範囲は、本弁法に付属する「課税サービス範囲注釈」に記載されています。

2.納付税額の計算方法

 当該年度における、増値税の対象となる「課税サービス」の売上額が規定基準である500万元を超えている場合には「一般納税者」、超えない場合には「小規模納税者」に分類されます(本弁法第3条)。

 一般納税者が提供する課税サービスは原則上「一般税額計算方法」により、小規模納税者が提供する課税サービスは「簡易税額計算方法」により、税額が計算されます(本弁法第15条第1項、第16条)。それぞれの計算方法の簡単な計算式ならびに税率および徴収率は以下の通りです(本弁法第3章、第4章および「課税サービスに対する増値税ゼロ税率および免税政策適用の規定」参照)。

一般税額計算方法:
納付税額=当期売上税額(売上額×税率)-当期仕入税額

簡易税額計算方法:
納付税額=売上額×徴収率

税率:増値税の現行税率はサービスごとに異なります。

有形動産リースサービス:17%
交通運輸業サービス:11%
現代サービス業サービス(有形動産リー
スサービスを除く):6%
財政部および国家財務総局が規定する課
税サービス(注4):0%

徴収率:3%

 なお、中国国内に経営機構を持たない国外の会社・組織または個人が国内で提供する課税サービスは、以下の公式に基づき源泉徴収されることになります(本弁法第17条)。

源泉徴収すべき税額=受取側が支払う代金÷(1+税率)×税率

3.増値税の免税

 特定のサービス(国外の会社・組織に提供する技術譲渡サービス、技術コンサルティングサービス、商標・著作権譲渡サービス等)は増値税が免税されます(注5)。

4.適用例

 これまで営業税を課されていた国内企業向けのソフトウエア開発サービス提供企業X社が、他の国内企業向けのソフトウエア開発サービス提供企業からの30元の仕入を基に、100元のサービスを提供した場合の適用例は以下の通りです。

・従来(営業税の場合)
 営業取引額×税率(サービス業は5%)=納税額
100元×5%=5元

・今後(増値税の場合)
 当期売上税額(売上額×税率6%)-当期仕入税額(仕入額×税率6%)=納税額
6元(100元×6%)-1.8元(30元×6%)=4.2元

 このように、X社は、仕入税額を控除できることによって、増値税に変更された後の方が、納付税額が低額となります。

三、企業への影響

 増値税の特徴は、増値部分(上述二4.でいえば70元(100元-30元)の部分)を対象に徴税することにあり、このために仕入増値税額を控除できることです。よって、増値税への変更の目的は、税金の重複徴収の改善および税負担の軽減と言われています。もっとも、企業への影響は各企業の具体的な状況によります。上述二4.のX社のように一部の企業は、仕入税額の控除により税負担が軽減されますが、仕入税額がないまたは少ない企業(例えばコンサルティングサービス業)は、控除ができず、逆に税負担が増える可能性があります。

(注1)営業税とは、営業税暫定条例で規定される役務の提供、無形資産の譲渡または不動産の販売によって取得した各営業額、譲渡額または売上額に対して課される税金です。
(注2)増値税とは、物品の販売または加工、修理役務の提供および物品の輸入によって取得した売上高に対して課される税金です。
(注3)「交通運輸業および一部の現代サービス業における営業税の増値税への課税変更試行の租税政策の全国展開に関する通知」(2013年5月24日公布、同年8月1日施行)参照。
(注4)国際運輸サービス、国外会社・組織に提供する研究開発サービスおよび設計サービス等。
(注5)「交通運輸業および一部の現代サービス業における営業税の増値税への徴収変更試行に係る過渡的政策の規定」および「課税サービスに対する増値税ゼロ税率及び免税政策適用の規定」参照。

コラム執筆者
安江義成弁護士
鈴木龍司弁護士
呉嵐嵐中国弁護士

黒田法律事務所・黒田特許事務所 
1995年に設立、現在日本、台湾、中国の3カ所に拠点を持ち、中国法務に強い。 現在、13名の弁護士、6名の中国弁護士、2名の台湾弁護士、1名の米国弁護士及び代表弁護士を含む2名の弁理士が在籍しており、執務体制も厚い。
http://www.kuroda-law.gr.jp/ja/tw/

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