リーガル

記事番号:T00046500
2013年10月21日15:30

一.事案

 日本企業X社は天津市郊外で、自社製品を製造する会社の設立を検討しています。もっとも、自ら工場を建設すると多額のコストがかかるため、中国企業Y社から工場を賃借する予定で、賃貸借契約を締結することになりました。X社は、できる限り長期で工場を賃借し、安定的に操業したいと考えています。

二.アドバイス

1.結論

 X社が心配をしている「長期」賃借という観点から、賃貸借期間、貸主の解約権、期間満了後の更新の条件などについて、注意すべきです。

 賃貸借契約をめぐっては、その他にもさまざまな問題が生じますが、今回はこの点に絞って解説します。

2.解説

ア 借主保護を目的とした法制度

 日本の場合、借主の立場が弱く、その生活の基盤を失うことが社会問題となったため、もっぱら借主の利益の保護を目的とする借地借家法が制定されました。

 これに対し、中国の場合、例えば商品建物賃貸借管理弁法といった法律があり、賃貸借期間中の貸主による建物売買が借主の賃貸借契約に影響しない(同法第12条第1項)など、借主による賃借物の使用を最低限保護する規定はあります。しかし、後述のように、賃貸借期間中および同期間後まで借主の継続的使用を厚く保護する日本の借地借家法に相当する規定はありません。

 日本と中国では、制度面で、具体的には以下のような点に違いが現れます。

(1)賃貸借期間について

 日本の場合、賃貸借期間は20年を超えないものとされています(民法第604条)。しかし、建物の賃貸借については同法は適用されません(借地借家法第29条)。従って賃貸借期間を20年以上に設定することもできます(注1)。

 これに対し、中国の場合、賃貸借期間は20年を超えないものとされ、20年を超える場合、その超過部分は無効となります(契約法第214条第1項)。そして、日本の借地借家法第29条のような規定はありません。ただし、賃貸借期間満了時に、賃貸借期間を最長20年とする当事者間による契約更新が認められています(契約法第214条第2項)。

 不動産価格の変動が激しい中国では、10年以上の長期にわたる賃貸借契約を締結することは一般的ではありません。しかし、借主が20年以上の長期賃貸借期間を希望しても、そもそも法律上認められないので、ご注意下さい。

(2)賃貸借期間中の貸主による解約申し入れについて

 賃貸借期間中、貸主が建物賃貸借契約の解約申し入れをする際、日本の法律では、正当事由が必要になります(借地借家法第28条)。そして、日本の裁判実務上、この正当事由は容易に認められない上、当事者が契約で正当事由の条件を排除することはできません。そのため、貸主が解約申し入れにより賃貸借契約を終了させることは容易ではなく、他方、借主は正当事由の不存在を理由に引き続き賃借物の使用を主張できます。

 これに対して、中国の法律では、貸主からの解約申し入れに関する正当事由の存在は特段要求されていません。そのため、借主としては、賃貸借契約における貸主による解約権についてはできる限り限定的にすべきです。

(3)賃貸借期間満了後の更新

 日本の法律では、貸主が事前に更新しない旨の通知をしなければ、従前の賃貸借契約と同一の条件で同契約を更新したものと見なされます。また、仮に貸主が事前に通知した場合であっても、契約終了の正当事由がなければ、更新を拒否することができません。さらに賃貸借期間満了後に借主が継続して建物を使用し、貸主が特段異議を述べない場合、同一条件で同契約を更新したものと見なされます(借地借家法第26条および第28条)。そのため、最近では、定期借地権制度が設けられました。

 これに対し、中国の契約法第236条によれば、賃貸借期間が満了した場合、借主が継続的に使用し、貸主が異議を述べない場合には従前の賃貸借契約は継続して有効となります。ただし、その場合であっても、賃貸借期間は定めのないものになります。そして、期間の定めのない賃貸借契約について、貸主による合理的期間前の通知による契約終了の自由を認めています(同法第232条)。従って、借主は、賃貸借期間満了後の継続使用を予定している場合、賃貸借契約の締結段階で、契約更新のためのさまざまな条項を盛り込んでおくべきです。例えば、賃貸借期間が満了する一定期間前までに当事者の一方から更新拒絶の申し出がない限り、同一条件で従前の賃貸借契約が自動更新される旨を規定することも方法の一つです。また賃貸借期間満了後に、貸主が第三者へ賃借しようとする場合、事前に第三者との契約条件を開示させ、同一条件の下においては借主が優先的に賃借できる権利を賃貸借契約上に定めることも考えられます。

イ 土地使用期間との関係

 上記以外にも、中国の法制度特有の問題として、さらに当該工場の占有土地の使用期間について注意する必要があります。すなわち、中国の法律上、土地は国家所有か、または農民の集団所有とされています。そして、民間企業もしくは自然人が、例えば工場などの工業用途で土地を使用する場合、一般的に国から使用権を取得する必要があります。その場合の使用期間は、最長50年間とされています。しかし、Y社から工場を賃借する時点で、当該工場の占有土地の使用期間が必ず50年あるとは限りません。建物所有者が土地を既に長期間使用していた場合には、残りの土地使用期間は短くなるからです。もちろん、土地使用期間は満了後の延長も認められますが、事前に賃借する建物の占有土地の使用期間が何年残っているかを確認し、賃貸借期間をカバーできるよう土地の使用期間を延長する義務を貸主に負わせることは、将来のトラブルを防止するためには重要といえます。

(注1)本稿では、賃貸借期間が1年以上であることを前提としています。 

コラム執筆者
黒田法律事務所 
安江義成弁護士
竹田昌史弁護士
金鮮花中国弁護士

黒田法律事務所・黒田特許事務所 
1995年に設立、現在日本、台湾、中国の3カ所に拠点を持ち、中国法務に強い。 現在、13名の弁護士、6名の中国弁護士、2名の台湾弁護士、1名の米国弁護士及び代表弁護士を含む2名の弁理士が在籍しており、執務体制も厚い。
http://www.kuroda-law.gr.jp/ja/tw/

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