リーガル

記事番号:T00047997
2014年1月9日15:47

 皆さん、明けましておめでとうございます。黒田日本外国法事務弁護士事務所顧問の佐田友です。今年も何とぞよろしくお願い致します。

 さて新年の最初の回は、従業員と正式な雇用関係に入る前の試用期間に関して書いてみます。

 台湾においては現在、労働基準法などに試用期間について明記した規定はありません。しかし、試用期間という概念が台湾にないわけではなく、労働者と会社が個別に契約し、試用期間を設けるという運用が実務上、行われています。

 会社としては、正式に採用する前に、対象者の人物や仕事ぶりを見て、仕事ができるどうかを判断するという意味で、試用期間を設けることに合理性があるためでしょう。

 ちなみに日本では、労働基準法に「試みの使用期間」という文言があり、明文で試用期間の概念を認めています。

日本も台湾も考え方は同じ

 この試用期間で問題になり得るのが、正式採用をしない、つまり試用期間で労働契約を終了する場合です。そこで、試用期間中あるいは同期間経過後の契約終了について言及している台湾の高等裁判所の裁判例を読んでいたのですが、一瞬びっくりしてしまいました。判決文の中で、「双方の当事者は原則として双方ともいつでも契約を終了することができ、かつ労働基準法に規定される法定の終了事由を備える必要はない」とあったのです。「えっ、会社側が試用期間中の労働者について、適当な理由をつけて労働契約を終了することが許されるの?」と私は考えました。

 ところが、その後の判決文をよく読むと、「試用期間中、使用者が試用中の労働者の不適格を理由として、保留する解雇権を行使することは、法律上、比較的大きな弾力性を認めるべきである。一般的な労働契約が正式採用の労働者の地位を保護するのと同じく、使用者の解雇権の乱用を防止するため、解雇権を厳重に制限しなければならないこととは異なる」となっており、やはり「労働者の不適格」という内容が求められていることが分かりました。さすがに、そんなに適当に解雇されては、労働者としてはたまらないですよね~。

 この点、日本では三菱樹脂事件として知られる有名な判例を見ると、最高裁は、「一定の合理的な期間解約権を留保する試用期間を定めることも、合理性を持ち有効である」とした上で、「いったん特定企業との間で試用期間を付した雇用関係に入った者は、当該企業との雇用関係の継続の期待の下に他企業への就職の機会と可能性を放棄したものであることを考慮すると、右の留保解約権の行使は、解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し、社会通念上相当として是認される場合にのみ許される」とされています。

 このように日本と台湾の裁判例を比較してみると、言い回しは異なりますが、結局のところは、「試用期間中および同期間経過後において、会社側が恣意(しい)的に正式雇用を行わない決断を下すことは許されない」という点で共通していると考えられます。

 というわけで、台湾においても、客観的な不適格理由もないのに、「ちょっと気にいらないんだよなぁ」というような不適当な理由で正式採用をしないケース(そんな会社はないですよね~…)では、労働者から争われた場合に、損害賠償あるいは引き続き雇用を命じる判決が下される可能性があります。

 上述の裁判例によれば、不適格であることが明らかなら、試用期間中であっても労働契約を終了することができますが、不適格であることの判断は、くれぐれも慎重にしてくださいね~。 

佐田友浩樹弁護士

佐田友浩樹弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日中英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。