リーガル

記事番号:T00047316
2013年12月2日15:45

江蘇省高級人民法院
2010年10月19日判決
(2010)蘇商終字第0043号

一. はじめに

 今回のコラムでは、出資者間の対立が原因で社内の経営管理が困難になった場合に会社の解散を人民法院に請求できるかが争われた裁判例をご紹介します。

 この裁判例は中国国内企業の事案ですが、このような事態は外商投資企業でもしばしば見られます。例えば、中外合弁企業の場合、増資・減資、合併、途中解散など会社の重要な一定事項については、中外合弁企業法実施条例第33条に基づき、その最高意思決定機関である董事会の全会一致が必要となります。その結果、経営方針をめぐる出資者間の対立が生じると、会社の重要な事項を決定できず、また自主的な途中解散もできない事態に陥ります。

 この裁判例で争点になった中国会社法第183条は人民法院への会社の解散請求を認める規定ですが、外商投資企業の解散に関しても適用されます(商法字[2008]31号第3条)。最近、中国の外商投資企業による解散清算の事例が増加しており、中国現地法人の解散手段の一つである会社法第183条をめぐる裁判例は日本企業の参考になるものと考えますので、以下でご紹介します。

二. 事案の概要

 2002年に成立し、自然人AおよびBが50%ずつ出資するX社では、Aが法定代表者および執行董事に就任し、Bが総経理兼監事に就任した。そして、株主会の決議は、議決権を有する出資者の2分の1を超える同意が必要とされ、各出資者がその出資比率に応じて議決権を行使するものとされていた。

 しかし、06年ごろから、AとBの間で意見の対立が生じ、Aからの度重なる株主会の開催要求に対して、Bが同意しない状況が継続した。そのため、AよりX社の定款に基づくX社の解散決議の実施および清算の要求がなされ、さらに調停委員会による調停が行われたものの双方で合意に至らなかった。

 X社の解散を求めて訴えを提起した第一審ではその請求を棄却されたためAが控訴したところ、下記のとおり、第二審で第一審の判決が破棄され、X社の解散請求が認められた。

三. 判決要旨

1. 経営管理の著しい困難について

 会社法第183条および『会社法適用の若干問題に関する最高人民法院の規定(ニ)』(司法解釈(ニ))第1条によれば、会社の経営管理に著しい困難が生じているか否かの判断は、会社の株主会、董事会もしくは執行董事、監事会もしくは監事の運用実態から総合的に判断しなければならない。

 『経営管理の著しい困難の発生』の重点は、例えば株主会が機能せず、会社の経営管理に関する決議を行えないなど、会社の管理面に重大な内部障害が存在することにあり、会社資金の不足、著しい欠損など経営上の困難という一面的な理解に基づいてはならない。

株主総会が4年間なく

 本件では、出資者はAおよびBの2人であり、両者が50%の持ち分を有し、その定款上、双方の意見が一致しなければ株主会決議を行うことができない。X社では、既に4年間株主会が開催されず、有効な株主会決議が行われていないため、株主会決議を通じた会社の管理ができず、もはや株主会制度が機能不全に陥っている。また執行董事であるBは、各意見が矛盾する2人の出資者のうちの1人であり、X社に対する管理業務として株主会の決議を執行できない状況にある。さらにAもX社の監事として正常に監査業務を果たせない状況にある。

 このように、X社の内部運営制度が正常に機能しない状態にあり、会社の経営に対する決定を下せない以上、たとえX社に欠損などがない場合であっても、X社の経営管理に既に著しい困難が生じている事実を覆すことはできない。

2. その他の要件について

 X社の内部運営制度が既に機能不全に陥っている以上、Aの株主権、監事権は長期にわたり行使できない状態にあり、AがX社に投資する目的を実現できず、その利益が重大な損失を受けている。

 また司法解釈(ニ)第5条では、「当事者の協議を通じても会社を存続できない場合、人民法院は速やかに判決を下さなければならない」と規定する。本件では、既に調停委員会における協議の機会があったものの、当事者で合意に至っていない。

 さらにAはX社に対して50%の出資持分を有しており、10%以上の議決権を保有する旨の要件を満たす。

 以上より、第二審である江蘇省高級人民法院は、X社が会社法第183条で定められた会社の解散請求の要件を満たすとの理由により、X社の解散を求めるAの請求を認める判決を下した。

(参考:会社法第183条)

 会社の経営管理に著しい困難が生じ、引き続き存続すると株主の利益に重大な損失を被らせるおそれがあり、その他の方法によっても解決できない場合、会社の全株主の議決権の10%以上を保有する株主は、人民法院に会社の解散を請求することができる。

四. 留意点

 会社法第183条に基づく解散請求については、上記判決要旨のとおり、株主会、董事会など会社の運営制度が機能不全に陥る状態が継続する場合に限り認められます。もっとも、会社の業績の良し悪しに関わらず、出資者の対立に起因した会社の運営制度の機能不全を理由に会社の解散を認めた本裁判例は、中国パートナーとの経営方針の不一致などを原因として会社の解散を含む合弁解消を検討する機会が多い日本企業にとっては、参考になる事例といえます。

 なお、合弁パートナーとの対立が原因で自主解散できない場合の手法としては、上記会社法第183条以外に、一定事由が生じた場合における一方出資者による解散請求権を予め合弁契約書に規定しておくことも重要といえます。 

コラム執筆者

黒田法律事務所 
安江義成弁護士 
竹田昌史弁護士
呉嵐嵐中国弁護士

黒田法律事務所・黒田特許事務所 
1995年に設立、現在日本、台湾、中国の3カ所に拠点を持ち、中国法務に強い。 現在、13名の弁護士、6名の中国弁護士、2名の台湾弁護士、1名の米国弁護士及び代表弁護士を含む2名の弁理士が在籍しており、執務体制も厚い。
http://www.kuroda-law.gr.jp/ja/tw/

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