リーガル

記事番号:T00047050
2013年11月18日15:48

一.はじめに

 中国で2008年に独占禁止法(中国語では「反垄断法」、以下「独禁法」と言います)が施行されて以来、調査・執行機関の位置付けや根拠法令等の整備が進んでいなかったことも相まって、事業者集中の申告案件にのみ注目が集まっていたように思われます。ところが今年に入り、立て続けに独占合意案件への処罰がなされ、その中には外資系中国企業に対して2億376万人民元(約33億円)の制裁金額を科された事例もあります。そこで、今後は独占合意規制に対しても関心を払うべき状況となったと言えます。

二.独占合意の規制について

1.法律上の規制

(1)独禁法の規制

ア.競争者との間(横)の独占合意

 独禁法第13条第1項では、競争者との間での以下に列挙する独占合意を禁止しています。

①商品の価格を固定し、または変更すること

②商品の生産数量または販売数量を制限すること

③販売市場または原材料調達市場を分割すること

④新技術、新設備の購入を制限し、または新技術、新製品の開発を制限すること

⑤共同して取引を排斥すること

⑥国務院独占禁止法執行機構が認定するその他の独占合意

イ.取引相手との間(縦)の独占合意

 独禁法第14条では、取引相手との間での以下に列挙する独占合意を禁止しています。

①第三者に対する商品再販売価格を固定すること

②第三者に対する商品再販売最低価格を限定すること

③国務院独占禁止法執行機構が認定するその他の独占合意

 なお、日本の独禁法では、再販売価格の拘束は、ある事業者が取引の相手方に対して一方的に行う不公正な取引方法の一種とされ(日本独禁法第19条、第2条第9項第4号)、独占合意として行われる上記の中国の独禁法とは若干異なります。もっとも、中国の独禁法でも独占合意とは言うものの、取引相手が罰せられることはないことから、再販売価格に関する中国の独禁法と日本の独禁法は大差ないと理解できます。

ウ.行政処分

 独占合意を達成し、かつ実施した場合には、違法行為の停止、違法所得の没収、前年度販売額の1%以上10%以下の過料に処され、実施していない場合には、50万元以下の過料に処されます(独禁法第46条第1項)。

 なお、事業者が自発的に独禁法執行機関に独占合意の達成に関する状況を報告し、かつ重要な証拠を提出した場合、情状酌量の上で処罰の軽減、または免除が受けられるとする(独禁法第46条第2項)、いわゆるリーニエンシー制度が導入されています。

(2)価格法上の規制

 相手方との合意によって行う市場価格の操作行為は、価格法(98年施行)第14条第1号においても、禁止されています。

 価格法違反に対しては、是正命令、違法所得の没収、違法所得の5倍以下の過料(違法所得がない場合には情状に応じて10万元以上500万元以下の過料)の他、情状が重大な場合は営業停止、整理命令、または営業許可証の取り消しに処され得ることが定められ(価格法第40条、価格違法行為行政処罰規定第5条)、また、価格法違反行為により消費者またはその他の事業者に代金を余分に支払わせた場合には超過分の返還を、さらに損害を与えた場合には法に基づき損害賠償責任を負担しなければなりません(価格法第41条)。

 なお、価格法は、独禁法の施行後も有効であるため、案件によっては独禁法および価格法のいずれにも抵触する可能性があります(両者に抵触する場合の適用法については解釈が分かれますが、いずれの法律も有効であり、かつその優劣が明確にされていない現状においては、中国当局がより便宜な法律を該当案件に適用する可能性があると考えておく必要があります)。

2.外国企業が関与した独占合意事例

(1)液晶パネルの販売価格に関する事例

 国家発展改革委員会は、サムスン電子、LG電子等の6社が、01年から06年にかけて台湾および韓国において合計53回の「液晶会議」を開催し、同会議で液晶パネル市場の情報を交換し、液晶パネル価格の協議を行った上で、中国大陸で液晶パネルを販売する際に「液晶会議」で協議した価格または相互に交換した関連情報に基づいて市場価格を操作したとしました。そして、13年1月4日付で、6社に対して合計約3億5,300万元の経済制裁金(注1)を科しました。

 なお、当該事例は、中国当局が外国企業の価格独占行為の制裁を行った最初の事例です。また、当該事例における違法行為は独禁法施行前のものであったことから、価格法に基づいて処罰がなされました。

(2)粉ミルクの販売価格に関する事例

 国家発展改革委員会は、合生元国際(バイオスタイム)、ミード・ジョンソン等の粉ミルクメーカーが、販売先に対して、規定した価格または限定した最低価格による販売を行わなかった場合には供給停止等の懲罰を与えているとした上で、このような行為は商品再販売価格の固定または商品再販売最低価格の限定の効果をもたらすもので、(明示的な独占合意は存在しないものの)事実上粉ミルクの販売価格の独占合意を達成かつ実施しており、独禁法第14条に違反するとしました。そして、13年8月7日付で合生元国際、ミード・ジョンソン等の6社に対して合計約6億6,900万元の過料(注2)を科す一方で、主体的に独占合意の関連状況の報告、重要な証拠の提出等を行ったネスレ、貝因美および明治については過料による処罰を免除しました。

三.備考
 企業は、自らの行為が独占行為ないしは市場価格の操作行為に該当しないように常に注意を払う必要があります。特に競争者間であっても、海外では各地の商工会等を通じた接触の機会が日本国内の場合と比較して多いと考えられますが、その際に従業員が意図せず価格情報等の交換を行わないようにする必要があります。
また、中国ではリーニエンシー制度が実務的に活用されることが、粉ミルクの販売価格に関する事例において、一部企業に対する過料が免除されたことで明らかとなりました。従って、中国当局より独占行為の指摘を受けた場合、その後の調査に積極的に協力することも検討に値すると考えます。

(注1)処罰の内訳は、①中国内の関連企業に返還される違法所得1億7,200万元、②没収される違法所得3,675万元および③過料1億4,400万元であり、また、企業ごとの内訳は、▽サムスン、1億100万元▽LG電子、1億1,800万元▽旧・奇美電子(現・群創光電)、9,441万元▽友達光電(AUO)、2,189万元▽中華映管(CPT)、1,620万元▽瀚宇彩晶(ハンスター)、24万元──です。

(注2)過料の企業ごとの内訳は、①合生元国際、1億6,290万元(前年度販売額の6%)②ミード・ジョンソン、2億376万元(同4%)③ダノン、1億7,199万元(同3%)④アボット、7,734万元(同3%)⑤ロイヤル・フリースランド・カンピーナ、4,827万元(同3%)⑥フォンテラ、447万元(同3%)──です。

コラム執筆者

黒田法律事務所 
安江義成弁護士
鈴木龍司弁護士
金鮮花中国弁護士

黒田法律事務所・黒田特許事務所 
1995年に設立、現在日本、台湾、中国の3カ所に拠点を持ち、中国法務に強い。 現在、13名の弁護士、6名の中国弁護士、2名の台湾弁護士、1名の米国弁護士及び代表弁護士を含む2名の弁理士が在籍しており、執務体制も厚い。 
http://www.kuroda-law.gr.jp/ja/tw/

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