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記事番号:T00046774
2013年11月4日15:34

一.はじめに

 2013年8月30日、「中華人民共和国商標法」の改正案が可決・公布され、14年5月1日から施行されることになった。同法は、82年に制定されたが、93年および01年に改正されて以降、今回12年ぶりの改正となる。以下、改正の概要について簡単に紹介する。

二.改正の概要

1.音声商標(第8条)

 いわゆる新しいタイプの商標である「音声」についても商標登録の出願が認められることになった。

2.著名商標の取り扱いの明確化(第14条)

 著名商標の認定が、①商標局、②商標評審委員会および③人民法院により行われる旨明確にした。

 また、「著名商標は、当事者の請求に基づき、商標に関わる案件の処理に認定が必要な事実として認定を行う」と規定し、当事者の請求を前提に事案の解決に必要な範囲内でのみ著名商標の認定を行うことを明確にした。

 そのため、生産者などが「著名商標」の文字を商品、商品包装などに用いること、または広告宣伝等の商業活動に用いることを禁止している。

3.取引先等による冒認出願の禁止(第15条2項)

 契約や業務上の関係により他人の未登録商標の存在を明らかに知っている者が、当該未登録商標と同一または類似商品について、同一または類似の商標登録の出願を行った場合、当該他人が異議を申し立てれば、当該商標の登録は認められないものとした。

4.出願手続きの簡易化(第22条、第29条)

 従来は、1件の出願で1商品分類に限定されていたが、改正後は1件の出願で複数分類の商品について同一商標の登録を出願することができるようになった。

 また、書面方式だけでなく、電子データ方式の出願を認める旨明記した。

 さらに、商標局が、審査過程において、出願者に対し出願内容の説明または修正を求めることができる旨規定され、出願書類に瑕疵(かし)があった場合に出願自体が却下されるといった事態を回避できる可能性ができた。

5.審査期間の明記

 従来は、審査期間の定めはなかったが、改正法では別表のように明記した。

6.異議申立権者の限定(第33条)

 従来は、初歩査定を経て公告された商標に対して誰でも異議を申し立てることができたが、改正後は、申し立ての理由によって申立権者を限定し、異議申し立て権の乱用を防止した。

 すなわち、商標法上そもそも商標使用が禁止されている文字、図形など(例えば、国旗など)については誰でも異議を申し立てることができるが、著名商標、冒認出願、地理的標示、登録商標などとの抵触、先願登録、不正当な手段による登録などを理由とする場合は、「先行権利者および利害関係者」のみが異議を申し立てられるものとした。

7.更新期限の伸長(第40条1項)

 登録商標の有効期間(10年)経過後に更新する場合、従来は、期間満了前の6カ月以内に更新の申し立てを行わなければならないとされていたが、改正後は、その期間が12カ月以内に伸ばされた。

8.商標専用権侵害のほう助行為(第57条6項)

 登録商標専用権の侵害行為として、「他人の商標専用権を侵害する行為のために故意に便利な条件を提供し、他人が商標専用権を侵害する行為を実施するのをほう助した場合」が加えられた。

9.商標を商号として用いる行為の規制(第58条)

 他人の登録商標、未登録著名商標を企業名称の商号として使用し、公衆を誤認させ、不正競争行為を構成する場合、「不正競争防止法」に基づき処理する旨規定された。

10.先使用権の保護(第59条3項)

 商標登録専用権者は、その出願前に、他人が既に同一または類似商品で、一定の影響力を有する同一または類似の商標を先に使用していた場合、その使用範囲内では当該商標の使用の継続を禁止することができないものとされた。ただし、区別標識を付するよう求めることはできる。

11.罰則の強化(第60条2項)

 違法経営額が5万人民元以上の場合はその5倍以下、違法経営額がないまたは5万元に満たない場合は25万元以下の過料に処することができるとして罰金額を上げた。(注1)5年以内に2回以上商標権侵害行為を実施した場合等は、さらに厳重に処罰される。

12.賠償額の確定方法(第63条)

 賠償額は、以下の順で確定される。(注2)

①権利者が権利侵害により受けた実際の損失に基づき確定

②権利侵害者が権利侵害により得た利益に基づき確定

③商標許諾使用料の倍数を参照し合理的に確定

④侵害行為の情状に基づき人民法院が300万元以下の賠償を判決

 人民法院は悪意で商標専用権を侵害し、情状が重大な場合、上記で確定した金額の3倍までの賠償額を認定することができる。

 なお、賠償額を確定するため、人民法院は、権利者が既に挙証を果たし、侵害行為に関連する帳簿、資料が主に侵害者の下にある場合、侵害者にそれらを提出するよう命じることができる。

13.不使用の抗弁(第64条1項)

 従来から、登録商標が連続して3年間使用されなかった場合、取り消されるものとされてきたが、(注3)改正後はさらに、訴えられた侵害者が登録商標の不使用の抗弁を提出した場合、人民法院は訴えた商標登録専用権者に、直近3年以内に実際に使用した証拠を提出するよう求めることができ、専用権者がその使用を証明できず、またその他の損失も証明できない場合、侵害者は賠償責任を負わないものとした。

(注1)現行法では、違法経営額の3倍以下、計算できない場合は10万元以下とされている。

(注2)現行法では、①または②の方法で確定し、確定できない場合④人民法院が50万元以下の賠償を判決できるとしている。

(注3)改正法では、登録商標がその使用を認められた商品の通称となった場合も取り消しが可能。

コラム執筆者
黒田法律事務所 
安江義成弁護士
謝均中国弁護士
藤田大樹KLO投資顧問

黒田法律事務所・黒田特許事務所 
1995年に設立、現在日本、台湾、中国の3カ所に拠点を持ち、中国法務に強い。 現在、13名の弁護士、6名の中国弁護士、2名の台湾弁護士、1名の米国弁護士及び代表弁護士を含む2名の弁理士が在籍しており、執務体制も厚い。
http://www.kuroda-law.gr.jp/ja/tw/

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