リーガル

記事番号:T00045773
2013年9月9日15:44

一.はじめに

 ライセンス契約を通じたロイヤルティービジネスは、中国ビジネスの中でも重要な位置を占めています。中国ではロイヤルティーの海外送金につきさまざまな制限が付されていますが、近年は徐々に緩和されています。今年7月18日付で公布され、9月1日から施行された「サービス貿易外貨管理ガイドライン実施細則」(匯発[2013]第30号、以下「第30号実施細則」といいます)でも、ライセンス契約に基づくロイヤルティーの送金手続について大幅な改正が行われています。

二.従来の取り扱い

 ロイヤルティーの外貨送金に当たっては、従来、送金取扱銀行が、外貨管理局から与えられた裁量に基づいて、以下の書類の確認を行っていました(ただし、銀行によって若干取り扱いが異なる可能性があります)。

①契約書・インボイス等、送金額の根拠になるもの

②技術輸入契約登記証書(1回当たり5万米ドルを超える場合)

③納税証明(1回当たり3万米ドルを超える場合)

三.2013年9月1日以降の外貨送金に関する取り扱い

 9月1日から施行された第30号実施細則では、ライセンス契約に基づくロイヤルティーの送金・入金手続につき、主に以下のような大幅な改正が行われました。

1.技術輸入契約登記証書の提出に関する緩和

 従来、1回当たりの送金額が5万米ドルを超える場合には、上記二.②を提出しなければロイヤルティーの外貨送金が認められず、ライセンサーである多くの日本企業は煩雑な技術ライセンス契約の登記手続を余儀なくされていました。しかし、今回の改正により、1回当たり5万米ドルを超える外貨の送金手続に当たり、ライセンス技術の性質が制限類技術(注1)に該当しなければ、上記二.②を提出する必要がなくなりました(第6条第7号)。

2.納税証明に関する緩和

 上記二.③についても、(a)手続が必要な場合が、1回当たりの送金額が5万米ドルを超える場合に引き上げられ、また(b)「納税証明」ではなく、税務当局への届出制度が採用されました(サービス貿易等項目の対外支払税務届出の関連問題に関する公告(国家税務総局・国家外貨管理局公告第40号)第1条)。そして、送金に際しては、税務当局から発行される税務届出表を送金取扱銀行に持参して、送金手続を行うことになりました(第6条第2項)。

3.銀行による審査の緩和

 第30号実施細則第8条によれば、1回当たりの送金額が5万米ドル以下である場合には、送金取扱銀行は、送金資金の性質が不明確であると判断する場合を除き、契約書等の書類審査を行わないことができる旨が明記されました。

4.現時点での実務上の取り扱い

 第30号実施細則および上海の某銀行へのヒアリング結果によれば、現時点でのライセンス契約に伴うロイヤルティーの外貨送金に関する実務上の取り扱いは、以下のようにまとめられます。

(1)1回当たりの送金額が5万米ドル以下の場合:

 13年9月1日より前に、ライセンス契約に伴うロイヤルティーの外貨送金を行ったことがある場合、送金取扱銀行へ申告すれば送金でき、契約書または領収書(支払通知)など一切の申請資料は必要ありません。

 13年9月1日より前にライセンス契約に伴うロイヤルティーの外貨送金を行ったことがない場合、契約書および領収書(支払通知)のみを送金取扱銀行へ提示し、そのコピーを提出すれば、送金できます。

(2)1回当たりの送金額が5万米ドルを超える場合:

 まず税務届出手続を行い、①ライセンス契約書、②領収書(支払通知)、③税務届出表を送金取扱銀行へ提出すれば、送金できます。

四.今後の準備について

 9月1日以降はしばらくの間、中国の各地方または送金取扱銀行によっては、旧制度に基づく対応を要求する可能性が否定できません。

 しかし、制限類技術、禁止類技術に該当しない技術ライセンス契約(即ち自由類技術に該当するもの)のロイヤルティー送金につき、銀行における送金手続の際に商務部門が発行する技術輸入契約登記証書を提出せずに済むようになりました。

 一方で、技術輸出入管理条例に基づく、契約の登記義務は依然として存続しておりますので(ただし、未登記により明確な罰則規定はありません)、契約登記の担当機関である地方の商務委員会が契約の登記を要求する可能性もあります。従ってロイヤルティーの外貨送金をスムーズに行うため、13年9月1日以降も、当局から要求された場合には、契約登記ができるよう準備をしておくことを検討しておく方がよいといえます。
以上

(注1)中国の技術輸出入管理条例に基づき、中国企業にライセンスされる技術は禁止類技術、制限類技術、自由類技術に分類され、禁止類および制限類技術の内容を記載した目録に該当しなければ全て自由類技術に分類されます。

コラム執筆者
黒田法律事務所 
安江義成弁護士
竹田昌史弁護士

呉強中国弁護士

黒田法律事務所・黒田特許事務所 
1995年に設立、現在日本、台湾、中国の3カ所に拠点を持ち、中国法務に強い。 現在、13名の弁護士、6名の中国弁護士、2名の台湾弁護士、1名の米国弁護士及び代表弁護士を含む2名の弁理士が在籍しており、執務体制も厚い。
http://www.kuroda-law.gr.jp/ja/tw/

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