リーガル

記事番号:T00048135
2014年1月16日15:51

 皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の顧問の佐田友です。

 台北では、寒い日が続き太陽が恋しい今日この頃ですね~。寒さもなかなか厳しいですが、台北の冬で困るのは、洗濯物が乾きにくいことじゃないでしょうか。湿度が高いせいですかね??太陽が出てくれれば、洗濯物もよく乾くので、その意味でも太陽が待ち遠しいですね~。

 昨年12月の大きなニュースとして、半導体パッケージング・テスティング(封止・検査)の世界最大手であるASE(日月光半導体製造)が、高雄工場から有害物質を含む汚水を違法に排出した問題が報道されました。有害物質が長年、違法に排出されれば最終的に人体に悪影響が及ぼされるであろうことは疑いなく、企業の行動として許されるものではありません。適切に処理して排水することには時間も費用もかかるのでしょうが、処理に関わる工程についてはダブルチェック、トリプルチェックを行って確実に処理が行われるようにしていただきたいものです。

 この事件では、同社の高雄工場長を含む5人が、今年に入ってから「流放毒物罪」などの罪で起訴されたそうです。

 工場などから有害物質を排出させる類型の犯罪に関し、台湾では刑法において「流放毒物罪」が規定されており、「健康に害を与える物を排出して空気、河川、土壌などを汚染し公共の危険を発生した場合には5年以下の有期懲役に処す」とされています。さらに工場などの事業を行う場所の責任者や監督者が事業活動の一環として同様の行為をした場合には処罰が加重されます。今回のASEのケースでは、有害物質が排出された結果、公共の危険が発生し、本罪に該当すると検察官は判断したようです。

 日本でも同様に、公共の危険を発生させた場合の犯罪類型が刑法に規定されていますが、「健康に害がある物を排出して河川などを汚染し公共の危険を発生した場合」に関する規定は刑法にはありません。日本の刑法にあるのは、飲料に供する浄水を汚染したり、水道により公衆に供給する飲料の水源を汚染し、使用できなくした場合などに限られています。

 日本では、有害物質を排出して河川などを汚染することについて、刑法ではなく、別途、水質汚濁防止法や、人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律(以下「公害罪法」とします)などで処罰することが規定されています。

日本では排出自体が犯罪

 例えば水質汚濁防止法では、「排出水を排出する者は、その汚染状態が当該特定事業場の排水口において排水基準に適合しない排出水を排出してはならない」と規定されています。そして、同規定に故意に違反した場合には、「6月以下の懲役または50万円以下の罰金に処する」とされ、過失により違反した場合であっても、「3月以下の禁錮または30万円以下の罰金に処する」とされています。つまり、公共の危険の発生の有無を問わず、排出基準に適合しない排出水を排出したことで犯罪は成立するといえます。

 他にも公害罪法(工場や事業所からの有害物質の排出など、事業活動に伴って人の健康に害が及ぶ公害を生じさせた行為への処罰を定めた法律です)では、有害物質の排出の結果、公衆の生命、身体に危険を生じさせた者は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられるとされています。

 同法を根拠に、福島第1原発の放射能汚染水問題に関し、東京電力の社長らが、昨年、福島県民から刑事告発されるというニュースもありました。

 企業は利益を生み出さないと存在意義がないとよく言われますが、利益を生み出すために人間や自然に害を与えてしまったら全く本末転倒ですよね。

 有害物質の排出に関わった一握りの人のために、どれだけ多くの人が嫌な思いをすることになるか。非常に多くの人が自らの健康に与える影響を思って不安を感じたでしょうし、ASEが信用を失うことで顧客が取引を敬遠すれば、ASEの存続の危機にもつながりかねません。有害物質の排出を軽々しく行う人が今後出ないように、有害物質の排出に関わった人は厳しく処罰してほしいものです。 

佐田友浩樹弁護士

佐田友浩樹弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日中英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。