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記事番号:T00048193
2014年1月20日15:49

一.はじめに 

 昨年11月9~12日、中国共産党は第18期中央委員会第3回全体会議(いわゆる「三中全会」)を開催し、その成果として、三中全会での決定事項の概要に言及した声明を閉幕日に公表し、同月15日には「全面的な改革深化に向けての若干の重大問題に関する決定」(以下「本決定」といいます)を公布しました。以下で述べますとおり、本決定は今後中国で行われる政策方針を示すものであり、中国ビジネスの展開に当たっても軽視できないため今回ご紹介いたします。

二.三中全会とは

 三中全会とは、中国共産党全国代表大会によって5年に1度選出される同党中央委員会が、選出後3回目に行う全体会議を指します。

 通常、第1回、第2回は人事に関する事項が主として取り扱われ、第3回の全体会議において、指導部のその後の政策方針が決定されます。実際に、過去には1978年の第11期三中全会における改革開放路線の採択(これを受けて80年より深圳を筆頭とした経済特区が設置されるなどの政策が実施されました)、93年の第14期三中全会における社会主義市場経済体制の確立(これを受けて同年12月の会社法制定などが実施されました)などの重要な政策方針が決定されてきており、このことから、三中全会は中国内外の注目が集まる場となりました。

 第18期三中全会においても、慣例どおり習近平・李克強指導部のその後の政策方針の決定がなされ、その内容を具体化したものとして本決定が公布されました。

三.本決定の概要

 本決定は大項目一~十六、小項目(1)~(60)で構成されています。その中には、国有資本投資プロジェクトへの非国有資本参画の許可(本決定二(6))、国有企業の近代的企業制度の完備の推進(本決定二(7))、税収制度の改善(本決定五(18))、法治国家建設の推進(本決定九)、一人っ子政策の緩和(本決定十二(46))、国家安全委員会の設立(本決定十三(50))、全面的な改革深化に向けての指導小組織(中文では「全面深化改革領導小組」)の設立(本決定十六(58))など、多くの事項への言及がなされていますが、日本企業にとって直接的な影響が強いと考えるのは以下の項目です。

 第一に「現代市場体系の完全化の加速」(本決定三)です。

 同大項目では、冒頭で、市場の資源配置において決定的作用を果たす基盤となるようにさせるとした上で、公平、開放的、透明な市場規則の設立との小項目(本決定三(9))において次のとおり言及しています。

 ①外商投資に対して内国民待遇とネガティブリストによる管理方式の実施を模索する。②工商登録制度の利便化を推し進め、③資質を要求する認定項目を削減し、④「先に行政許可、後に営業許可証」から「先に営業許可証、後に行政許可」(これにより、行政許可が不要な一般的経営活動の範囲で、例えば、人の雇用、各契約の締結、および金銭の貸借などを行うことが可能となり、行政許可取得までの間に本来の業務の準備を行うことが可能となります)へ変更し、⑤登録資本払込登記制を次第に引受登記制に改める(この点は四で後述します)。

 第二に「開放型経済の新体制の構築」(本決定七)です。

 具体的には、投資参入の緩和(本決定七(24))の項目において、外資政策について、内資、外資の法律法理を統一し、安定、透明、予測可能な外資政策を保持するとし、特に金融、教育、文化、医療などのサービス分野の秩序ある開放を推進し、養育、養老、建築設計、会計監査、商業貿易物流、電子商取引などのサービス分野の参入制限を開放し、一般製造業のさらなる自由化を進めるとしています。

四.本決定後の動向

 本決定は、今後の方向性を示す文書であり、実務の運用について今後の法改正、法整備を見守っていく必要があります。

 なお、本決定以降、本決定での言及に基づいた法令法規または制度の導入・整備がいくつかなされています。その中で、昨年12月28日に公布され、本年3月31日より施行の「『中華人民共和国海洋環境保護法』などの7本の法律の改正についての決定(2013)」中の会社法の改正では、本決定三(9)が言及する登録資本払込登記制から引受登記制への変更が盛り込まれています。具体的な変更内容は次のとおりです。従前は登録資本の払込登記制が導入されていたため、出資額の支払期限(旧会社法第26条第1項、第81条第1項など)、出資後の出資検査(旧会社法第29条)によって資本の払い込みの担保を行い、営業許可証に「実際に払い込まれた資本」の項目を記載する(旧会社法第7条第2項)こととされていましたが、引受登記制への変更に伴いこれらの規定は削除されました(*)。

 現時点では、改正会社法に基づいた会社設立に関する実務上の取り扱いを定めた法令などは制定されておらず、また改正会社法の外商投資企業設立に対する適用の有無も明確になっていませんが、改正会社法が施行される本年3月1日までに何らかの法令などが公布されるものと予想されるところです。

 もっとも改正会社法によって会社設立が容易になった反面、払込登記制から引受登記制への転換によって、外見上の登録資本額のみが巨額で実体が伴わない会社が増加することも想定されますので、中国企業との取引を行う際にはこの点への注意が必要となります。

(*)その他、改正会社法では、以下の改正がなされています。

①登録資本最低額の緩和

 これまでは会社法において登録資本の最低額として、有限責任会社の場合3万人民元(旧会社法第26条第2項)、一人有限会社の場合10万元(旧会社法第59条第1項)、株式会社の場合500万元が設定されていましたが、これらが削除され、法令などで別途定めがない限り、登録資本の最低額の制限がなくなりました。

②有限責任会社における金銭による出資金額制限の撤廃

 これまでは登録資本の30%を下回ってはならないとされていました(旧会社法第27条第3項)

③登記事項の簡易化

 有限責任会社においては「株主の氏名または名称」、「その出資額」を登記しなければならないとしていた(旧会社法第33条第3項)ところ、「その出資額」については登記が不要となりました。

コラム執筆者

黒田法律事務所 
安江義成弁護士
鈴木龍司弁護士    
謝均中国弁護士


黒田法律事務所・黒田特許事務所 
1995年に設立、現在日本、台湾、中国の3カ所に拠点を持ち、中国法務に強い。 現在、13名の弁護士、6名の中国弁護士、2名の台湾弁護士、1名の米国弁護士及び代表弁護士を含む2名の弁理士が在籍しており、執務体制も厚い。
http://www.kuroda-law.gr.jp/ja/tw/

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